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新しいミッション ~勇者と聖女と賢者を討伐せよ~


 チフユのその一言は俺の中を駆け抜けた。

 俺的には妹達に認められた上で結婚したかったが、チフユのいう通りもう諦めた方が良いのかもしれない。

 今回の一件はそんな気持ちを非常に強くさせた。


「でも、そんな簡単に決めていいのか?」

「兄さんは私と結婚するの嫌?」

「そんなことはない。むしろ嬉しい位だ」

「なら問題ない。このままズルズルと今の状態を続けるより、次のステップに進んだ方が皆の為になる」

「確かにそうかもしれないな」


 一応この国には戸籍があるので、結婚と言うのは役所に婚姻届を出す正式婚と言うものと、結婚式を挙げて同棲する事実婚と言うものがある。

 ちなみに普通はどっちもやって、初めて夫婦となる。

 チハルに毎度のごとく言ってる兄妹での結婚の禁止と言われているのは両方だ。

 実妹と実兄で婚姻届を出すと役所側が届出を拒否してくる。

 結婚式についてはも、式場側に1年間の営業停止命令が出るので、基本的には式場側に拒否られる。

 つまり、どう足掻いても実の兄妹では結婚できないのである。

 それはこの国の国教であるアイリス清教が、実の兄妹・姉弟での婚姻及び性行為を禁忌と定めているからと言うのが大きい。

 俺も詳しくは知らないが、禁忌を破ったものは神に裁かれ永遠の地獄に落とされるらしい。


 チハル曰く、


「そんな事を言う神はわたしには必要ないし、そもそも神託なんて糞みたいな制度でわたしとお兄ちゃんを引き離した神なんて信用できない」


 との事らしい。

 そんな訳でチハルはこのアイリス清教を一切信用しないという、この国の勇者にあるまじき信仰心を持っている。

 その為、近親相姦の禁忌に手を染めることに一切の躊躇がない。


 ちなみに、チアキは宗教に貴賤はないとかで、アイリス清教を始め、この国で禁止されている邪教まで含めて研究対象としてしか見ていない。

 一回、邪教を信仰しているとかで宗教裁判にかけられそうになっていたな……。

 どうやって宗教裁判から抜け出したのかは不明である。

 あまり深く踏み込んではいけない領域なのだ。


「宗教家ごときが、うちを魔女裁判にかけようなんて百年早いよ」


 とか、不穏な空気を出していたのが印象的だった。


 チフユも神様と言うか宗教が嫌いなので、アイリス清教を信じていない。


「この世界に神なんていない」


 とか前に言っていた。

 中二病ではない。

 まぁチフユの良く分からない運命を見れば、文句を言いたくなる気持ちは非常に良く分かる。


 そんな訳で、チナツ以外は誰も国教を信仰していないのである。

 一応、国とアイリス清教は結構ずぶずぶの関係だし、魔王討伐をする時が来ればアイリス清教からも様々な支援が出るらしい。

 しかし勇者達はその宗教を信じていないので、金だけ貰ってポイするつもりなのだ。

 清教側にも様々な野心とかあるだろうが、勇者達はそんな事を気にする様なタイプではない。

 こんな勇者パーティがもし魔王を討伐しても、国教の地位は一切上がらないだろう。

 むしろ、チアキ辺りが聖遺物をよこせとか主張して、貴重な品々が全て研究によって枯渇する様が目に浮かぶようである。

 そして、その聖遺物をもって新しい魔法が生み出されるのだ。

 麺を効率的にこねられる様な魔法が欲しい。

 あと均等に切れる魔法も。



 話がズレたが、チフユは取り敢えず直ぐに出来る婚姻届の提出をしようという事だろう。

 前に親に聞いたことがあるが、結婚式を挙げるのは色々と準備が必要で半年近くかかるらしい。

 式場の予定を取ることから始まり、披露宴とかをやるのかどうか、ドレス等の服装をどうするのか、披露宴をやるのであれば余興とかどうするのか、誰を招待するのか等、意外と考えることが多いのだ。

 チフユとじゃあ結婚式を挙げようと言って、即座に出来るものではない。


「ちなみに、婚姻届の書類は持っているのか?」

「当然」


 チフユが自慢気な顔をしながら、懐からチフユの名前等の記載が全て終わった婚姻届を取り出す。

 準備良いな、こいつ。

 証明人にチフユの小父さんの名前らしきものも書かれており、それはもう完璧な書類だった。

 後は俺の欄を書くだけで提出できる程のものである。


 しかし問題が一つある。

 俺は文字の読み書きが出来ないのだ。


「兄さんが文字を書けないのは知っている。役所で代筆してくれるから大丈夫」


 チフユは俺のそんな不安を見越していたのか、先に下調べしていてくれた様だ。

 まぁ、この国の識字率高いわけじゃないからそうもなるよな。

 後で調べてみると、大体の人が役所で代筆して貰っている様であった。


「兄さんの証明人は後で証明すれば良いから、取り敢えずこの書類を役所に持っていこう」

「ああ、分かった」


 凄い急展開な気もするが、俺とチフユが婚約してから相応に年数は経っている。

 チフユと結婚することに後悔はないし、寧ろ後悔とか言ったらチフユに失礼な位だと思っている。

 だから、即日即断で婚姻届を出すことは正しいことなのだ。

 幸いまだ時刻は昼前であり、役所のあるイーストウッドまで往復しても暗くなる前までに、村に戻ってこれるだろう。


「チフユは今日の予定とかなかったのか?」

「大丈夫。むしろ、この件が一番大事なイベント。私の両親には今日婚姻届を出すのも言ってある」


 本当に準備良いな。

 うちの方は突然言われたから何も準備できてないぞ。

 まぁうちの両親はそう言うの気にしなさそうだが……。

 チハルが俺と結婚するとか言っているのも推奨している位なのだ。

 変な信用のない男に任せるよりも、俺に任せた方がチハルも幸せになるとか阿呆な事を言っている位だ。

 後日報告でも構わないだろう。


「後の問題は道中か……」

「チハルとチアキの妨害を上手いこと潜り抜けて、イーストウッドの役所で婚姻届を提出するのが今回のミッション。大丈夫、私達ならやれるはず。むしろ、やらないと兄さんとの新婚生活が送れない」


 そう言うチフユからは強い意志を感じる。

 体から禍々しくドス黒いオーラが出る位には強い意志だ。

 これが魔王のオーラって奴か……。


「よし、じゃあ行くか」

「そうね」


 そう言って、イーストウッドに向かおうとする俺達の前に立ち塞がる第一の刺客。


「先鋒はあたしよ!!」


 そこには、俺達の結婚には反対しないと言っていたチナツが構えていた。


 こいつらの情報網どうなってるんだ?

 さっき思いついたことを何でもう知っているんだ?


 色々と聞きたいことはあるが、一つだけ言いたいことがある。


「こう言うのは、せめて村から出てからやってくれ!!!!」


結婚に反対しないと言っていたチナツが何故、第一の刺客として現れたのか。

そもそも、魔王の力に目覚めたとは言え、チフユ一人で三枚抜き出来るのか。

次回は、対聖女戦です。

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