チアキとチフユの策略
朝、麺の仕込をしているとうどんがチアキからの手紙を持ってきた。
うどんにご褒美の油揚げをあげ、手紙を開ける。
すると、中には一枚のカードが入っており、真ん中にはボタンが付いていた。
これはボタンを押すと録音された声が再生されると言う、文字が読めない人向けの手紙だ。
識字率の低いこの世界では結構手軽に使われている品でもある。
なおこの手紙は、チアキが8歳の頃に開発して今でも利権で暴利を貪っており、チアキの資金源にもなっている。
チアキがこれを送り付けてくると言うのは嫌な予感しかしない。
しかし聞かなければ、後で何をされるか分からない恐怖も同時にある。
仕方がないので、恐る恐るボタンを押す事にした。
『兄様へ。
チフユさんと協力して面白い装置を作ったよ。
今、試験運用中で兄様にも協力してもらいたいんだ。
だから、チハルとチナツも連れて是非チフユさんの家に来てください。
待ってるよ。
兄様の玩具 チアキより』
何か色々と言いたいことがあるが、予想通り嫌な予感しかしない内容だった。
あいつはチフユと何を作ったんだ?
あまり行きたくはないが、行かなければ行かないで向こうからやってくるのだ。
まぁ暇だし取り敢えず行ってみるか。
というか、俺の玩具とは一体何なんだ?
そんな訳で、何時の間にか俺の後ろにいたチハルと部屋で真面目に勉強していたチナツを捕まえ、チフユの家に向かうのだった。
「しかし何でチアキが呼び出したのに、チフユの家に行くことになるんだ?」
「最近二人でコソコソとやってたからその関係でしょ」
チナツも溜息を付きながら俺の後を付いてくる。
勉強を中断され不満気ではあったが、俺と出掛けられるのが嬉しいのかご機嫌である。
背中から天使の羽が見える様なご機嫌さだ。
「お前達は二人が何をやってるのかは知っているのか?」
「どうせチフユお姉ちゃんがわたし達にどうやったら認められるのか分らないから、チアキに泣きついたんでしょ。小賢しい手段を良くここまで思いつくものだよ」
俺の疑問に答えたのはチハルである。
チナツの機嫌のよさとは対称的に、チナツの存在が邪魔だと言わんばかりに不機嫌である。
おかげで言葉の棘が酷いことになっていた。
「でも正直チフユとチアキが手を組むとか想像できなかったから、何が出て来るのか興味はあるわね」
チナツはそんなチハルの態度を気にせずにそんな感想を言った。
確かに、どちらかと言えば善に近いチフユと完全な悪であるチアキはあまり相性が良くない。
その為かあまり二人でいることを見掛けないのだが、その二人が今回タッグを組んだという事だ。
この事実に思わず、額から汗が流れた。
「大丈夫だよ。お兄ちゃんの側には何時だってわたしがいる。お兄ちゃんが危険な目に遭いそうだったら、チナツがちゃんと盾になってくれるよ」
俺の戦慄を察したのか、チハルから心強い言葉が出る。
そうだ、俺達にはチナツがいる。
チナツに任せておけば、二人ともどうにかしてくれるはずだ。
というか、チナツだけじゃなくてお前もどうにかしてくれよ……。
いや、チハルが動くと鏖にすることしか考えないから動かない方が良いのか?
「お兄ちゃんは間違っているよ!」
俺の冷たい目線を感じたのか、チハルから反論が出た。
「チナツが戦った方が確実に二人とも弱らせられるじゃん。わたしはその間、お兄ちゃんとイチャイチャして、戦い終わって弱った三人の首を刎ねるのがわたしの仕事なんだよ!」
予想通りの鏖案である。
せめて味方だったチナツ位生かしてあげてやれよ。
「何であたしがそんな事の片棒を担がないといけないのよ……」
チナツもその役回りに不満が出る。
むしろ不満が出ない方がおかしい。
「大丈夫、チナツなら出来るよ。それに上手くお兄ちゃんを守れれば、お兄ちゃんの中でのチナツの株が大暴騰するよ」
「そんな言葉に乗せられる程、あたしは馬鹿じゃないわよ」
「えっ……、チナツがお兄ちゃんをダシにしたのに乗らない……?」
チナツの回答に驚愕するチハル。
確かに、幼い頃のチナツであれば俺をダシにするとなんでも率先してやっていた。
絶対に不可能なことも、自分が傷つくことも恐れずに、努力して目的を達成しようとする姿は、幼心に凄いなと思った所ではある。
そんなチナツがチハルの提案を拒否したのだ。
まぁ、普通に考えれば拒否する以外の選択肢はないんだがな。
つまりチナツも成長したって事だろう。
そんな成長した姿を見ると俺の心も温かくなるものだ。
「あんたはあたしを何だと思ってるのよ?」
「お兄ちゃん大好き聖人」
チハルは何を当り前の事をと言わんばかりの顔で答えた。
「な、ふざけたことを言わないで! こいつの事なんて好きじゃないんだから!!」
チナツは三秒位固まった後、顔を真っ赤にして否定するが、否定の仕方がワンパターンなので全く否定の意味をなしていない。
そして俺的にはチハルの意見に完全に同意である。
「今更否定しなくても、お前がにぃに大好きなのは分かってるから」
だから俺も温かい目でチナツを見守ることにするのだ。
「あ、あ、あ、いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
「チナツは相変わらずだな」
物凄い逃げていったチナツを見ながら俺はそう言った。
「お兄ちゃんだって、チナツで遊んでるじゃん」
チハルがお兄ちゃんだけズルいと言外に主張してくる。
「だって、ああいうチナツって可愛いじゃんか」
「それは分かるけどね。と言うかわたし達三人で呼ばれてるのに、チナツいなくなっちゃったけど良いの?」
「あっ」
俺は慌てて、チナツを追いかけるのであった。
次回こそ相性診断開始です。
引き続きよろしくお願いします。




