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チナツは鬼畜


「それでチフユは何でこんな所にいる訳?」


 あたしとチアキはチフユに面会するために何故か拘置所にいた。


「カッとなってやった。今は反省している」


 そんなよくある犯罪者のコメントを言いながら項垂れているチフユを見ていると、何とも言えない気持ちになってくる。


「はぁ……、本当に何やってるのよ……?」

「その点については私もそう思っている。次に塀の中に入るのは、兄さんかチナツだと思っていたのに……」

「あいつは兎も角、何であたしまで塀の中に入れようとしてるのよ……」

「私よりもチアキ達への傷害罪で捕まる方が先だと思ってた」


 失礼な奴である。

 アレはチアキ達が脱法行為をしているのがいけないのだ。


「確かにチフユさんの言う通りだねっ。うちもチフユさんよりもチナツが先に捕まると思ってたよ」

「チアキまで何を言ってるのよ……」


 チアキまでチフユの意見に同意をし始める。

 納得がいかない。


「日頃のチナツの行動を考えれば当然の事じゃないかなっ」

「あたしは常日頃から品行方正な行動を心掛けてるんだけど?」


 あたしのその言葉に二人は溜息をつく。

 何言ってるんだこいつはと言わんばかりの空気だ。


「な、なによ……」

「チナツ、品行方正な人はむやみやたらと人を縛らない」

「で、でもそれは縛られる側にも責任がある訳で――「それでも人を縛るなんて発想にはならない」


 あたしの言い訳に被せてまで、チフユが否定してくる。

 面会の立会をしている衛兵の人もチフユの意見に賛同するかの如く頷いていた。

 えっ、あたしがおかしいの?


「でも……、にぃにもそれで怒ったことないし……」

「それは兄さんが諦めてるだけ。内心ではあんまり人を縛るのはどうかと思ってる」

「……えっ、…………うそ……?」


 ……そんなの嘘よ。

 あいつはあたしが悪い事をしたときはちゃんと怒ってくれた。

 あいつだけはあたしを見捨てないでくれたのに……。


「まぁチナツの事は置いておいて、チフユさんは何で拘置所なんかにいるのかなっ?」

「チアキ達こそ、ここに来たって事は真冬と合流出来たの?」

「真冬からチフユさんが襲われるって聞いたから、取り乱す兄様をチハルに任せてうち達も慌てて来たんだよっ」

「そう。それなら真冬は無事なのね……」

「今頃はチハルと一緒に兄様に跳び付いてるんじゃないかなっ」


 落ち込んでいるあたしを見捨ててチアキ達が会話を進めていた。


「ねぇ、もう少しあたしに構っても良いと思うんだけど」

「兄様がチナツを見捨てるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ない事を心配しているチナツに構っている暇はないんだよっ」

「本当にそう思う?」

「チナツもこういう時だけしつこいよねっ……」


 そうは言っても、にぃにはあたしにとって一番大切な人だ。

 にぃにに捨てられたら、あたしは何のために生きていけばいいのか分からなくなってしまう。


「大丈夫、チナツ。兄さんは私と同じ位にチナツの事も大切に思っている」

「本当に?」

「チナツもいい加減にして欲しんだよっ。チフユさんとの面会も時間制限があるんだよ。そんな分り切ったことに時間を掛けさせないで欲しいなっ」


 そうだ、確かにチフユとの面会には制限がある。

 色々と聞かないといけない事もあるのだ。

 チアキの叱咤を心に受け止めつつ、チフユと改めて向き合う。


「それで、あんたは何で捕まってるの?」


 そうして脱線しまくった話を元に戻したのだ。


「……最近、真冬のライブ活動とか兄さんの屋台活動とかでのんびりしていたせいで、指名手配をされているのを忘れていた」

「はぁ?」


 恥ずかし気にチフユがそう説明する。


「一応最初から説明すると、チハルが聖剣投擲をした気配を感じた所から始まる」



 チフユの説明はこうだ。

 真冬と公園で遊んでいたところ、チハルが聖剣を投擲した魔力を感じた。

 あいつとチハルが心配になったチフユは隠れ家に戻ったが、そこにはボロボロになった隠れ家とチアキとチハルの喧嘩の跡と思われるクレーターしかなかった。

 そんな訳で引き続きあいつ達を探そうと思ったところ、チハルの知り合いらしい魔導士風の男と女騎士に絡まれて戦闘になった。

 何とか真冬を逃がすことには成功したものの、クレーターとかの後片付けをしていた衛兵の存在を忘れており、指名手配犯である事を気付かれて衛兵に捕まってしまったとの事である。


「チハルの聖剣投擲の魔力はあたしも感じたわ。それで、チアキの処刑道具の選定を途中で止めたんだもの」

「……チナツは何をやっているのかなっ?」

「でも、チハルが聖剣を投げたって事はあいつ達に何かあったって事?」

「それについてはうちから説明するよっ。あの聖剣はうちに投げられたものなんだっ」


 そこでチアキが口を挟んでくる。


「……あんたこそ何やらかしたのよ?」

「ちょっとチハルと色々あったんだよっ……、うちが【洗脳】したとかされたとかで……」

「はぁ、それで【洗脳】がどうこう話していたのね」


 色々が気になるが、ここで話さないという事は話す気はないのだろう。

 本当に何をやっているんだか。


「チアキとチハルの喧嘩によるものだったって事は、兄さんとチハルに怪我はないの?」

「大丈夫だよっ。むしろ、うちの方が腕とか足首とかに縄の跡がついて大変な位だよっ」


 チフユはチアキの言葉を聞いてホッとした表情をしていた。

 あたしは見ていないからアレだが、チアキ達の喧嘩跡という事はそこそこに荒れていたのだろう。

 だから、そこで戦っていた二人の心配をしていても不思議ではない。

 本当にチフユは魔王に相応しくない位、優しい人だ。

 なんで、チフユに魔王なんかの魂が転生してしまったのだろうか。

 結婚相手がにぃにじゃなかったら喜んで祝福して、結婚生活を手伝っても良い位の人なのに……。


「それでチアキの縄の後はいつものアレ?」

「そうなんだよ。チナツの奴、うちを見掛けた瞬間問答無用で縛り付けて来たんだよっ。本当にチナツは鬼畜聖人だよっ」

「何言ってるのよ!! アレはあんたが先にあたしをからかってきたのがいけないんじゃない」

「まぁ、でも皆無事で良かった」

「うちは無事じゃないんだよっ!!」

「あんたのは自業自得でしょ!!」


 チフユはそんなあたし達の様子を見てにこやかに笑っていた。


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