ドワイトの不安
最初は≪ドワイト≫視点です。
魔王を討伐するために王都を出てから三週間程経った。
俺も冒険者として色々なパーティに加入したことがあるが、今回のパーティは今までとは比べ物にならない位ヤバかった。
まず、旅に出て一週間程したら疋田の奴が居なくなっていた。
奴は仲間の女だけ残して失踪したのだ。
女も疋田が居なくなったことに動揺したのか、酷く取り乱し半狂乱になっていた。
あの糞生意気な聖女が何とか宥め、近くの教会へ預けたことで疋田のパーティは壊滅した。
疋田が居なくなった晩、リジーが賢者の小娘が疋田を惨殺しているのを見かけたらしい。
その様は正に拷問にしか見えず、見つかったら何をされるか分からない恐怖から動くことも出来なかったとの事だ。
しかし、翌日の小娘はいつもと何一つとして変わらない態度をしており、前日に疋田を惨殺した様には到底見えなかった。
普通は同族を殺したら、何かしらの反応がある筈である。
それがあの小娘にはなかったのだ。
つまり、奴はそれだけ人殺しに慣れているか、それともその惨殺シーンはリジーの見間違えだったかのどちらかということになる。
どちらにしても、疋田のパーティはあの日を境にこのパーティから居なくなったのだ。
そして二週間目、ゴットフリートが勇者に追放された。
勇者曰く役立たずはこのパーティには必要ないとのことだった。
しかしゴットフリートは俺の目から見ても、ドラゴンを討伐したというだけあり強かった。
リジーと互角かそれ以上の強さがあるというのが俺の見立てだ。
奴のパーティメンバーも、俺のパーティメンバーと同じ位のレベルがある強者達である。
それなのにも関わらず、あの勇者はゴットフリート達を役立たずと言ってのけたのだ。
ゴットフリートクラスで役立たずであれば、ほぼ全ての冒険者が役立たずとなるだろう。
そして、あろうことか戦闘中に後ろから斬りかかったのである。
ゴットフリートも前衛をしているだけあって、優れた鎧を装備していたが、勇者の前には意味をなさなかった。
その手際、切り口は超一流の剣士に相応しいレベルのもので、剣聖であるリジーもあそこまで綺麗に斬るのは不可能だと言っていた。
俺はその勇者のレベルの高さもそうだが、何よりもその一連の行動が一切の躊躇なく無表情で成し遂げられていたことに恐怖した。
一週間毎に連れて来られたパーティが壊滅している。
そして今週は王都から出発して三週目だ。
次は俺達のパーティが狙われるのだろうか。
「ドワイト、顔色が悪いけど大丈夫なの?」
「アンジェラか。なぁ、俺達はこのパーティについて行って本当に大丈夫なのか?」
「一体、どうしたのよ? あんなに勇者パーティに入って名をあげるんだって言ってたじゃない」
「それはそうだが、他のパーティを見ただろう。どのパーティも崩壊しているんだ。次は俺のパーティがそうなるんじゃないかと思うと恐ろしいんだ……。」
「確かに、それはそうかもしれないけど大丈夫よ。このパーティには貴方がいるじゃない。貴方はこの国一番の賢者なんだから自信を持って、ねっ」
俺の不安を吹き飛ばすかの様にアンジェラが微笑みかけてくれる。
彼女は俺が困った時、一番に助けてくれた。
欲しい女がいた時は自分を犠牲にしてでも俺に差し出してくれたし、常に俺の事を第一に動いてくれる都合の良い女だ。
今、一番信用できる存在でもある。
リジーは婚約者がいたが、リジーを無理矢理借金漬けにして婚約者から寝取ってやった経緯がある。
ローズマリーも所属していた教会に、良いシスターを寄越せと多額の寄付をしてやったら、教会の神父が差し出してくれた存在だ。
どちらも、あまり俺の事を良く思っていないだろう。
だからこそ、アンジェラが俺にとって今一番の心の拠り所なのだ。
「そうだな、俺はこの国一の賢者だ。こんな所で逃げ帰る訳にはいかない」
そんなアンジェラの言葉は俺の心に勇気を呼び戻した。
「そうよ。それに、あの生意気な聖女を奴隷にしてやるって言ってたじゃない。こんな所でへこたれてたら、聖女を堕とすことも出来なくなるわよ」
「ああ、やってやるぞ!! あの聖女を堕とす良い方法は何かないか?」
「それなら、リジー達の境遇を上手く使ってやるのが良いんじゃないかしら。彼女は正義感が強そうだし、リジー達が助けを求めれば彼女も手を差し伸べるはずよ」
「なるほどな」
アンジェラのいう事も最もだろう。
「じゃあリジー達を聖女に嗾けて、聖女様自ら堕ちて来てもらうか」
「ええ、流石ドワイトね。それでこそよ」
「しかし、やけにあの糞女について詳しいな」
「それは貴方の為になると思って、前もって調べておいたからね。私の知識だけじゃなく、私の全てを有効活用して貰って聖女をしっかりと堕としていきましょう」
「ああ、そうだな」
アンジェラと話をしたことでこのパーティから抜けると言った発想が俺の中からなくなった。
弱気になるなんて、俺らしくなかった。
明日からしっかりとあの聖女をドロドロに堕としていこう。
◇ ◆ ◇ ◆
「大体うちの予定通り事が進んでいるみたいだねっ」
意外とドワイトの奴がヘタレでびっくりしたけど、これだけ彼女を使ってヨイショしておけば、やる気も出るよねっ。
ドワイトだけじゃなくてアンジェラにも【洗脳】をかけておいて正解だったよ。
やっぱり、チナツは良心を上手くくすぐってやれば、良い感じに動いてくれると思うんだ。
それで雁字搦めにして身動き取れなくすれば、自らの身を犠牲にしてドワイトの所に堕ちてくれるんじゃないかな。
最終的にはアンジェラにドワイトを裏切らせても面白いかもしれないけど、その辺は状況次第だよね。
絶望したドワイトが、最後に手元に残ったチナツを滅茶苦茶にする。
これも良い展開かもしれないねっ。
何にしても、ここからは気が抜けない展開だよっ。
チハルにも注意しないといけないし、うちの腕の見せ所だねっ。
そんな訳でドワイト編スタートです。
最初に言っておくと、この小説にはNTR系のタグは入っていません。
つまりはそう言う事です。
次回から、チアキの策略とチナツの奮闘とチハルの狂気がぶつかり合います。
引き続きよろしくお願いします。




