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裏方のお仕事


 チハルとチナツにチフユ達に救出は任せて、俺達は後方支援に回ることになった。

 具体的には変態には衛兵達の攪乱を、ナタリアには真冬ちゃんの面倒を頼んだのだ。

 そして俺は剣聖であるリジーを連れてドワイトとやらに会いに行く事にした。


 適材適所と言う奴だ。

 チナツとチハルは衛兵達を圧倒できるくらいに強い。

 余程の相手が出て来ないとあの二人が負ける事はないだろう。

 それに救出される側のチフユとチアキを相手に最も連携が取りやすいと言うのもある。

 長年一緒に生きて来ただけあって、阿吽の呼吸が出来ている筈だ。

 相手の考えを読み切った上で、互いに相手を出し抜こうとする様を見れば、オルフェ公爵達もチハル達のヤバさに気付いて尻込みする事だろう。

 普通は助けに来た人間が処刑人に変わって処刑を続行するとは思わない。

 だが、チハルはそれをやる。

 そしてチアキがそれを煽り、チナツが必死に止める。

 そんな様が目に浮かぶ様だ。

 チフユは諦めた様な目で三人を上手い事導いてくれるだろう。


 変態も確かに強いが、あいつはチハル達と違って分身出来るし影の中に入ったり壁抜けだって出来るのだ。

 あいつ程、隠密行動に向いた変態はいない。

 衛兵への攪乱役として奴ほど相応しい奴もいないだろう。

 うどんとそばにも変態のフォローをして欲しかったが、あの二匹は何時の間にか居なくなっていた。

 肝心な時にいないとは不便な奴等だとも思ったが、チフユに従順な二匹が何も言わずに行方不明になるとは思えない。

 多分、誰にもバレない様にチフユの護衛でもしているのだろう。

 むしろ、そうでもなかったらきつねうどんにしてやる。 


 ナタリアと真冬ちゃんは言うまでもなく、下手に怪我をされると困るからだ。

 ナタリアはこの後のオルフェ公爵家背負って立つ女性だし、真冬ちゃんは魔力暴走してこの街を塵芥と帰されたら困る。

 それに、ナタリアについては忘れかけているが、オルフェ公爵達への人質の意味もあるのだ。

 あまり自由に動かしてオルフェ公爵に取り返されたら元も子もない。

 最悪の場合、ナタリアとチフユ達を交換する様な手段にもなる。

 まぁ、あんまりそんな手段を取るような状況にはしたくないが……。

 真冬ちゃんについては単純に血生臭い現場に慣れさせたくないのもあった。

 今ぐらいの時期位は悩みもなく、暢気にのほほんと生きていてもらいたいのだ。

 どうせ、大きくなったら色々と厄介事を抱え込んで大変になるんだし。

 真冬ちゃんも最初は渋っていたが、チナツ達と説得すると教会で待っててくれると言ってくれた。

 まぁいくらナタリアがいるとは言え、見知らぬ大人達と留守番してくれと言われて嫌がる子供はいないので仕方がない。



 そして、俺はドワイトと言う冒険者に会いに行くことになった。

 変態やチナツの話によると、今回の件でドワイトが公爵家側につくと多少面倒な事になるとの事だった。

 一応ドワイト達はSランク冒険者の一員という事だし、パーティ戦でもやられたら手間になるかららしい。

 そこで足止めと上手くいけば味方になってくれれば良いなという事で、ドワイトの説得に俺が当たる事になったのだ。

 敵にならなければ適当で良いとは言われたが、どうしたもんかな。


「貴方、ドワイトを口先一つでどうにかできると思ってるの?」


 この剣聖はドワイトの所に向かう道中暇だったのか何回か声を掛けて来た。


「正直な話分からん。俺はドワイトとやらに会ったことがないしな」

「そんなんで、ドワイトが説得できるわけ?」

「まぁ、どうにかするしかないだろ」


 俺的には、ここまでこのリジーが協力的な事の方が不気味なんだが。

 何時の間にか俺の懐に入っていたチアキの書置きによると、リジー達はチアキの手によって【洗脳】されているらしい。

 その為、チアキは元より何故か俺の命令にも従うとの事だった。

 文面の最後に『何でも言う事聞かせられるからって、エロい事に使っちゃダメなんだよっ』とか入っていたが、チフユ一筋を自称する身としてはそんな気は更々ない。

 まぁ、何かの機会にそれが必要になってしまったのであれば、やぶさかではないがな。

 そんな訳でリジーは俺を裏切ることはないらしいのだが、こいつドワイトへの【奴隷紋】も入ってるらしいんだよな。

 【奴隷紋】は主人へ不利益な行動を取ることを出来なくさせるという効果も持つという。

 こういう場合、【洗脳】の力で主人を裏切る様な行動を取らせようとした時、【奴隷紋】は作用するんだろうか?

 そんな一抹の不安が俺にはあった。

 その為、ドワイトも最悪チアキの【洗脳】でどうにかなると思っている訳ではあるが、それをリジーに漏らす気にはならなかったのである。


「それにしても、あんなキチガイ達と兄妹関係続けられるなんて貴方も凄いね。わたしだったら1年も耐えられないわ」

「まぁ、俺はお兄ちゃんだからな。長年の付き合いで慣れた所もあるし、あいつ等だってちゃんと向き合えば、しっかりとこっちの事を考えてくれるんだぞ」

「でも、全然そんな風には見えないわ」


 それにしても、こいつ、他人との距離感が結構近いタイプの人間だな。

 こうやって、男に距離感を勘違いさせてトラブルを引き起こすタイプだ。

 チナツが尻軽女とか言ってたのも何となくわかる。

 単純にチナツの嫌いなタイプだろうし。


「そう言えば貴方の兄妹の中で、チフユって人だけ見た事ないんだけどどんな人なの?」

「別にチアキとチフユは俺の妹って訳じゃないんだけどな……。まぁ良いや、チフユはあの4人の中だと一番苦労してるけど、常識的な奴だな」

「ふーん、良い娘なんだ?」

「まぁ、そうだな。他の三人が色々とぶっ飛んでるから、自分の個性とかに結構悩んでたみたいだけど、それでもチハル達を嫌わないで仲良くしてくれたり、出来た人間だよ」

「成程ね。んっ、着いたみたいね。あそこがドワイトの実家で今わたし達が拠点にしている場所――ドワイト商会よ」


 そんな話をしていたら、何時の間にかドワイト達の拠点についたらしい。

 まぁここからが本番だな。

 俺は気合を入れ直して、ドワイト商会の扉を開いたのであった。


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