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お兄ちゃんの偉大さを思い知るといい


 エルードの街で一体何が起きようとしているんだ?

 俺は故郷に戻って来てからの事態に困惑していた。

 賢者の奴がエルードの魔王軍の幹部が来ていると聞き、故郷に何かあったら一大事だと思い慌てて戻ってきたら、領主の家が強襲され次女(ナタリア様)が誘拐されていた。

 そして昨日はこの街の教会に何者かが押し入ったらしい。

 俺の実家はこの街では有数の商家だ。

 なので、最近の事件の情報は事細かに入ってくる。

 だからこそ、その事件の異質さと多さに衝撃を受けていたのだ。


「アンジェラ、この街に一体何が起きているんだ?」


 俺は自分のベッドに腰掛け、壁際で立っていたアンジェラに問いかけた。

 勇者達がこの街に来てから、この街の日常が壊れていっている気がしてならない。

 真綿で首を絞められている様な、じわじわと俺を追い詰めようとしている不気味な何かを感じる。


「ドワイト落ち着いて。確かにこの街は昔と色々と違ってきているわ」

「それにしたって、なんなんだよ!! 真冬ファンクラブって、頭おかしいだろ!! なんでこんな幼女の人形までうちの商会は取り扱い始めてるんだよ!!」


 商会に出入りしている業者が言うには、少し前からラーメンとか言う食べ物を歌って踊る幼女が配っているらしく、その愛らしい姿に街中の人間が魅了されているらしい。

 そして、これは金になると思った造形士がその幼女が一番可愛らしいポーズを取ったシーンを人形化したとの事である。

 なんでその事業をうちの商会は引き受けてるんだよ……。

 頭おかしいだろ。


「でも、ドワイト見て。この人形、ちゃんと下着まで作りこまれてるわよ」


 アンジェラは試供品の人形のスカートの中を下から覗き込んでいた。

 ……お前まで何やってるんだ。

 正気に戻ってくれ。

 確かにその人形のスカートの中には見事なカボチャパンツがあった。

 くそ、こっちまで頭がおかしくなってきそうだ。


「ドワイト様、よろしいでしょうか?」


 そんなこんなで俺が頭を抱えていると、部屋のドアがノックされた。

 この声は家の使用人だ。


「一体何の用だ?」

「リジーがお客様を連れて帰って来ております」

「客だと?」

「はい。なんでも勇者様のお兄様との事ですが、お会いになりますか?」


 勇者の兄だと?


「どう思う?」

「確かに勇者の兄がいきなり来るのはおかしいと思うわ。それに何でそんな人物をリジーが連れて来たのか見当もつかない」


 その突然の人物の登場に動揺してしまった。


「追い返しますか?」


 俺達の態度を見て使用人がそんな提案をしてくる。


「いや、会おう。あの勇者の兄がどんな奴なのか俺も興味がある」

「……ドワイト、大丈夫なの?」

「俺は王国一の賢者だぞ。恐れるものなど何もない」


 そうだ。

 あのよく分からないキチガイ女達を相手にしていたせいで忘れていたが、俺は王国で最も偉大な賢者の一人と呼ばれているんだ。

 いくらあの勇者の兄と言えども恐れることなど何もないんだ。



 そして、その兄がいるという客間へ近づくとそこからは何とも言えない香ばしい匂いが漂ってきた。

 何だ、この匂いは? 


「待たせた――な?」


 扉を開けると、そこにはカップに入ったヌードルを食べている男が座っていた。

 こいつは一体何を考えているんだ?

 人の家に来て何故こいつは食べ物を食べているんだ?

 ……意味が分からない。


「貴方がドワイトさんですか?」


 その男はカップに箸を置くと立ち上がり俺に挨拶をした。

 その一連の流れには常識的な何かを感じたが、その前の非常識な行動がこの男があの勇者の兄であることを証明している様な気がした。


「そうだが、お前は?」

「チハルとチフユの兄です。こちら粗品ですが」


 俺の予想通りの答えを返してきた男は、紙で出来た箱を手土産として渡してきた。

 紙で出来たとは言えどもその箱は非常に頑丈な物であり、その箱には異界の文字が書かれていた。


「これは?」

「カップラーメンです」

「カップラーメン?」

「はい、即席麺とも言います。ちなみに私が今食べているのも、そのカップラーメンの一種です」


 この男は何を言っているんだ?


「その様子だとドワイトさんは即席麺をご存知ない様ですね。即席麺とは、蓋を開け熱湯を注ぐと三分で食べる事が出来るラーメンです」

「いや、俺が聞きたいのはそう言う事ではないのだが……」

「ちなみにその箱の中に12食分入っています。後でご賞味ください。」

「分かった、後で頂こう。それで、何の用でここに来たんだ?」


 先程からこの男の出方が全く掴めなかった。

 俺に用があるという割には、客室で堂々とカップラーメンとやらを食べる神経もそうだし、先程からの立振る舞いを見るに戦闘経験に長けた人物と言う訳でもなさそうである。

 そんな人間が一人でここに来るとは、一体何を考えているのか。


「麺が伸びるので先にラーメンを食べさせて貰っても良いですか?」

「……ああ、分かった」


 いや、本当にこいつは何を考えているんだ?

 頭おかしいんじゃないか?


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