今何を為すべきなのか
「よぉ、チフユ。取り敢えずの方針が決まったから、話に来たんだ」
扉から出て来たチフユに挨拶をする。
なお、隣ではチハルが投げた聖剣を手元に呼出し、三刀目を投げていた。
聖剣には念じると手元に戻る機能が付いている様だ。
と言うか折角戦闘を終わりに出来る空気が出ていたのに、何故戦闘を続けようとしているのか、ゆうしゃとしての ちが さわいでしまったのか 謎である。
「それで、どうするつもりなの?」
チフユは、チハルが戦闘を続けていることは最早気にもしていなかった。
そういうものと捉えたらしい。
むしろ、チフユと一緒に出て来たうどんとそばが二人の戦闘を止めようとしていた。
ご苦労様です。
「取り敢えずは即席麺の作り方をマスターすることにした」
俺もチフユの態度にならい、チハルと変態達の戦いは気にしないことにした。
もう大怪我しなければ、それで良いよ。
そして、チフユの質問に答える。
「えっ?」
チフユは俺の説明では理解できなかったらしい。
「そもそも麺類というものは未来を切り開く食べ物だ。つまり、この世界の至高の存在であると言える。日本麺、中華麺、洋麺様々な麺類がある中で、即席麺と言うのは麺類の新しい境地である。その作り方を広く世界に伝えていくことは世界平和にも繋がるはずだ」
「いや、意味が分からない」
チフユには俺の言葉が届かなかった様だ。
やはり同棲している訳でもない婚約者だと以心伝心とまではいかないのか……。
「つまりはあんたの事が心配だから、魔王軍に行くのであれば下っ端として付いていくし、行かないのであれば護衛役としてあたし達をつけるってこいつは言いたいのよ」
「なるほど」
チナツが俺の意見を補足してくれた。
補足と言うよりは勝手に人の心情を吐露したような感じだが……。
「男のツンデレは気持ち悪いだけよ。恥ずかしがらないで、普通に心配だから一緒にいたいって言いなさいよ」
チナツ様の背から後光を感じられるほど、貴い御言葉である。
『気持ち悪い』
俺はその言葉を深く胸に刻み込んだ。
「はぁ。でもこうして直接会うと分かるけど、確かにチフユから闇のオーラを感じるわね」
チナツは俺に冷たい目線を向けた後、チフユと向き合った。
単純に、チフユが魔王として問題ないのか見極めたいのもあるのだろう。
「そうは言っても私が私であることに変わりはない」
「そんな言葉だけで信用してもらえると思っている訳ではないでしょう?」
「どうしたら信用してもらえるの?」
「あたしはチハルと違うから、無抵抗に討伐されれば信じるとまでは言わないわ」
チナツの中でもチハルはバイオレンスだと思われている様だ。
「あんたがまだ魔王に乗っ取られていないか確認するために、質問を答えて欲しい」
「別に構わない」
「それじゃあ、一つ目の質問ね。おならぷう」
「おならぷう」
一つ説明させてもらうと彼女達が狂っている訳ではない。
おならぷうとは神の言葉でこんこんにちはを表しているのだ。
つまり、彼女達は神の言葉で挨拶をしていると言えるだろう。
「魔王であっても、神の言葉を使う事に忌避感は感じないという事ね。それじゃあ、次の質問。あんたがこいつの婚約者であることは知ってるけど、重婚とか内縁の妻とかは認める気あるの?」
「それはない。私はハーレムも逆ハーレムも嫌い。認める気はない」
「それなら、こいつの何が良くて婚約しようと思った訳?」
「それは貴女だって解っているでしょ?」
「質問に質問で返さないで。あたしはあんたの言葉でそれを聞きたいんだけど」
「言葉に出した瞬間陳腐になるから嫌」
「質問に答える気ないでしょ?」
「こういう質問なら、そうもなる」
「本当に口の減らない女ね!!」
「貴方こそ私に大好きな兄さんが寝取られて悔しいって言えばいいじゃない?」
「な、何をふざけたことを!!」
「一番じゃなくてもいいから、一緒にいたいなんてお可愛いこと」
「やっぱり、あんたは魔王よ!! ここで誅してやる!!」
「消耗した貴女で私に勝てるとでも?」
「あんたこそ、子供のころからあたしに一回も勝ったことがない癖に調子に乗り過ぎよ!!」
物凄い舌戦である。
しかも個人的な意見で魔王認定を始めやがった。
「ちょっと落ち着け」
そろそろ手が出そうな空気になって来たので口を出す。
「あんたは黙ってて!! これは大事なことなの!!」
「大丈夫だよ、兄さん。怪我をする前に片をつけられる」
これはもう駄目だ。
「やるならせめて魔力とか武器とか使わないでやってくれ」
「うるさい!!」
「分かった」
二人は俺の言葉に返事をし、喧嘩に入った。
一応、俺の忠告を聞いて素手でやってくれているが、動きが早すぎて俺の目には追えなかった。
本当に怪我しないでくれよ?
一方、チハル達の戦いは決着がつこうとしていた。
結果は大方の想像通り、チハルが負けていた。
チハルの隣には、うどんとそばも倒れている。
あの変態、一対三で戦って勝ったってことか?
ていうか、なんでうどんとそばは勇者の味方に入ってるの?
そして相変わらず聖剣はチハルではなく変態が装備していた。
変態も変態で結構ボロボロにはなっていたが立っているので、一応奴が勝者なんだろう。
「さぁ少年よ!! その手の中にあるカップ焼きそばを食べるのだ!!」
変態に話しかけられて思い出したが、俺の手には即席麺があるのだ!!
色々と唐突な展開があって忘れていたが、今やらなければならないことを思い出した。
「そうだ!! 俺はカップ焼きそばを食べる!!」
その為にすべきことは一つ。
お湯だ!!
お湯が必要なんだ!!
「チナツ! チフユ! お座り!!」
俺の声に反応して、チナツとチフユが喧嘩を止め地面に座る。
突然の俺の言葉に体が勝手に反応してしまったらしく二人は唖然としている。
「何で止めたのよ……?」
チナツは気を取り直したのか立ち上がりつつ俺に問う。
「今は喧嘩をしている場合じゃない」
そう、今はチフユの家でお湯を沸かす時だ!!
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