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処刑前日


「チフユ達が処刑されるってどういう事だよ!!」

「落ち着け、少年!!」


 教会を襲撃した翌朝、変態が奇妙な事を言い始めた。

 なんでチフユ達が処刑されないといけないんだ!?


「そうは言ってもオルフェ公爵家はチアキが抑えてたんでしょ? 余程の事がないと処刑なんてことにはならないと思うんだけど?」


 俺よりは若干冷静さを保っていたチナツが変態に疑問をぶつける。

 チナツのいう通り、オルフェ公爵家はチアキが【洗脳】を駆使してチアキの支配下に置かれていた筈だ。

 だから、俺も教会を攻めようと思ったんだ。

 それなのに何で……?


「なんでも王都から長男、長女が戻って来た様だ」

「長男長女ってイワンとサーシャの事?」

「ああ。長女は寝取り聖女が指導していたから顔見知りなのだろう」

「ええ、そうだけど」


 チナツは手を顎に当てて考え込む。


「……多分だけど、サーシャはそこそこに回復系の魔法が得意だったわ。サーシャが戻ってきたことで、オルフェ公爵家が【洗脳】されている事がバレて、そこから処刑って流れになったんじゃないかしら」

「ふむ、なるほどな。確かに私の下調べともその話は一致する。その可能性は高いだろう」


 つまり、帰って来たサーシャとやらがオルフェ公爵達が【洗脳】されていることに気付き、【洗脳】を解いたって事か。


「それで、どうするんだよ? そんなことが分かったってチフユ達の処刑がどうにかなる訳ないだろ」


 原因が分かった所で、チフユ達が助かる訳ではない。


「……まぁ、ここは在り来たりだが処刑前に二人を助けに行くしかないだろうな」

「でも、向こうだってあたし達がそう動くの位分かってるでしょ。二人への警備だってかなりガチガチになってるんじゃないの?」

「それは否定できんな。ここに来る前に拘置所を簡単に調査してみたが、警備にかなりの人数を割いている様だった」


 目元しか見えないが変態は苦々しげに答える。


「それじゃあどうするんだよ?」

「ここはやはり処刑場を強襲して、二人を解放するのが一番無難だろうな」


 変態がいうには処刑のタイミングであれば、衛兵がカバーしなければならない場所が拘置所だけから街全体に広がるため、敵の防御が薄くなるという事だった。


「それまで二人が無事な保障はあるのか?」

「まぁ、あの二人はあたし達に対する人質でもある訳だし、普通は危害を加えられないと思うわ」

「でもここの公爵達は変態だぞ。命は無事でも、貞操的な意味で無事が保障されるとは思えない」

「だからと言って、ここであたし達が無理攻めして捕まったら元も子もないのよ。悔しいけど、あの二人を信用するしかないわ」


 チナツも口調は落ち着いているが右手を強く握りしめて、悔しそうにしていた。

 くそ!!

 ……俺はこう言う時本当に無力だ。


 確かにチナツの言う通り、無理に拘置所に行って捕まったら全員が処刑されることになってしまうのだ。

 助けられる確率を上げるためにも、ここは我慢するしかないというのは分かる。

 それでも、何とかしたいと思うのは俺の我儘なのだろうか。


「まぁ、お兄ちゃんが不安なのも分かるけど捕まってるのは、チフユお姉ちゃんとチアキだよ。あの二人が危害が加えられそうなのに只で捕まってる訳ないじゃん」


 そんな俺に今まで黙っていたチハルが声を掛けて来た。

 チハルの発言には全く根拠はない。

 チハルも自分の発言に根拠がないのは分かっているのだろう。

 しかし、妙に自信ありげに発言するチハルの言葉には何とも言えない力があった。


「……チハル」


 確かにチハルの言う通りだ。

 今はここでくよくよしていても意味がない。

 取り敢えず、今は二人を信じて救出のために色々と準備するしかないのだ。


「よし、取り敢えず確実に二人を助けるために作戦を練るぞ」


 俺は気を取り直して、チナツ達に声を掛ける。


「……そうよね。そうなると相手方の戦力の把握からか。イワンも戻ってきてるんでしょ。そいつについても情報が必要になるわね」

「イワンについては、私も情報を仕入れている」


 チナツと変態も俺の言葉に従い、色々と意見を出してくれた。


 チフユ、チアキ待っていてくれ。

 確実に助けて見せる。


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