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チナツにとってチフユは『おねぇ』なのか


「それにしても森の裏であたし達をあれだけ惨殺してる割には、設定上あたし達生きてるのね……」


 あたしはチフユの子供達からの叔母さん発言にショックを受けたが、彼等の言葉の節々からあたし達が生きてこの時代にいるという設定を感じ取った。


「まぁチフユさんはあれで優しいからねっ。見えない所で位はうち達にストレス発散したかっただけじゃないのかなっ。チナツだってチフユさんには色々と手助けしてもらったでしょ?」

「まぁそうだけど……」


 確かに、チフユはあいつと一緒に両親が殺された後のあたしを慰めてくれたし、ひねくれていたあたしとも面倒臭そうではあったが遊んでくれた。

 今ならあいつへのポイント稼ぎとか穿った見方が出来なくもないけど、流石に子供の頃からそんなことを考えて行動はしていないだろう。

 そんなこともあったからこそ、認めたくはないけどチフユを姉として認めていたのだ。

 だから、あの惨殺死体を見たときは、そこまで怨まれてたんだなとショックを受けた。

 でも、この子達の話を聞く限りだと、あたしは生きていてこの街に偶に帰って来ているらしい。

 本当にあたし達の事が嫌いであれば、そもそも存在しないことにだって出来たはずである。

 それなのに敢えて、あたし達を生かしておいている……。


「本当に面倒臭い性格してるわ……」


 夢の中で位、あたし達に対する無駄な遠慮なんてしなくても良いのにね……。


「チナツも十分面倒臭い性格してると思うよっ」

「わたしからしたら、チアキの方が面倒臭いと思うけど」

「あんたが言うんじゃないわよ……」



 気を取り直して、子供達にチフユの居場所を聞くと森の裏で剣の修業をしているらしい。

 家事しろよ、思わずそう思ってしまった。

 予想以上に子供と仲良くなって戯れていたチハルを引き摺りながら森の向かうと、全裸の筋骨隆々とした男に跪いている髪の毛が背中まで伸びて今以上に美人になったチフユがいた。

 跪いているというよりは土下座していると言っても良いかもしれない。

 下を向いているので顔は良く見えなかったが、肩が震えているのを見ると相当悔しい思いをしているのだろう。


「これは不倫現場だね」


 その状況を見つけたチハルはとても嬉しそうに笑っていた。


「成る程。こうやって力で無理矢理従わせれば、チフユを寝取らせることが出来るんだねっ」


 チアキもチアキで、良い発見が出来たと言わんばかりに嬉しそうにしている。


「あんた達、チフユの不幸を喜び過ぎじゃない……?」

「うちは一度で良いからあの澄ました顔を歪ませて見たかったんだよっ」

「それ悪役の台詞だから……」


 チアキの倫理観はいい加減ヤバいのではないだろうか。

 一度、あいつにちゃんと説教してもらった方が良いと思う。


「だって泥棒猫にはそれ相応の報いがないとね。チナツだって悪いことした人は、ちゃんと酷い目に遭わないとすっきりしないでしょ?」

「別にチフユはそこまで悪いことしてないと思うんだけど……」

「お兄ちゃんをわたしから奪っただけで悪だよ」


 チハルもチハルでもう駄目かもしれないわね。


「それでどうするのかなっ」


 チアキが魔王討伐のための作戦を聞いてきた。


「どうするって、そんなの決まってるよ。あそこにいる全裸ごとチフユお姉ちゃんを誅すれば良いんでしょ?」

「それやったらミッション失敗になるから……」


 しかも、その言葉だと全裸がオマケになってるから……。

 せめて逆にしてちょうだい。


「一応、まだあたし達は向こうに気付かれてないみたいだからね。チハルの聖剣投擲で先制攻撃を仕掛けるわよ」

「向こうは【カウンター】系列のスキルを持っている可能性があるけど良いのかなっ?」

「大丈夫よ。あたしもスキルを使うわ」


 あたしのスキルは【チート能力無効化】。

 自分で努力して手に入れたモノでないスキルや魔法等の能力を全てなかったことにするスキルだ。

 このスキルに例外はない。

 あたしのスキルの前では神託で授かった能力だろうが、転生特典で手に入れた能力だろうが、生まれ持った能力だろうが、特殊な装備をすることで覚えられる能力だろうがすべて無効化するのだ。

 なおチートから派生した能力もすべて無効化するため、チート能力のレベルを上げて能力が上がったとか、チート能力と併用して使った技とかもすべて無効化する。

 そう、このスキルは『努力こそが全て』を現しているスキルなのだ。

 長年一緒にいるツンデレの健気な努力こそが恋愛において最も強力なのだ。

 ポッと出の良く分からない美少女なぞに負けない魅力があるのだ。

 あたしのスキルはそれを可能にする。


 そうだ、世の中のツンデレざまぁなど、このあたしが全て破壊してやるのだ!!

 素直になれないツンデレの気持ちを量れない男なんてすべて悪だ!!

 そして、何もしなくても自分の気持ちを量ってもらえる等と甘えた考えをしたツンデレも悪なのだ!!

 あたしはその二つを破壊する。

 ツンデレ業界の破壊者になってやるのだ!!!!


「トリップしてないで作戦の続きを話して欲しいなっ」


 チアキに言われ、我に返る。

 そうだ、ツンデレざまぁを根絶することも大切だが、今はあの全裸を倒すことも大切だった。


「取り敢えず、あたしのスキルで奴の能力をすべて無効化させるわ」

「それやられるとわたしの【状態異常耐性】も剥げるんだけど……」


 確かにチハルの【状態異常耐性】は強力なスキルである。

 しかし、そんなものは魔法で代用が効くのだ。


「大丈夫よ、ちゃんと魔法で耐性つけるから」

「それなら良いけど……」

「併せて、チアキにはあたし達につけられる限りのバフを掛けて貰うわ」

「構わないよっ。でも、リジェネ系はうちが掛けるよりチナツが掛けた方が効果大きいんじゃないかなっ?」

「それはちゃんとあたしがやるわよ」


 確かにチアキのいう通り、あたしの方が回復魔法の魔術適正は高い。

 攻撃系の適正はチアキの方が高いけどね。


「それじゃあ、作戦の流れを纏めるわね。まず、あたしが【チート能力無効化】のスキルを使って、全裸の能力を全て封じるわ。その後、チハルに聖剣を投擲してもらって、後は流れで」


 二人はあたしの作戦に頷く。


「後、チハル。絶対に聖剣をチフユに当てるんじゃないわよ。フリじゃないからね」

「大丈夫だよ」


 そう言ったチハルの顔は歴戦の戦士の様だった。

 その邪念がなく澄み切って落ち着いた態度は明鏡止水の境地に達しており、決して信用できなかった。

 絶対にチハルが投擲したら、チフユにバリアを張ろう。

 そう心に誓うのだった。


 チアキと協力して一通りのバフを掛ける。

 チハルは聖剣に魔力を籠め続けていた。

 聖剣の刀身がチハルの魔力により漆黒になる。


 準備は整った。


「それじゃあ、作戦開始するわよ」


今日で初回投稿から一か月が経ちました。

途中色々とありましたが、ここまでやってこれたのは応援していただけた皆様方のおかげです。

引き続きよろしくお願いいたします。

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