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チハルは村に帰りたい


 なんかお兄ちゃんに危害を加えようとした非生物(デブ)をチアキが処理した翌日、わたしは調子に乗った気持ち悪いおっさんに話し掛けられていた。


「チハルちゃんは何が好きなの?」

「辺境の村の出身って聞いたけど、王都は全然違うでしょ。私のいた国の王都もここと同じ位栄えていたけど、この国の魔導具の進歩具合は全然違うね」

「チハルちゃんは魔族と戦ったことはあるのかな?」

「疋田君がいきなり居なくなったけど、チハルちゃんは何か聞いてるかい?」


 はぁ、どうでも良いけど、お兄ちゃんに早く会いたいなぁ。

 お兄ちゃんは今日もチフユお姉ちゃんと一緒にいるのかな?

 二人でイチャイチャしているのかな?

 もしそんな事になっていたら、チフユお姉ちゃんはちゃんと誅しないといけないよね。

 でも、どうやったらお兄ちゃんを悲しませずに、チフユお姉ちゃんを誅せられるのかな?

 と言うか何で今回の旅にお兄ちゃんは付いて来なかったのかなぁ?

 お兄ちゃんが一緒にいたら、途中で一緒に抜け出して新婚旅行に行けたのに。


「本当に意味の分からない旅行だよ……」


 わたしは気持ち悪いおっさんが話し掛けて来るのを無視しつつ、お兄ちゃんの事を思い出していた。

 わたしのお兄ちゃんは世界で一番格好良いお兄ちゃんだ。

 チフユお姉ちゃん達が惚れるのも分からなくはない。

 でも、お兄ちゃんの事を一番愛しているのはわたしなのだ。

 わたしだけが傍に居れば良いの。


 ああ、お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん(以下略)


 お兄ちゃんが一杯いたら私も幸せなのになぁ。

 右を見ても左を見ても、前を見ても後ろを見ても、お兄ちゃん。

 お兄ちゃんにいつも囲まれているなんて素晴らしい世界だよ。

 お兄ちゃんがわたしの為だけに色々とやってくれて、わたしがそんなお兄ちゃんに全てを持って尽くす世界。


 そう考えたら、魔王退治とかどうでも良いよね。


「よし、帰ろう」


 わたしはそう思い、お兄ちゃんの所に帰ることにした。


「チナツ、わたし帰るから後宜しく」


 チナツに後を託し、わたしは村の方向に足を向ける。


「あんた、何言ってるのよ?」

「ちょっとお兄ちゃん成分が足りなくなってきたから、村に帰ることにするよ。わたしがいなくても、チナツがいれば魔王城の魔族位簡単に倒せるでしょ?」

「そういう問題じゃないでしょ!!」


 チナツは信じられない物を見るか様にわたしを見る。

 ちょっと、怖い……。

 これは凄い怒っている。


「でも、別にお兄ちゃんがいれば、魔王軍とかどうでもいいじゃん。わたしが態々(わざわざ)お兄ちゃんの所から離れてまでやる様な事じゃないよね」


 それに近くにいればお兄ちゃんへの危機は防げる訳だし、村とイーストウッドが無事ならお兄ちゃんの生活も守れる訳だし、遠出してまでやることではないと思うんだよね。

 別に魔王軍の手で王都が滅ぼされてようと、あんまり関係ないし。

 うどんとか変態とかみたいに話せば分かるタイプの魔族もいるみたいだから、魔王軍に人間側が負けても別に今とあんまり変わらないでしょ。

 だったら、お兄ちゃんの所にいた方が、わたしも幸せになれるし良いと思うんだよ。


「それは違うと思うよっ」


 そんな事を考えていたら、チアキが否定してきた。

 生意気な奴だ。


「何が?」

「そんな事をしたら兄様が王命に逆らった人の家族って事で処刑されるよっ」


 確かにそれは困る。


「それにね、もう少し我慢してもらえば、そう言った問題も起きないで村に帰れるから……」


 周りに聞こえない様にチアキが耳元で囁く。

 チアキの方を見ると良い顔でサムズアップをしていた。


「はぁ……」


 わたしは思わず溜息をついてしまった。

 チアキが色々と企んでいる事は知っている。

 でも、チアキの策だからなぁ。

 何か信用できないんだよね……。

 まぁ、別にチアキの策が失敗してもわたしには関係ないしいっか。

 偶にはチアキを信用してみる事にしよう。

 ついでに、わたしも早く帰れるようにちょっと動いてみようかなぁ。


 それに、策が失敗した場合は、最悪パーティを鏖にして、お兄ちゃんの所に帰れば良いよね。

 皆殺しにすれば全滅扱いになるし、問題ないでしょ。

 それでも国がお兄ちゃんを殺すって言うんなら、王族を鏖にしに行けば良いし……。


「まぁ、もう少しだけ我慢するよ」


 本当に王族って面倒臭いよね。


「なぁ、彼女は本当に勇者なのかい?」

「一応、神託ではそう言われてたわ」

「勇者としての責任感とか、正義感とかを全く感じないんだが……」

「それに関してはあたしも否定できないわ」


 後ろでチナツがおっさんと話していたが、大した内容ではないだろう。

 まぁわたしが魔王討伐に行くのに納得したからか、チナツからの圧も消えたしね。

 チナツは怒ると怖いから……。

 また縛られたくないし。


 ああ――オニイチャンニ ハヤク アイタイナ。


チハルのモチベーションの低下が著しいですね。

今回の件を持って、チハルもまたチアキやチナツの思惑とは別に動き始めることになります。

後、作中では語られませんでしたが、疋田君が連れていた女性はチナツが手厚く保護しております。


次回は『チハル隣国の英雄を討伐する』です。

チハルの溢れんばかりのお兄ちゃん愛が暴走します。


引き続きよろしくお願いします。

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