賢者は村に帰りたい?
チナツに連れられて、チハルを探すこと30分。
うちはチハル探しに飽きてきていた。
そもそもチハルの暴走を止めた所で、兄様は見てない訳でちゃんと褒めて貰える訳ではないのである。
「チナツ、飽きてきたしもう良いんじゃないかなっ?」
「あんたまで何言ってんの!?」
「だって、チハルがアネットをどう処理しようと、うちにはあんまり関係ないと思うんだよっ」
それにアネットはゴットフリートにかけた【洗脳】に気付いて、解除できるくらいには優秀なんだよっ。
うちの【洗脳】をどうこう出来る人なんてチナツ位しかいないと思っていたから、うち的には想定外の人物なのだ。
だから、個人的にはチハルがアネットを消してくれると言うのであれば大助かりなのである。
そうすれば、うちの計画が予定通り進められるしねっ。
「馬鹿なこと言ってないで、足を動かしなさい」
その辺も含めての提案だったんだけど、チナツには気にいって貰えなかったようである。
まぁチナツにはうちの計画の全貌を話してないから当然かなっ。
「えー、でも今回の件はチハルとゴットフリートさん達の問題だと思うんだよっ」
「あんまりグダグダ言ってると無理矢理にでも言う事聞かせるわよ」
チナツが腰の鞭を引き抜いてうちに向けてくる。
このままでは、負けてしまう。
チナツの事をどれだけ馬鹿にしたくても、チナツはうちよりも強いのだ。
真面に戦って勝てる訳がない。
チナツはパワー系オークと一緒なんだよっ。
ここは兄様をダシに使うしかない。
「そうやって直ぐに暴力的な解決をしようとするから、兄様に振り向いてもらえないんだよっ」
「なっ、今はあいつは関係ないじゃない!!」
チナツは本当に兄様が好きだよねっ。
兄様をネタに出せば簡単に隙が出来るんだから。
うちはその一瞬の隙をついて、逃げの一手を取る。
「って、こんなんで逃がす訳ないでしょ」
でも、チナツの鞭に簡単に捕縛されてしまったんだよ……。
「流石チナツだねっ。四天王最強の座は伊達じゃないね」
「四天王って何よ?」
訝し気な目でうちを見る、チナツ。
そんなの言うまでもない事だよねっ。
「兄様大好き四天王だよっ」
「だからあたしはあいつの事なんて好きでも何でもないんだから!!」
はぁ、何でチナツは誰が見ても丸分かりなのに、素直に兄様が好きって言わないんだろうねっ。
ツンデレの呪いなのかなっ?
今度ツンデレを集めて色々と研究してみても良いかもしれないねっ。
うちの研究リストに入れておこう。
「取り敢えずチハル探しを続行するわよ」
「分かったから、拘束を解いて欲しいなっ」
「駄目よ。あんた拘束解いたらまた逃げ出すでしょ?」
チナツの癖にそこまで読んでいるなんて……。
うちは逃走を諦めて、チナツに引き摺られながらチハルの探索に戻ったのだ。
疋田は予想以上のクズだったから処分しちゃったし、ゴットフリートは意外と真面な人間だった上に【洗脳】解けちゃったし、本当にうちの予定通り事が運ばない展開が多すぎるよねっ。
うちの手駒が三流のドワイトしか居なくなっちゃったんだよ……。
チハルも勝手に動かないで欲しいよね。
うちの計画通りいけば、チハルも新しい旦那さんを見つけられて幸せになれるのに、何で皆はうちの計画に反対するんだろう……。
本当に目先の事しか考えない人達は嫌だよねっ。
「あれ、チナツとチアキじゃんか」
その後、チナツに街外れまで強引に引き摺られて行くと、チハルがいた。
隣には件のアネットもいて、仲良さそうに手なんかを繋いでいる。
これは百合かなっ?
