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VS異世界転生者


 僕は疋田 秋仁。

 この世界とは違う地球の日本と言う国から来た異世界転生者だ。

 僕はこの世界に来る前は学生をしていた。

 いわゆるオタクと言う奴で、学校では同じオタク友達と異世界に転生したら美少女達を周りにはべらせ、ハーレムを作りたいと笑いあっていたものである。

 それが何の因果か分からないが、気が付いたら僕は女神の前にいたんだ。

 女神が言うには、交通事故に巻き込まれて死んでしまったらしい。

 そしてチートな道具を手に異世界に転生できるとの事だった。

 僕は良くあるラノベの導入部みたいな展開に興奮していた。

 だって、チート能力を使えば自分の思うが儘に生きることが出来るからだ。

 王国一の美少女もエルフの女の子も全ての物が僕の物になる。

 前の世界では幅を利かせていたイケメンやクラスカーストトップみたいな奴を、どん底に落とす事だってできるのだ。

 これで興奮しない奴はいないだろう。


 こうして僕は意気揚々とこの異世界に降り立ったのだ。

 僕は異世界の女神から『因果律を操作する本』を貰った。

 この本に書かれた内容は、全て事実となる正に夢の様なチート能力である。

 僕はまずこの本を使い、自分のステータスを極限まで上げた。

 それに合わせて【各種状態異常耐性】や【全属性魔法】、【全武器種スキル】等を入手して、この世界で一番強いと言えるレベルまで自分を高めたのである。

 これで僕に危害を加えることが出来る存在なんて居なくなっただろう。


 すると近くから女の子の悲鳴が聞こえたんだ。

 行ってみると金髪の美少女がゴブリンに襲われていたから、僕は颯爽とゴブリンを退治して美少女を助けて、その流れで美少女の住む村に案内してもらった。

 僕はてっきりこれで美少女とのフラグが立って、僕のハーレム要員の第一号になると思ったんだけど、その美少女には既に旦那がいたんだよ。

 これには僕も腹を立てた。

 だから、僕は自分のチートを使ってこの美少女(ビッチ)を僕の奴隷にしてやったのさ。

 美少女(ビッチ)がどれだけ僕への奉仕を嫌がっても、誰も助けないし違和感を感じない世界。

 旦那ですらそんな光景を見せられても、僕に文句を言ってこないんだ。

 

 その時に感じたね。

 この世界では僕は神そのものなんだ。

 僕こそが法律なんだとね。


 それから一年、色んな国を旅して僕の奴隷を増やしていったんだ。

 反抗的な目をした奴が絶望して屈服していく瞬間、信じていた奴に裏切られて失望する瞬間、どれもこれも面白い見世物だったよ。

 僕を「絶対に殺してやる」って言ってたやつが、いつしか「もう殺してくれ」って言ってくるんだぜ。

 こんなにも全能感を味わえる娯楽はないよ!!



 そんな時に国が魔王討伐の為の勇者パーティを募集しているという噂を聞いたんだ。

 こういう時の勇者は大体美少女だし、気の強い屈服させがいのある女であるパターンが多い。

 だから僕もその募集に応募してみる事にしたのさ。


 王城の広場に行くとドワイトとか言う男が丁度勇者に突っかかってた所だった。

 そして、僕はそこで天使に出会ったんだ。

 勇者の隣に立っていたシスター服を着た女。

 僕好みのスタイルの良い体付き、気の強そうな顔立ち、どれを取っても僕のコレクションに入れたい逸材だった。

 その天使は勇者の知り合いらしい。

 これは勇者パーティに何が何でも潜り込んで、あの女を僕の物にするしかないと悟ったね。

 だから、僕はチート能力の本に確実に勇者パーティに入れる様に書き込み、ついでにあの天使の行動パターンを僕が思った通りに動く様に指示しておいたんだ。


 彼女の名前はチナツと言うらしい。

 この王都で精力的に活動しているシスターで、お金のない恵まれない人達にも治療行為を行い、職業としてだけでなく、その高潔な精神性まで含めて聖女として崇められている様だ。

