最終報告
三人の説得に失敗した翌日、チフユへの報告と言う最も胃が痛くなる時がやって来てしまった。
「それでどうなったの?」
今日も今日とて製麺所での会談である。
「失敗しました」
俺は正直にチフユに向かって土下座した。
弁解のしようもない。
と言うかチアキに至っては、状況を悪化させた感まである。
「つまり、あの三人は私と兄さんの仲を認める気はないってこと?」
「そうだ」
俺はキリっとした表情を作り、チフユを見る。
チフユは冷たい目をしていた。
ドMであれば興奮できるのだろうが、生憎俺はMではない。
「まぁ、兄さんが一日説得した程度で、あの3人が折れるとは思ってなかったし仕方がない」
「おお、流石はチフユ」
チフユの温かい言葉に心打たれる。
「それでどうしよう?」
「もう諦めて、ハーレムを作ろう」
俺は達観した表情を作りそう宣言した。
「はぁ? 兄さん、頭大丈夫?」
まぁ予想通り一刀両断される訳だが。
チフユはハーレムとか逆ハーレムとかが嫌いな人間である。
ハーレムを作りたがる奴は、新しい異性が出てくると古い異性を順繰りに捨てていって、結局作ってる奴しか幸せになってないのが納得いかないとの事だった。
魔王様の癖に誠実な奴である。
「なら、どうするんだよ?」
しかし、現状あの三人が簡単に俺を諦めるとは思わない。
最悪、幼馴染と妹達のまおゆう大決戦が始まってしまう。
「ここは悲しいけど、あの三人を良い感じに洗脳して兄さんから離れてもらうしかない」
「それもそれでアウトだろ……」
ハーレムもの以上に洗脳NTR系は誰も幸せにならないぞ……。
「やっぱり兄さんを魔王城に連れてって、あの三人から引き離すのが一番無難」
「それをすると、チハル辺りが喜んで魔王城に来てお前を誅しようとすると思うぞ……」
チハルが魔王城の玉座に佇むチフユに向かって、喜んで聖剣を投げている姿が目に浮かぶ。
それで、チフユに返り討ちにあっている姿がな!
「でも、普通に結婚してもチナツが付いてくるんでしょう?」
「そう言っていたな。んで俺をお前から寝取るらしい……」
チナツもちょっと考えている方向性がおかしい。
結婚した後の人間に既成事実を作って、嫁を追い出そうとするとか完全に間女の考え方だ。
俺はそんな方法で結婚できても幸せには慣れないと思うぞ……。
「そのまま放置するのは?」
「それはチアキの思う壺だろう」
時間的余裕があるとチアキが何をしてくるか分からない。
あいつに時間を与えたら、惚れ薬とか普通に作りかねん。
それ以前に俺が洗脳される可能性もある。
俺はちゃんと自意識を持っていたいぞ。
「つまり八方塞がりってことじゃない」
「そういう事だな」
二人で溜息をつく。
まさか幼馴染と結婚するのにここまでハードルが高くなるとは思わなかった。
幼馴染と結婚するのに流血沙汰にならない方法を誰かに教授してもらいたいものである。
「兄さん、何かあった時は私を守ってね」
「当り前だろ。確かに俺の方が職業的には弱いが、それが大切な人を守らない理由にはならない」
チフユも自分の今後について色々と不安になったのだろう。
そもそもチフユは魔王であり人類の敵である。
今はそんな情報をチナツ達が止めてくれているが、ちょっとでも不審な動きをしたら討伐対象になってしまうだろう。
そして、討伐することが出来る勇者様がその討伐にかなり乗り気なのである。
不安にならない訳がない。
「大丈夫だ。何があっても俺がお前を守るから」
震えたチハルを抱きしめる。
「兄さん……」
良い空気になった俺達の間に殺気が走る!
「その空気、このわたしが断ち切る!!」
チハルである。
チハルが聖剣を投げて来たのだ!
聖剣は何処からともなく現れたうどんの口によってキャッチされたが、非常に危ないところだった。
ナイスだ、うどん。
今度油揚げを好きなだけ食べさせてやろう。
俺はそう誓った。
「チハル! 何やってんのよ!?」
「そうだよっ、兄様に当たったら怪我じゃすまないんだよ!!」
チナツとチアキもいたらしい。
というか、お前ら何時の間に来たんだ……?
そして、チフユの心配もしてやってくれ……。
「うち達に話をしたら、最後にチフユさんに相談すると思ったんだよっ」
相変わらず、俺の心を読んだかのような的確な回答である。
「つまり最初から張ってたのか?」
「そういう事だねっ」
チアキは自慢気にしていたが、それは自慢出来る様なことではない。
ストーカーなのかな?
「それで結論は出たのかなっ?」
「いや、八方塞がりでどうしようもないんだが?」
「兄様は難しく考えすぎなんだよ」
「どういう事だ?」
「つまりは誰と結婚すると一番将来が幸せになれそうか考えればいいんだよっ」
「考えた結果、チフユになったんだが?」
「そうとも言えるし、そうでないとも言えるんだよっ」
「どういう事だ?」
「その説明をする前に今のうち達の状況を理解する必要があるよっ」
くそ、このままでは会話が無限ループしてしまう。
――誰か援護はないのか!?
周りを見るとチハルが縛られてチナツに鞭で打たれていた。
チフユもローソクを持って対応している。
ん、あいつら何やってるんだ?
「お兄ちゃん、助けて!!」
俺の視線に気付いたのか、チハルが助けを求めて来た。
チナツを見ると首を横に振っていた。
ボディランゲージの意味は分からないが、多分助けるなという事なのだろう。
それにしても縛っている紐とローソクは何処から準備してきたんだ?
よし、見なかったことにしよう。
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