チアキ捕まる
「しっかし、チアキの奴はどこまで行ったんだ?」
チハルと遭遇した後、チアキを探しながら歩いていたが、とうとうイーストウッドに辿り着いてしまった。
「チアキの事だから、普通の所にはいないと思う。男子トイレとか下水道とかにいるはず」
背中からチフユの声が聞こえる。
途中で目が覚めたんだが、腰が抜けて歩けないとの事だったので背負ってきた。
チハルが死ね死ねオーラを出していたが、歩けない人間を下ろしてどうしろって言うのさ。
一応、提案としてチハルが背負う案も提示してみたが、普通に拒否られた。
まぁ、その案を提示したら闇のオーラが多少減ったので良しとしよう。
「どうせチアキの事だし、その辺の樽とか壷の中にいるとわたしは思うよ」
チフユ達のチアキへの熱い信頼感である。
二人とも、チアキが真面な場所にいるとは思っていないらしい。
――俺もそう思う。
チアキは従兄目線であることを置いておいても天才だと思うが、同時に奇抜な発想力も持っている為、頭が悪いのだ。
天才なのに頭が悪いとは妙だが、そうとしか言いようがない。
今回もどうせ俺の想像を3つ位超えた先から登場するはずだ。
「チアキを探すにあたって、二人はもっと具体的にどこにいると思う?」
だから取り敢えず二人にもう少し具体的な意見を聞いてみるのだ。
男子トイレとか壷とか樽とか言われても、何処にある奴だよとか言いたくなるしな。
「「詰所じゃない」」
二人の声が合わさった。
こう言う所は気が合うのな……。
「何故に?」
「チアキの事だから、脱法行為をして捕まっている可能性が高い」
「チアキの事だし、また法律違反でもして捕まってるんじゃないかな」
二人ともチアキがこの街の兵士に逮捕されていると見ている様だ。
流石にそんな事はないと信じたいが、チアキだと在り得そうと思ってしまうのが恐ろしい所である。
「取り敢えず、詰所に行ってみるか……」
しかし、言われてみると一番可能性の高い所でもあったので、二人のいう通り詰所に向かう事にしたのである。
「本当にいたよ……」
詰所に到着すると、本当にチアキは拘留されていた。
従兄として悲しくなってくるぞ……。
詰所の兵士さん曰く、贈賄容疑で逮捕されたらしい。
「チアキと面会は可能なんでしょうか?」
「まだ取り調べ中だからね。ちょっと難しいね……」
事件を担当している兵士さんが丁度出入口付近にいたので話を聞いてみたが、チアキは5年前にこの街の役人に対して賄賂を渡していたらしい。
一応、当時10歳であったことや時間が結構経っていることから、そこまで大事にはしないでくれるそうだが……。
「チアキの奴何やってるの……」
「まぁチアキだし、しょうがないんじゃない。王都でも何回か捕まってたしね」
チアキ逮捕の報を聞いたチフユ達の反応である。
二人とも全く驚いていなかった。
このチアキへの謎な信頼感、嫌いじゃないぜ。
「ちょっと待て、王都で捕まってたってあいつ何やったんだ?」
チハルのコメントに不吉な言葉があったので聞いてみる。
「チアキは昔から研究熱心だったじゃない? だから違法な魔法とか薬物とか道具とか色々なものの使用とか所持とかで昔から詰所にお世話になってたんだよ」
「マジか?」
「こんなつまらない事で嘘なんてつかないよ!!」
「この間の件だって、チナツが止めてなかったら犯罪になってた」
チフユのいうこの間の件とは、『兄様NTR計画』の事だろう。
確かに洗脳系の魔法は、人の感情や想いを無碍にする魔法という事で重罪が科されるものだ。
使い様によっては国家転覆すら可能にするものだし、当り前と言えば当り前なのだが……。
後、対象者の魔法が切れない限り、犯罪行為が露呈することがなくバレにくいと言った意味でも忌み嫌われている。
まぁチアキは国家転覆とかの深い意味はなく、単純に便利だからとかいう理由だけでこの手の魔法を習得してそうだが。
実際、俺に対しては≪催眠魔法≫使ってこないしな。
「そう考えると贈収賄とかそこまで重たくない犯罪だな」
「兄さん、比べる対象がおかしいだけで、結局犯罪であることに変わりないから……」
チフユにツッコミを食らってしまった。
「で、チハルは剣を抜いて何処に行こうとしてるんだ?」
チハルの方を見るとこの間買ってあげた剣を抜いて、詰所の奥に向かおうとしていた。
周りの兵士がギョッとしてチハルを取り囲もうかと窺っているのが見える。
「お兄ちゃんに迷惑を掛けたキチガイは必要ないよね。ここで首を刎ねておいた方が皆の為になるよ」
チハルの目からハイライトがログアウトしていた。
「まぁ落ち着け。ここでチアキの首を刎ねたら、今度はお前が捕まることになるぞ」
「ここにいる雑兵じゃ、わたしは捕まえられないから大丈夫だよ」
ニコニコと良い顔して答えないで欲しんだが。
「そう言う意味じゃない。ここで貴女が暴れると兄さんに迷惑が掛かる」
「それは……、確かに」
そんなチハルにチフユが説得に入る。
俺を理由にするとは、良い着眼点だ。
「チアキを討伐するのであれば、こんな街の中じゃない方が良い」
「流石、チフユお姉ちゃんだね。わたしの考えが甘かったよ」
「薄暗い夜道で、一定の間隔を常に維持して、白いマスクを被ってチェーンソーで追い掛け回した方が効果的」
「確かに、それは良い案だよ。適度に与える恐怖でお兄ちゃんの偉大さを分からせるんだね?」
「そう。そして顔のすぐ近くに向かって、ナイフを当てない様に投げればなお良い」
おい、自分のトラウマ仲間を増やそうとするんじゃない!!
周りの兵士の皆さん方の警戒レベルが上がっているぞ!
前回の後書きでチアキ回と言っていたのにチアキが出ない謎。
それは役所の役人達がチアキを詰所に通報したのがいけないのです。
次回こそは、釈放されたチアキが出て来る筈。




