チナツ事変
製麺所で麺打ちをしていたら、顔を真っ赤にしたチナツが駆け込んできた。
「あんた、よくも長い間あたしを騙したわね!」
ん、どういう事?
「10年前にあたしに『家族になろう』って言ったじゃない!!」
「だから今、俺とお前は家族じゃないか?」
「なっ、それは兄妹としてでしょ!!」
何を当たり前のことを言っているんだ?
「彼女はそれを夫婦として家族になろうと勘違いしていた」
俺が頭の上で疑問符を浮かべていたら、チフユがニヤニヤしながら入ってきた。
その顔は性悪女の顔である。
「なるほどな。でも、当時俺10歳だぞ。普通に考えてその年齢で結婚しようとはならんだろ。それに、当時のお前は実のご両親が亡くなった後でかなり憔悴してたじゃないか。普通に考えて、そんな状態の奴に結婚を迫らないだろ……」
当時の俺の言葉を聞いて、何故かチナツの頭の中では俺と結婚することになっていたのか。
7歳の憔悴した幼女に結婚を申し込む奴はロリコンか、ガチで頭のオカシイ奴しかいないと思うぞ……。
こいつ、馬鹿だろ……。
しかし、チナツは俺の言葉を聞いて顔を赤くしていた。
「そういう問題じゃないでしょ!! あたしはあんたの言葉を聞いて、今まで努力してきたのよ!!」
「じゃあ逆に聞くが、さっきの言葉の意味が違ったら、お前は努力しなかったり、俺の事を好きになったりしなかったのか?」
俺はキリっとした表情を作り、チナツにそう聞いた。
さっきの感じだと、チナツはかなり怒っている。
ここは、ちょっと良い感じの空気を出して騙くらかすのが一番だろう。
「そ、そんなことある訳ないじゃない!! あたしは、当時のにぃにに凄い感謝してる!! パパとママがいなくなって、悲しんでたあたしをにぃには何時だって元気づけようとしてくれた!! だから、あたしはこの人にお礼をしたい、この人の為に何かをしたいそう思った!」
「チナツ……」
「兄妹になった後だって、あんたはチハルと同じ様にあたしを扱ってくれた……。だから、あたしはあんたを好きになったの……。 にぃにとすっと一緒にいたいと思えたの……」
「なら、それで良いじゃないか。『家族になる』って言葉の捉え方が違ってたからって、今と何も変わらないじゃないか」
「にぃに……」
こいつ、やっぱりチョロいわ。
俺の溢れ出るイケメンオーラに流されたな。
後ろから冷たい目線を感じるが、気にしたら負けだ!!
チフユの目線はいつも冷たいんだ!!
「ていうか、その程度の事で怒鳴り込んできたのか……」
「だって、こいつがその事であたしを煽ってきたから……」
「何やってんの?」
俺は思わずチフユを見る。
「兄さんに任せた結果逃げ帰ってきたから、取り敢えず一番乗せやすそうなチナツから討伐して行こうかなと……」
本当何やってんの?
「つまり、俺に任せていたら話が進まないから自分から動いたってこと?」
「そう」
「んで、チナツに勝負を仕掛けて勝って来たと?」
「そうなる」
チフユは自慢げな顔をしていた。
いや頼りにならない俺も悪いが、あんまりチナツを虐めないで欲しいんだが……。
「それでチナツは論破されて、悔しくなったから俺の所に来たのか?」
「ち、違うわよ! あんたの所で事の真偽を判断したかったのよ!!」
大体の流れは分かったが、何とも言えない気分だ。
「チナツは純情なんだ。あんまり虐めないでくれ」
「なっ! 誰が純情よ!!」
「でも、兄さんに任せてたら誰も切れないでしょう?」
チフユのいう事も確かではあるが、俺は出来れば三人を悲しませたくはないのだ。
と言うか、三人の前で俺はチフユが好きだと言っている。
諦めないこいつらがいけないのだ。
「それでチナツはチフユの話を聞いて、俺を諦める気にはなったのか?」
「そんな訳ないじゃない!! あんたはあたしの物なんだから!!」
「だそうだぞ?」
「はぁ」
チフユの溜息が心に染みる。
「そうは言ってもこのままだと私達は結婚できない。厳しくても三人の心を折る必要がある」
「あたしのこいつへの気持ちが簡単に折れると思わないで!!」
おい、さっきまでちょっと折れてただろう……。
「チナツ、さっきから兄さんへのLOVEを前面に押し出してるけど良いの?」
「えっ……」
チナツはハッとして、口を金魚の様にパクパクしながら顔が真っ赤になる。
チフユは攻め口を変えたらしい。
「馬鹿ーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
チナツは逃げ出した。
「私の勝ち」
満足そうにピースサインを浮かべつつ、チフユは俺を見た。
「いや、結局チナツが俺を諦めていないことに変わりはないんだが……?」
「あっ」
あっ、じゃないんだが……。
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