 そんな高潔な存在が地の底まで堕ちて来るんだ。

 僕に跪いて泣きながら縋り付いてくる。

 もうこの姿を想像するだけで、溜らなく劣情を催してしまうよ。

 そして彼女には辺境の地に義兄がいるらしく、彼女はその義兄を愛しているらしい。

 もう何て素晴らしいんだろうね。

 彼女を義兄の前でドロドロにしてやったら、彼女の精神をどれだけボロボロにしてやることが出来るんだろうか。

 その後、彼女の手でその義兄を殺させてやれば、彼女の精神は崩壊するだろう。

 これ程、素晴らしい玩具の壊し方もない。

 今から想像するだけでも、ゾクゾクしてくるよ。



「君が疋田秋仁さんかなっ?」


 僕が街中でそんな妄想をして悦に浸っていると、目深にフードを被った茶髪の年若い女が話しかけて来たんだ。


「そうだけど、君は?」

「うちは聖女様から君に手紙を渡して欲しいって頼まれて持って来たんだよっ」


 その女は懐から手紙を出すと僕に押し付けてくる。


「聖女様って、この街で一番有名なチナツさんのことかな?」

「そうだよっ。何でも勇者パーティに決まった君に挨拶の連絡がしたいって事で、手紙を渡す様に頼まれたんだよっ」


 女は快闊な口調で、背中に大輪の花を咲かせた様な笑顔を浮かべながら話を続ける。


「分かった。それじゃあ後で読ませてもらうよ」


 僕はそんな女に不信感を持ち、手紙を後で読むと言って立ち去ろうとした。


「それじゃあ駄目だよっ。今ここで読んで貰わないと……」


 女の目に魔法陣が浮かぶ。

 まさか、これは【魅了】の魔法か!?

 しかし僕には【状態異常耐性】がある。

 そんな魔法は効かない!!


「うちの魔法をレジストするんだ。まぁ予想通りだね。チナツお願いするよっ」

「何であたしがあんたの犯罪の片棒担がないといけないのよ……」


 気が付くと女の隣には件の聖女が立っていた。

 すると体が重たくなり、段々と気も遠くなってくる。


「大体こういう奴って小賢しい手段で魅了とかみたいな、即ゲームオーバーになる物に対して対策を練っているものなんだよっ。予想通り、魅了魔法効かなかったしねっ」

「それで何であたしのスキルがいる訳?」

「そんなのその対策がチートに基づいた物だからに決まってるよっ。チートで無双してきたが故に、チートが万能と勘違いして、チナツみたいな能力を持ってる人に負けるんだ。本当に愚かだよね」

「あんたね……。何で悪党の考えがそこまで的確に読めるのよ……」

「それはうちもどちらかと言えば、悪だからだよっ」

「そう言う事は元気に言わないで欲しいわ……」


 そんな聖女達の会話が聞こえつつも、僕は意識を失ったんだ。



 ◇ ◆ ◇ ◆



 とある研究室で秋仁を襲った二人組の会話が聞こえてくる。


「ほらチナツ見てよっ。この本にチナツを兄様の前でドロドロにして絶望させた後、兄様を殺させるとか書いてあるよっ」

「あんた、このおぞましい内容の書込み見て、よく笑ってられるわね……」


 シスター服の着た少女が言う通り、女性の目から見たらそこには語るのもおぞましい程の内容が書き込まれていた。

 女性の尊厳をことごとく否定する様な内容。

 この本でどれだけの人達が泣かされてきたのだろう。

 シスター服の少女はそれを想像し心を痛めていた。


「もう終わった話だからねっ。今更嘆いても始まらないよ」


 それに対して、フードを被った少女はその本の内容を娯楽と捉えているのか楽しんで笑っていた。

 シスター服の少女はその様を見て不快そうにしていたが、それすらも気にしていない。


「はぁ、もう良いわ」


 その内、シスター服の少女の方が先に折れた様である。


「でも、協力しておいて良かったでしょ? あのまま、うち一人で対応してたら、うちもこのチートに取り込まれて兄様を殺す様な展開になってただろうしねっ」

「それはそうだけど……」


 フードの少女が言う通り、あのまま放置していたらこちらが酷い目に遭っていたのは疑い様がない。

 ただシスター服の少女は正義感が強く、催眠魔法という犯罪の片棒を担いでしまったことに、義兄へ顔向けが出来ないと思ってしまうのは仕方のない事なのだろう。


「まぁ安心してよ。兄様をこう言う目に遭わそうとした奴は、とことん絶望させて追い詰めてやるから」


 そんな相方の心情を察したのか、フードの少女はそう言う。

 その眼には今まで浮かべていた様な笑みは浮かんでいない。

 逆に、この世の全てを燃やし尽くす様な絶対的な憎悪が浮かんでいたのだ。


 その顔を見てシスター服の少女は思うのだ。

 その想いをもう少し他の人に向けられれば、周りとの軋轢を減らせるのに――と。


現地人にやられる転生者の図です。

こうして疋田君はチアキの手に落ちました。

そしてチアキの尻尾も同時に踏んだ為、これから酷い目に遭う事でしょう。


次回は疋田君のざまぁ回です。


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