この世界には2種類の生物がいる
この世界には2種類の生物がいる。
それは『服を着ている生物』と『服を着ていない生物』だ。
最近、チフユの様子がおかしかったので問い詰めてみたら、先代の魔王が全裸でチフユに張り付いているというのだ。
なんて羨ま―――― いや、そう言う事を考えてはいけない。
どちらにしても、俺のチフユにそういうセクハラをするのは許されない行為である。
むしろ、俺の裸をチフユに見せたいくらいだ。
しかし俺は、俺たちは『服を着ている生物』だ。
全裸になることはできない。
ある地方では、剣士や忍者が全裸でいることもあるという。
所謂、【全裸カウンター】や【裸忍者】と言われるスキルを持っている特異な存在だ。
もしかすると先代の魔王もそう言ったスキルを持っているのかもしれない。
と言うことは、先代の力を受け継いだチフユにも、そう言ったスキルがあるのかもしれない。
つまり、チフユは全裸になった方が強いのかもしれない。
これは新しい発見である。
チフユが元気になったら是非やってもらおう。
「兄様、その考えは面白い考えだけどセクハラだよっ」
そんなことを考えていたら、チアキに呆れられてしまった。
そう、今回の先代魔王全裸問題を解決するために有識者であるチハル達に集まってもらっていたのである。
「しかし、ある意味で全裸と言うのは魅力的な要素だ。それだけで、世界を取ることも出来る」
「兄様の考えは分かるけどね。現実問題として全裸で道端を歩いていたら犯罪なんだよっ」
「確かにただ全裸でいるよりは、ある程度布地があった方が性的に興奮できるな」
そんなことを考えていると
「お兄ちゃんが全裸を求めているんだから、わたしは全裸になってお兄ちゃんに奉仕する必要があるの!」
「そういうことは状況を考えてやりなさい!!」
視界の端で、俺の思考を読んだチハルが全裸になろうとしているのを、チナツが必死で止めていた。
あいつ等何やってるんだ?
「でも実際【全裸カウンター】は物凄い力があったよっ」
「試したのか?」
「うちも【カウンター】系のスキル持ちの人が、どういった攻撃をどれ位反射できるのか気になったから実験してみたことがあるんだよ」
「なるほど。それで結果はどうだったんだ?」
「スキルの強さによって変わってくるから一概にこれって事は言えないけど、ダメージを完全に反射するレベルの【カウンター】持ちがいたのは事実だよっ。即死級のダメージまで反射した時は爆笑したねっ」
「ちなみに、それって被験者は無事だったのか? っていうか良くやってくれたな」
「その為の洗脳魔術だよっ。人類の進歩の為には犠牲は必要なんだっ」
こいつ、何時か処刑されるんじゃないか?
「大丈夫よ、その実験はあたしも付き合わさせられたから」
チハルをぐるぐる巻きに縛り付け口枷をつけた事に安心したのか、チナツが会話に参加してくる。
「ダメージとかデバフとかを影響を一切遮断して、かつダメージ計算だけはされるっていう完全にカウンターの為だけにある補助魔法を使ってから実験してるのよ」
チナツの奴そんな便利魔法使えんの?
流石は、聖女様。
「ちなみにその魔法はうちも使えるよっ」
自慢気にチアキが割り込んでくる。
「自分で使えるのに何で、チナツ呼んだんだよ?」
「チナツ呼んだのはうちの上司で、うちは呼ぶ気なかったんだよっ。上司は、うちだけだと補助魔法使わないって判断したみたいだねっ」
確かにチアキだけだと補助魔法使わなさそうだ。
逆に補助魔法なんか使ったら正しい数値が出ないとか言いそう。
「うちの考えとしては、被験者が死んだら蘇生魔法使えばいい訳だし、後遺症を負う様な怪我をしても回復魔法でちょちょいと治せるからねっ。その時の恐怖だって洗脳魔法が掛かってれば覚えてないし、トラウマになることだってないんだよ。被験者は2時間程度意識がなくなるだけで高給が貰えるっていう、皆にとってWinWinの実験だったんだよ」
結論だけ見ればそうかもしれんが、過程がヤバ過ぎるだろう。
こいつはもっと倫理観について学んだ方がいい。
「それであたしが呼ばれたって訳。あたしとこいつ以外にそんな最上級魔法使える人いないし、時給がすごく良かったからね」
なるほど、被験者の自由意思を奪った上で安全性を確保して実験したって事か。
十分アウトだろ……。
どちらにせよ、チアキが今捕まっていないということは、問題にならなかったんだろう。
そういう意味ではチアキの上司はナイスだったと言えるかもしれない。
「兄様、世の中お金が全てなんだよっ。お金があれば、法律すら超越した存在になれるんだっ。そして、そのお金を沢山持っているうちは、神そのものと言っても良いかもしれないね」
「つまりお金さえあればお兄ちゃんと結婚できるってこと?」
えっ、その発言は問題になったってことなのか?
後、チハルの口枷がいつの間にか取れていた。
「チアキ、あんまりこいつを不安にさせるようなことを言わないで頂戴。ちゃんと、被験者には誠心誠意土下座して謝ってきてるから大丈夫よ」
それって結局ダメって事じゃない?
そして、チハルの発言は綺麗にスルーされた。
俺も便乗しよう。
「それに、そんな済んだ話はどうでもいいでしょ。今回集まったのはチフユの案件な訳で」
「それは確かにそうだが……」
確かに終わったことを気にしても仕方がない。
チアキがここにいると言う事は、この国の法律上問題なかったという事だろう。
俺はそう信じることにした。
チフユ回のはずなのに台詞が一個もない謎。
次回はちゃんと喋ってくれるはずです。