まぁ、アネットの目がレイプ目になってるから違うんだろうけどねっ。
「チハル、あんた何してたのよ?」
待望の人物の登場にチナツも興奮気味にチハルに詰め寄る。
「ちょっと朝早く起きちゃったから、年齢の近そうなアネットとお話をしていたんだよ」
チハルは良い顔をしてチナツの質問に答える。
まぁチハルの目からハイライトが消えていたから、どんな話をしていたのかなんて簡単に想像できるんだけどねっ。
というかヤンデレ目とレイプ目って、目からハイライトが消えているのは一緒なだけで、全然違うモノなんだよ。
うちもこの二つの目を隣に並べて観察したことがなかったから気が付かなかったけど、ヤンデレ目と違ってレイプ目は表情も死んでるからその辺で違いが出るんだねっ。
一つ新しい発見をしちゃったよ。
後で兄様にも教えてあげよっ。
「それにしたって、態々こんな街外れまで来る必要なんてなかったでしょ!」
「ちょっと二人で他の人に聞かれたくない話をしてたからね。そうだよね、アネット?」
チハルに話を振られ、アネットは肩をビクっと動かす。
あれは完全に脅されてるねっ。
見た感じ、肉体的に痛めつけてる訳じゃないみたいだから、精神的にいたぶったのかなっ?
「はい、そうです。ちょっとあたしの個人的な相談がしたくて、チハルさんに無理行って街外れまで来てもらったんです」
死んだ目をした顔でそう言われても、全く信用できないよねっ。
チハルが手を握っているのも、不用意な事を言ったら手から電撃でも出して痛めつける為みたいだし。
それにしても、チハルもこんな搦手使えるんだっ。
ちょっと驚いちゃったよ。
「チハル、アネットさんと手を放しなさい」
チナツもそれに気付いたみたいで、手を放す様にチハルに詰め寄ったんだ。
「それは出来ないよ。これはわたしとアネットの友情の証だからね。ねぇ、アネット?」
「はい、そうです」
どう見てもアネットが怯えてるよっ。
本当にチハルは彼女に何をやったんだろうね?
うちが前に話した感じだと、結構彼女のメンタル強かったと思うんだけど……。
「あんた、それあいつの前でも自信を持って言えるの?」
「チナツこそ何を言ってるの? わたしの行動は全部お兄ちゃんの為にあるんだよ。お兄ちゃんに怒られたとしても、お兄ちゃんの為になるんならわたしは何でもやるの」
「あんたね!!」
そんなチハルの態度にチナツも結構真面目に怒っちゃったみたいだよ。
あんまりギスギスした空気を出して欲しくないんだけどなっ。
兄様もよくこんな二人の間に堂々と入って仲裁できるよね。
だから兄様は尊敬できるんだけど。
まぁ、ないものねだりしても、しょうがないよね。
二人の間に挟まれてアネットが今まで以上に怯えているし。
それにしても、ああ言うロリっ娘がプルプルと死んだ目をして震えていると嗜虐心に駆られるよねっ。
実際にやったら兄様に白い目で見られそうだからやらないけど……。
「取り敢えず、アネットさんも見つかったことだし、一回ゴットフリートさんの所に戻った方が良いんじゃないかなっ」
どうせ問い詰めても、チハルは何をしたか言わないだろうしねっ。
時間の無駄になる様な事はするだけ無駄だよ。
「それもそうね。チハル、後でちゃんと聞かせて貰うから」
チナツはうちの提案を受け入れつつも、チハルを睨む。
「まぁ良いけどね」
チハルはチハルで、チナツの怒った空気を気にしていない体を整えつつも、笑ってチナツに答えていた。
よく見ると手が震えてたから、チナツを怒らせたことを内心後悔してるんじゃないかなっ。
やっぱり、兄様がいないとこの二人は駄目だよねっ。
寝取らせ計画とか変な事考えてないで、チハルじゃないけど早く村に戻った方が良いかもしれないんだよ……。
まぁ、うちはそれでもチナツ寝取らせ計画を断念する気はないんだけどねっ。
二人がどれだけ喧嘩しようとうちには関係ないし、絶縁状態になったら兄様が悲しむかもしれないけど、それで兄様の二人への評価が落ちれば、相対的にうちの評価が上がる訳だから、うち的にはラッキーなんだよ。
自分からそう動くと兄様に嫌われるからやらないけど、自分達でそういう判断したんならうちに責任来ないし別に問題ないしね。
二人については温かく見守る気持ちが大切だよっ。
ブクマが200件超えました。
いつも、読んで頂きありがとうございます。
まぁ、これ書いた瞬間200件切ると悲しくなるんですが……。
それは作者の力不足って事でしょうがないですね。
今回アネットがチハルにされたことはご想像にお任せします。
チハル本人も言っていた通り血生臭い事はしていないです。
目を閉じられない様にして目の前に針を突き出すとか、ずっと同じ音を聞かせ続けるとか、暗闇の中に閉じ込めて放置するとか、そういった事はやっていないはずです。




