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カップ焼きそば現象


 チナツの居住地について取り敢えずの方向性が決まったので、チフユの家に向かう。

 昨日聞いた感じだと、チフユは今日は家にいるはずだ。

 

「それにしても、即席麺かぁ。どんなものなんだろうね、お兄ちゃん」


 道中、チハルに即席麺の素晴らしさをレクチャーしていたら、その存在に心奪われてしまった様だ。

 当然のことである。

 俺も最近見聞きしたモノの中では、王都で出会った刀削麺のエースの次に気になっている存在である。


「全く想像が付かないな。やはり魔王軍に潜り込むか、魔王軍を鹵獲するかしかないな」

「そう考えると、早くチフユのお姉ちゃんの所に新しい魔王軍の人に来て欲しいね」

「あんた達、よく解ってない物によくそこまで固執できるわね」


 チナツには即席麺の素晴らしさが理解できなかったらしい。


「何を言っているんだ!? さっきから即席麺の素晴らしさについては散々説明して来ただろう!!」

「でも、それってあんたの妄想じゃない」

「なんだと……」


 確かにチナツの言うとおりだ。

 今俺が知っている情報と言えば、お湯を使って3分で調理が終了するという事だけだ。


「くっ!! 俺はまだ即席麺のその字も知らないというのか!!」


 俺はなんて情けない男なんだ。

 ちょっと聞きかじった事だけで、全てを理解したつもりでいたなんて……。


「チナツのお陰で目が覚めた」

「どういう事よ?」

「実際に見てもいないのに、即席麺を野放しに評価するのは間違っていたな」


 そうだ。

 大切なことは実際に体験してみることだ。

 取り敢えず、この件については保留しておこう。


「フハハハハハ!! その程度で即席麺の評価を取り止めるとは笑止!!」


 そう思っていたら、後ろから高さ5.8センチ、奥行17.4センチ、幅15.7センチサイズの茶色の箱を投げつけられた。


「何者だ!?」


 思わずその直方体の箱を手に取り、相手を見る。

 そいつは男性、身長は180センチ、頭に黒赤黄の三色の色合いをしたマスクを被った、筋肉モリモリマッチョマンの変態だった。

 その男は不敵な笑みを浮かべており、その存在感と合わせて一回りも二回りも大きく感じられた。


「即席麺、特にカップ焼きそばは至高の食べ物。それを食した事がないなんて貴様は人生の8割を損している!!」

「なん……、だと……?」

「貴様は知らないようだな!! 焼きそばとカップ焼きそばは似て非なる食べ物。焼きそばとカップ焼きそばを食べたい時は違うとまで言わしめた究極の品よ!!」


 男は俺を指さしながらそう言ってのけたのだ!!


「それを貴様にやろう」


 それとは、先程投げてきた箱の事であろう。

 よく見ると、全体的に艶々とした薄地の物でコーディングされていた。

 そして目立つ位置にデカデカと黄色い文字が書かれている。


「それがカップ焼きそばと呼ばれる食べ物よ!! ソースを練り込んだ香ばしい麺とコク旨ソースが奏でる協奏曲に、からしマヨネーズを入れることにより、味に更なる深みを持たせているのだ!! 正に夜食に食べたい料理の最上位に入る食べ物と言えるだろう!!」

「これが……、即席麺……」


 そう言われると途轍もなく神々しい食べ物に見えてきた。

 こんなにも格式高い食べ物が存在していたとは……。

 これにはセンチメンタリズムな運命を感じざるを得ない。


「死ねぇええええええええええええええええ!!」


 そんな俺の感動も隣にいたチハルの投げた聖剣によって吹き飛ばされる。

 いや、いくら見ず知らずの変態ではあっても、いきなり聖剣投げるなよ……。

 投げられた聖剣は、変態の手によって止められていた。

 よくある人差指と中指の間で挟むやつである。

 アレ本当に出来る奴いたんだ……。

 変態の技量の高さに感服する。


「あんた気付いてないかもしれないけど、あいつ魔族よ」


 そんな俺を知ってか知らずか、チナツも腰から鞭を取り外し戦闘態勢を取っていた。

 チハルも徒手空拳で構えを取る。


「中々、無粋な真似をしてくれるな!!」


 変態はそう言って、聖剣を投げ返してきた。

 チナツが慌てて防御結界を張り、聖剣を防ぐ。


「くっ!!」


 聖剣はチナツが張った防御結界に止められたが、チナツは防御結界に力を籠めすぎたのか力尽きてしまった。

 それを見たチハルは地面に落ちた聖剣を拾い上げ―――


「もう一回、死に晒せぇええええええええええええええええええええ!!」


 二投目、投げる。


 いや、投げるなよ……。

 

 二投目も変態は二指で止めようとしたが、それは叶わなかった。

 聖剣は変態の肩に刺さる!!


「くっ!! 中々やりおる」

「馬鹿じゃないんだから、同じ感じで二回も投げる訳ないじゃん」


 チハルはフンスっと鼻息を鳴らしながら、無い胸を反らした。

 お兄ちゃんは、馬鹿だから2回投げたと思ったよ……。


「チナツ、大丈夫か?」

「ええ、魔力を使い過ぎただけだから」


 チナツに手を差し伸べるが、取ろうとした瞬間恥ずかしくなったのか、手を振り払われてしまった。

 ツンデレLv1の技だし仕方がないな。


「あなた、魔王軍でしょ? これ以上痛い目に遭いたくなかったら、即席麺の作り方をお兄ちゃんに教授しなさい!!」


 チハルはこっちの様子をあまり気にせず、勝利の気分に浸りながら、変態に降伏勧告を出す。


「この程度で、私に勝ったと思うとは笑止!!」


 変態は肩に刺さった聖剣を引き抜き、刀印を組む。

 すると変態は物凄い勢いでブレて行き、最終的に8体の分身体を作った。

 全員がチハルの投げた聖剣を装備している。


「ちょっと、これは不味くないか?」

「確かにね……。」


 チハルを盾にし、チナツをかばう様にして立つ。


 すると、チフユの家のドアが開いた。


「昨日に引き続き何やってるの?」


 出て来たチフユは頭の上にはてなマークを浮かべていた。

 チフユの疑問も最もである。


 しかし、今回はチフユに助けられたな。

 流石は魔王様である。


ブクマ、評価等いつも有難うございます。

連載開始して一週間で、これ程の評価を頂けるとは思いませんでした。

引き続き頑張っていきますので、応援よろしくお願いします。

また作者のモチベ向上のために、まだ入れてない方はブクマ・評価等入れてっていただけると嬉しいです。

何卒、よろしくお願いします。

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