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教会襲撃戦 その6


 しかし前から思っていたが、この糞虫は恐怖の大王(チナツ)に一人で挑もうとは良い根性をしているものである。

 少なくとも、わたしはチナツに一人で挑もうとはもう思わない。

 チナツがお兄ちゃんの義妹になってから、何度となく追い出そうと挑んでみたが、わたしは全戦全敗している。

 聖女の癖に勇者よりも力とか体力とかの筋力的なステータスが高いとか頭おかしいと思う。

 もっと色々と自重して欲しいものだ。


「おい、リジーとやら。チナツ様は我等アイリス清教にとって大切なお方。そんな方に狼藉を働こうなどと許せるものではないぞ!!」


 僧兵達がチナツを守るかの様に、糞虫とわたし達の間に入ってくる。


「さっきまで、チナツの存在に気が付かなかったとは思えない位の身代わりの速さだね」

「……あんまりそう言うこと言わないであげてよ」


 その僧兵達の対応に嫌味をぼやくと、チナツがそんなフォローをしてきた。

 身内だからって甘いものである。

 僧兵は僧兵でわたしのぼやきが聞こえたのか冷汗を垂らしていた。


「あんた達如きがわたしの行く手を阻めると本気で思ってる訳?」


 糞虫はそんな僧兵達の動きを見て、腰に下げた剣を抜く。

 僧兵達もその動きを見て、それぞれが手に持った武器を構えるが、今までの戦闘の疲れが出ているのか隙が見えた。

 まぁあの糞虫はなんだかんだで結構な強さがあるし、疲労状態の僧兵では相手にはならないだろう。

 さて、ここでわたしとしてはどう動くのが正解だろうか。


「チナツ、何か良い意見ある?」

「取り敢えずリジーと僧兵達を戦わせて、僧兵達が勝てば説得して終わり、リジーが勝てば疲労したリジーをあたし達が倒して終わりで良いと思うんだけど」


 確かにチナツの意見は現実的な意見である。

 僧兵がこのままわたし達に従うとは限らないし、糞虫と僧兵で戦力を削りあって貰うのは、漁夫の利的にも無難であろう。


 でも、なんか違うんだよね。

 こう盛り上がりに欠けると言うか。


「よし、決めた。わたしは糞虫に協力して僧兵の足止めをすることにするよ」

「はぁ!? あんた、何考えてるのよ!!」

「だって糞虫一人で僧兵を突破するのは大変だと思うんだよね。だから、ここでわたしが僧兵の足止めをしてあげれば平等な感じになるんじゃないかなと」

「あたし達にとって今リジーは敵なのよ。なんでそんな奴に味方するような事になるのよ!!」

「チナツにとっては敵かもしれないけど、わたしにとっては敵じゃないし」


 そうあの糞虫はチナツに恨みを持っているのであって、わたしに恨みを持っている訳ではない。

 わたしが僧兵を足止めすれば、糞虫は喜んでチナツに襲い掛かるだろう。

 まぁ糞虫がチナツに勝てるとは思えないが、チナツを良い具合に削ってくれれば、チナツを誅するいい機会が得られるだろう。

 万が一、糞虫がチナツを倒したとしても糞虫を弑すれば、ここで何があったかなんて誰にも分らなくなるのだ。

 死人に口はないのである。

 わたしにとっては、不都合がなく名案なのだ。


「大丈夫、お兄ちゃんにはチナツは勇敢に戦ったって伝えておくから」

「全然安心できる要素がないわよ!! それにここであんたが裏切ったら、にぃにがなんて思うか分かってるの?」


 チナツは何を言っているんだろう。


「わたしの仕事は、司教の増援を防ぐためにここで僧兵を防ぐことだよ。別にチナツの身を守る事でも僧兵と協力して殺虫することでもないんだよ」


 つまり、わたしはお兄ちゃんの作戦通りちゃんと動いているのであって、誰も裏切ってないのである。

 チアキじゃないんだから、勝手に裏切り者扱いしないで欲しい。


「はぁ、もう良いわ。あんたはもう一回お仕置きしないといけないみたいね」

「えっ?」

「リジーをどうにかする前にあんたを先に磔刑に処してやるって言ってるのよ!!」


 その言葉と共に、チナツはわたしの手の中から逃げ出し、わたしに鞭を向けた。

 解せぬ。

 ……なんでこんな展開になるんだろう?


「ちょっとチナツ落ち着いてよ。わたしと戦う前に、あっちの糞虫と戦う方が先じゃないの?」

「いいや、あんたが先よ」


 ……これはマズい。

 チナツが完全にキレてる。


「糞虫!! わたしが僧兵を止めるから、チナツを任せた!!」


 ここは取り敢えず糞虫にチナツを押し付けよう。

 わたしは僧兵の処理をしつつ、適当なタイミングで逃走を図ればいいのだ。

 多分、あの状態のチナツだと削るとかそう言う問題以前に糞虫がやられるだろう。

 こうなってしまったら、逃げの一手以外の手はない。


「はぁ!! 誰が糞虫よ!!」


 糞虫の返事を無視して、わたしは後ろから僧兵に襲い掛かる。


「貴様はチナツ様の仲間ではないのか!?」


 わたしの動きに僧兵達が動揺し、その動揺をついて糞虫がチナツに襲い掛かった。

 よし、予想通りの良い展開だ!!


「……あんた、チハルの処刑の邪魔だから、退きなさい!!」

「そう言われて退く馬鹿がいる訳ないでしょ!!」


 チナツはそれでもわたしに向かって来ようとするが、糞虫が上手い事妨害してくれる。

 しかし、チナツの方が武器のリーチが長いし、チナツはチアキ程ではないにしても攻撃魔法も使えるのだ。

 糞虫は多分、数分と持たずに地に伏すことになるだろう。

 わたしはその間に、チナツの援護に向かえない程度に僧兵達を痛めつけた後、逃走しないといけない。

 なので、急いで効率的に僧兵達を処理していく。


「くっ!!」


 チナツの苛烈な攻撃に耐えられず、糞虫がどんどん後退していっている。

 これはマズい。

 このままではわたしがチナツに処理されてしまう。

 なんて役に立たない糞虫だ。

 あんなタイミングで出て来なければ、こんな事にはならなかったのに……。

 残りの僧兵の数と糞虫の耐久力を考えて、万事休すかと思った所で、司教室の扉が開いた。


 ――――バンッ!!


「チハル、無事か!!」


 そこに、神の御言葉が届いた。

 そう、開かれた司教室から出て来たのは我らがお兄ちゃんである。

 ここでお兄ちゃんが来たのであれば、わたしがやる事は一つだけだ。


「死ねぇーーーーーー!!」


 糞虫に向かって聖剣を投げる事である。


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