寝取り系聖女
今回はチナツ視点です
あたしは今日も大聖堂にいる。
チアキの手によって王都と村のゲートが作られたから、気軽に王都に戻ってくることが出来る。
あたしは何処ぞの勇者様の様に暇ではないのである。
聖女の力を求めて、病にかかった人たちが今日も大聖堂を訪れるからだ。
正直、あたしの力じゃなくても治療できる人たちだっている。
でも教会の権威維持のためか知らないが、そう言った人であっても一定数はあたしのところに回ってくるのだ。
そしてそれは非常に面倒臭い事なのだ。
しかし、あいつは世界一の麺職人を目指しているという。
将来あいつの隣に立つ為には、あたしも世界一の聖女にならないと吊り合わないだろう。
だから、あたしは今日も人を癒すのだ。
あいつに相応しい自分になる為に……。
「チナツやっと見つけた」
治療をに来た人達も大体はけてきたので休憩していたら、チフユが大聖堂に来ていた。
「何の様よ?」
「いい加減、私と兄さんの仲を認めてほしんだけど」
チフユの用件は予想通りだった。
この女と兄さんの婚約が決まった時、兄さんが喜んでいたのは知っているが、その隣で狂喜乱舞していたのがチフユである。
チフユはあまり感情が表に出ないクールびゅーてーだが、兄さんの事に関してだけは感情が表情に出るのだ。
あの嬉し泣きしているのか、微笑んでいるのか、爆笑しているのか、なんと表現したらいいのか全く分からない顔はあたしの中の変顔ランキングで歴代1位を誇っている。
まぁ何にせよ、この女もご多分に漏れずあいつのことが好きなのだ。
「あたしは他の二人と違って、あんた達の仲は認めてるわよ」
「嘘つかないで。それなら、兄さんを寝取ろうとはしないはず」
嘘をついている訳ではない。
あたしの難癖を二人が乗り越えられれば、問題はないのだ。
「あんたがあいつを寝取られない様に注意すればいいだけの事でしょ?」
「そうやって貴女に邪魔をされたら、私達の気の休まる時間がない!!」
チフユが声を荒げて、あたしの口撃に反論する。
珍しい事もあるものだ。
「そもそもあんたが先にあいつをあたしから奪ってたんじゃないの。それなのに、自分一人だけヌクヌクと幸せになれると思ってる方が頭おかしいわよ」
「何言ってるの……?」
「あたしの方が先に、にぃにと結婚するって約束してたんだから!!」
「えっ、何その話?」
「あたしのパパとママが魔物に殺されて、落ち込んでいた時、にぃにはあたしを励ましてくれた! 家族になろうって言ってくれたの!」
「それって、兄妹として家族になろうって意味じゃないの……?」
「だから、あたしはにぃにに相応しいに相応しいお嫁さんになろうと色々と努力をしてきたのに、あんたがあいつを横取りしたんじゃない!!」
にぃにがあたしを裏切る訳がない。
どうせ、こいつがにぃにを唆したんだ!
だからあたしはこいつを許さない!!
にぃにがこいつの事が好きだって言うから、あんた達の仲を認めてもいいと思っているけど、あんたが幸せになることを認めてはいない。
「チナツちょっと落ち着いて」
「何よ? 今更、謝ろうって訳?」
「そうじゃなくて、貴女、兄さんの言葉の意味勘違いしてない?」
「そんな訳ないじゃない!! だってあいつから『家族になろう』って言ってくれたのよ!! まだ、義父さん達に引取られてない時に!!」
「兄さんがそう言ったから、おじさんたちが引き取ってくれたんじゃないの?」
「えっ?」
「それにその話、チナツを引き取る前ってことは10年以上昔の話。当時一桁代の年齢の兄さんが結婚しようって意味で『家族になろう』って普通は言わないと思うんだけど……」
確かに……。
そうするとあたしは10年近くあいつの言った言葉を勘違いしていたって訳?
それで、必要のない人間に当たってたってこと?
「貴女だって知ってるでしょう。兄さんは思わせ振りな言葉を言うけど、そんな意図なんて全くないって事くらい」
いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
こんなにも恥ずかしいことはない。
あたしの人生で一番の汚点にもなろうことである。
くそ、チフユにこんな事で論破されてしまうとは……。
もう駄目だ。
恥ずかし過ぎる。
そうだ、死のう。
あいつと一緒ならあたしは何処にだって行ける。
あいつと一緒に死のう。
「チナツ、どんまい」
チフユのその笑顔があたしの胸に刺さる。
こうして、聖女は魔王に討伐されたのだった。
いつもブクマ・評価等有難うございます。
引き続き頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。




