あいつは麺類の事になると頭がおかしくなるのよね
――ズズッ、ズズズー。
ドワイトの様子を見て、俺はファーストコンタクトに成功したことを確信した。
俺の優雅にヌードルを啜っている姿にドワイトは感動を覚えている様だ。
やはりラーメン――麺類は至高の食べ物である。
それを食しているだけで、俺の魅力が段違いに跳ね上がっているのは間違いない。
さて、問題はここからどうするかだな。
取り敢えず俺の仕事はここでドワイト達の足止めをすることだが、このままここで即席麺を食べていても埒が明かないだろう。
ここは更にドワイト達の度肝を抜く何かが必要だ。
「ところで、何でお前はこいつと一緒にいるんだ?」
俺の魅力に耐えられなくなったのか、ドワイトは俺と一緒に来ていたリジーにそう問いかけた。
ここで変なことを言われるとまずいな。
「い、いや……。あの糞聖女をぶちのめしに行ったら、見事にやられちゃいまして……」
リジーはドワイトが来る前までの自由奔放さは何処へ行ったのやらビクビクと怯えていた。
この辺はチナツから聞いていた通りだな。
リジーは今までの経緯からドワイトを必要以上に恐れているのだろう。
「何時の間にか居なくなったと思ったら、何を勝手な行動を取っているんだ? 俺はお前にそう言った権限を与えたつもりはないぞ」
「で、でも……」
「でもじゃない!! お前は俺の指示に従って動いていればいいんだ!!」
……おお、こわっ。
男のヒステリーはみっともないというが、本当にその通りだな。
まぁドワイトの言い分も分からなくはない。
オレだって、チハル達が危ない所に一人で勝手に突っ込んで行ったら、不安だし心配もする。
そういう意味では勝手な行動は控えて欲しいと言うのは正しいだろう。
ドワイトがリジーを心配して、そう言ったかどうかまでは分からんがな。
まぁ、そう言う仲間思いの奴であれば、チナツにあそこまでボロクソ言われることもないか。
ドワイトのリジーへの叱責は、俺の即席麺がスープのみになっても続いていた。
いや、どんだけ不満を溜め込んでるんだ?
長すぎだろ……。
リジーが変なことを言わないといった意味では都合がいいが、こんな空気ではいくら美味しいラーメンを食べていたとしても、気分的に不味くなってしまう。
「ドワイトさん、落ち着いてください」
こう言うことに巻き込まれると録な事にはならないので、出来れば口出しをしたくないが仕方がない。
もう殆ど残ってはいないが、美味いラーメンを食べる為には多少の手間を惜しんではいられないのだ。
「そもそも、お前も人の家に来て何でラーメンを食べているんだ!!」
俺の仲裁が気に食わなかったのか、ドワイトは怒りの矛先をこちらに向けて来た。
覚悟していたことではあるが、これだから他人のいざこざには巻き込まれたくないのである。
それにしてもラーメンを食べる理由とか馬鹿なことを聞くものだ。
そんなものは一つしかない。
「小腹が空いたからですが?」
寧ろ、空腹は最高のスパイスだ。
空腹な今ラーメンを食べないで、いつラーメンを食べると言うのだろうか?
「お前は俺をお猪口っているのか?」
しかし、ドワイトは俺の答えに納得がいかなかった様だ。
……解せぬ。
ラーメンは世界を平和に導く食べ物だと言うのに、何故それが分からないのだろうか?
「ドワイト、彼の言う通り落ち着いて。乗せられているわ」
先程からドワイトの後ろに佇んでいた女がここで始めて声を上げた。
あの見た目から察するにアンジェラなる聖騎士だろう。
熱しやすいドワイトをアンジェラが制御すると言う、チナツの前情報通りの関係のようだ。
「アンジェラ、そうは言うがな……」
「……彼はあの勇者達の兄になるのよ。常識で図ってはダメ」
何故俺がチハル達の兄であると常識で図れなくなるのだろうか?
なにか納得がいかない。
チハル達に比べれば常識的だと思うのだが……。
「確かに、ここであいつに乗せられても俺に得はない」
「そもそも彼がここに一人で来た理由だって謎よ。今は落ち着いて相手の出方を伺うのが上策よ」
それにしても、何でこいつ等は俺の目の前で作戦会議をしているんだろうか?
馬鹿なのか、チアキの【洗脳】のせいなのか、悩むところではあるが、今は都合がいいので置いておこう。
「さて、美味しいラーメンも食べ終わったので、早速俺の用件を聞いていただきたい」
折角、話の機先を制することに成功したのだ。
このまま畳みかけさせてもらおう。
「俺がここに来た用件は一つ。それは、新商品の販売をこちらの紹介にお願いしたいのです。」
「……新商品の販売だと?」
「ええ。必ずや大繁盛をお約束しましょう」
「大体そういう事を言う人は損をさせて来るけど、新商品にそれを覆すだけの価値があるというの?」
ドワイトとアンジェラは俺の言う新商品に懐疑的である。
しかし、その考えは甘いという事を教えてやろう。
「俺が今回お勧めする商品はこちら、真冬ちゃん特製製麺だ!!」
「はぁ?」
「今やこの街での真冬ちゃんの人気は鰻登りだ。この人気に乗じて真冬ちゃんが自ら作製した麺を真冬ちゃんのサイン入りで販売する。するとどうだ? 真冬ちゃんのファン達が挙ってこの麺を買いに来るだろう。また、真冬ちゃん一人では作れる麺の量も少なく、その麺は希少である。つまりそれだけ高値で販売しても喰いつく奴がいるという事だ。実際に俺が真冬ライブの傍らで真冬麺を販売していたら飛ぶように売れた。この商品を貴方達の商会に卸そうと言うんだ。どうだ、売れるとは思わないか?」




