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椅子の聖女


「チハル、ごめんなさい」


 わたしが部屋で、【鑑定】のスキルで今日のお兄ちゃんの様子を伺っていると、チナツが来て頭を下げてきた。


「何が?」

「この間のゴットフリートさんの件よ。あたしの早とちりだったわ」


 こうやって自分が悪いと思ったらしっかり謝ってくれるのはチナツの利点だと思う。

 まぁこんなチナツの謝罪よりも、今はお兄ちゃんの様子を観察する方が大切である。


「別にどうでも良いよ」


 なのでチナツを適当にあしらいつつ、スキルの発動に注視する。

 わたしの【鑑定】スキルは対象の思考まで読むことが出来る。

 対象者が一人にしか使えないが、効果範囲は特にない一番の自慢のスキルである。

 わたしはこのスキルをお兄ちゃんに使っている。

 むしろお兄ちゃん以外にこのスキルを使ったことがない。

 このスキルを覚えて、お兄ちゃんに掛けてからずっとそのままにしてある。

 だから、どんなに遠く離れていてもお兄ちゃんが何処で何をしていて、何を考えているのか分かるのだ。

 今は、朝だから作業場で麺打ちをしている様だ。

 映像で見られないのが残念だけど、全く様子が分からないよりはマシである。

 映像で見られればお兄ちゃんの雄姿が見れるのになぁ。

 だからお兄ちゃんの雄姿を事細かに想像するためにも、チナツの謝罪とか言う些事に構っている訳にはいかないのだ。


 真剣に麺打ちの事を考えてるお兄ちゃんは格好良いよね。


「でも、そう言う訳にはいかないわ」


 チナツを無視して、お兄ちゃんの様子を見守っていると、耐えきれなくなったのか声を掛けて来た。


「まだいたんだ?」

「だってあたしは勘違いで、あんたにあれだけの事をしたのよ。対価もなしに許されたことには出来ないわ」


 チナツは真面目だなぁ。

 被害を受けた側が別にいいって言ってるんだから、それで良いと思うんだけど。

 まぁチナツの相手を何時までもしているのは時間の無駄なので、チナツを満足させるために何かさせるか。

 

「じゃあ取り敢えず土下座してよ」

「分かったわ」


 そう思って土下座を要求したら躊躇なくチナツは土下座をした。

 いや、普通ここは躊躇なり戸惑ったりするものじゃないの?

 その即断即決した行動力と行っている綺麗な土下座にちょっと引いてしまう。

 真面目なのは良いけど、あまりやり過ぎると疲れるだけだと思うんだけどね。


「はぁチナツは真面目だなぁ」

「何で溜息つきながら、あたしの上に座ってる訳?」

「いや、丁度いい椅子だなと思って」

「だからって普通、土下座してる人を椅子にはしないと思うんだけど……」

「まぁチナツは今わたしに負い目を感じてるんでしょ? なら、あんまり文句を言わないでよね」

「それはそうだけど」


 こうやって言い負ける所とかチナツの真面目さが出てるよね。


 まぁ良いや。

 お兄ちゃんの観察を続けよう。

 なんかチアキが勝手にお兄ちゃんに会いに行ってるみたいだし、しっかり様子を見ておかないとね。

 チフユお姉ちゃんだけでも面倒臭いのにチアキまでお兄ちゃんに絡まないで欲しいよ。

 チアキの考えなんて、お兄ちゃん経由で分かるんだから下らない策略何て考えるだけ無駄なのにね。

 チナツがパーティメンバーの事が好きになり始めてるとか、在り得ない嘘をよくもまぁいけしゃあしゃあと言えるものである。

 お兄ちゃんはその発言を疑っていたみたいだけど、このままチアキが嘘をつき続けたらその内、信じる可能性も出て来るかもしれないね。

 まぁわたしには関係ない事だからどうでも良いけど、このまま行ってわたしまで好きな人が出来た扱いをチアキがし始めると面倒だ。

 どうにかしないとね。


 そんなことを考えていたら、ドアがノックされた。


「チナツさん、ちょっといいでしょうか?」


 この声は小物の所の幸薄そうな女だろう。

 チナツと同じで国教に仕えているシスターだ。


「チハルお願いだから、今だけでも退いて」


 椅子になっているチナツからそんな声が聞こえてくる。

 

「いいじゃん、このまま会おうよ。入っていいよ」

「ちょっと!?」


 下で騒いでいるチナツを無視して外にいる羽虫に声を掛ける。


「すいません。失礼します」


 入ってきた羽虫は結構礼儀の正しい奴だったようで、わたし達の状況を見て目が点になっていた。

 まぁ当り前だろう。

 用事のある聖女が勇者の椅子になっているのだ。

 わたしだってこんな状況を見たら混乱する。


「取り敢えず座って」


 まぁお客さんをそのまま立たせておくのも失礼だろう。

 わたしは自分の座っていた椅子を彼女に譲る。


「えっ?」

「遠慮しないで」

「ちょっと!?」


 混乱している羽虫を椅子に座らせる。

 チナツからお怒りの声が飛んできていたが、わたしには何も聞こえない。

 そもそもわたしを磔刑にしたチナツへの罰でこういう事になっているんだから、チナツが文句を言う筋合いはないのだ。


「それで、チナツに何の用なの?」


 わたしは壁に寄りかかりながら、混乱している二人を置いておいて話を促す。


「あんたこの状況で話を進めるとか本気?」

「面倒な事は早めに終わらせて、わたしはいつもの日課に戻りたいの」


 羽虫の椅子になっているチナツから苦情が出るが一刀両断する。

 というかチナツがそもそも人の話を聞かないのがいけないのだ。

 つまりこういう事になっているのもチナツが原因なのだ。

 わたしは悪くない。

 早くお兄ちゃん観察に戻りたいのだ。


「あの、あたしは良いですから……」


 羽虫が遠慮してチナツから立ち上がる。

 空気の読めない羽虫だ。

 仕方がないので、わたしがチナツの上に座り直した。


「なんで、また座ってるのよ?」

「いや、空いたから?」


 椅子が空いたら座る物だと思う。

 というか椅子は座る場所のはずだ。


「なんかもう良いわ。貴方ドワイトの所のローズマリーよね。あたしに何の用があるの?」


 チナツがキリっとした顔で羽虫に問いかけるが、土下座状態でわたしの椅子になっているのを考えると何とも締まらない状況である。


「あたし、ドワイトに脅されているんです」


 その言葉を聞いて、チナツが凄く嫌そうな顔をしていた。


 わたしもまたチアキがお兄ちゃんに報告していた内容を思い出し、チアキがまた下らない計画を実行し始めたんだなぁと思ったのである。


【鑑定】のスキルってストーカーをするのに凄い便利だと思います。

チハルのスキルみたいに相手の考えを読めたりすればもう完璧ですよね。

もし【鑑定】のスキルが手に入っても変な事に使うのは止めましょう。

ある意味【洗脳】とかよりも使われてる人の自由意思を奪ってない分、寝取り側としては使っていて面白いんじゃないでしょうか。

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