チアキマネー
「それでお前はこの後どうするつもりなんだよ?」
チアキを磔刑から解放した後、チアキの考えを聞くことにする。
何だかんだで、こいつは俺達の中で一番頭が良い。
そういう意味でも、チアキの意見は非常に重要なのだ。
「取り敢えず、公爵家には戻るよっ。ロクサスを【洗脳】して、うちの支配下に置いたとは言ってもその内バレるしね。将来的なことまで考えれば、うちにとって都合の良い人間をトップに挿げ替えるのが一番いいんじゃないかなっ」
『うちにとって』とか、絶対にチナツ達を入れようとしない姿勢は流石としか言いようがないだろう。
たまには、チフユとかチナツを見習って皆の為に何かをして欲しいものである。
とは言うもののチアキのいう事にも一理ある。
言われるまで、ロクサス公爵を【洗脳】したんだから、全部解決じゃんと思っていた。
確かに、今のままだと公爵が王都に行った際に【洗脳】バレするのは明白である。
何だかんだで【洗脳】を見分けられる人間は王都には大勢いるのだ。
当然バレれば、誰が【洗脳】を掛けたのかと言う話になり、直近でトラブルになったこの魔王軍騒動の可能性が高いとみられるだろう。
そうすると、最近この街でトラブルを起こしまくっている俺達に嫌疑の目が向けられる訳で、捕まって拷問に掛けられた上で死罪になる事だろう。
それこそチナツのお仕置きの磔刑とは違う、ガチの磔刑に処せられる事になるのだ。
「つまり、どういう事よ?」
チナツのいう通り大切なのは、そこまで分かっている中でどう動くかだ。
さっきのチアキの回答からその情報は読み取れない。
「つまり、オルフェ公爵家をぶっ潰してここに兄様を専制君主とした新しい国家を立てれば良いんだよっ!!」
何言ってんだ、こいつ……。
「チアキの癖にいい考えを出してくるじゃん」
チハルもそれは名案だとかいう表情をしないで欲しい。
「そんな事して独立しても、すぐに他の国に滅ぼされるだけだと思うんだけど?」
流石チナツだ。
もっと言ってやれ。
「チナツはもっとうち達の力をよく考えた方が良いよ」
「はぁ?」
「うちにはお金がある。そう、世界中の国家予算の1/4にも及ぶお金がねっ。そしてどの国家もうちの財布から借金をしているんだよっ。つまり、どの国もうちの財布には敵わないって事なんだっ」
「何やってるのよ、あんたは……」
「こんな事もあろうかと、周りの国がお金に困っている時に高金利でお金を貸してあげたんだよっ。そうすると、その国は借金が返せなくなって更にうちからお金を借りてを繰り返すことになって、うちのお金が浸透していくんだよ。そうして借金塗れにさせた国にインフラを借金返済までの間差し押さえてやれば、そのインフラからお金も取れるし、金を貸した国の首根っこも掴めるしで非常に画期的な方法なんだよっ」
チアキはそう自分の手管をドヤ顔で説明する。
完全にヤバい裏組織の人の考えである。
「今の状況なら、オルフェ公爵家位の領地だったら簡単に独立させられるんじゃないかなっ」
「それって逆に考えれば、チアキを殺せば借金帳消しになるから、そう言った我儘をやれば確実に潰されるパターンなんじゃないの?」
そこに、チハルの冷静なツッコミが入った。
確かに今までは特段大きなことをしていなかったから、殺される様な憂き目に遭っていなかったんだろうが、独立なんてやらかしたら、絶対に周りの国はこれ幸いとチアキを殺すために攻め込んでくるだろう。
流石にチアキであっても周りの全てと敵対して勝てる程強くはない。
戦争は数なんだよ……、チアキ。
「うちの読み的には、そこまでしないと思うんだけどなっ」
「ちなみに周りの国にどれくらい金貸してるんだよ?」
チアキの出した金額は天文学的な数字だった。
これはチハルのいう通り殺されるパターンだ。
むしろ、こんだけ金持ってて世界ランク2位って、1位の奴はどれくらい金持ってるんだ?
「よし、その案は却下だ。なんか後々の事を考えると非常に面倒な気持ちにしかならない」
なんにしても、その独立案は却下である。
俺は何だかんだで生まれ育った村が好きだし、旅行でちょっと離れても良いとは思っているが、出来る限りあの村で過ごしたい。
俺の製麺所もある事だしな。
それにチアキが不幸になるのも好ましい話ではない。
チアキは倫理観は欠けているし、自分の事を第一に動くとんでもないロクでなしだが、それでも他人を必要以上には不幸にしない様に生きているのだ。
それに他人様に迷惑を掛ける案件は俺絡みである事も多いしな……。
そんなチアキだからこそ、人並み以上とは言わないまでも、人並みの幸せ位は掴んで欲しいのである。
「むぅ。まぁ、兄様に心配して貰えるのは嬉しい事だから良いかなっ」
チアキは俺の判断に不満そうではあったが納得はした様だ。
「うちの案が駄目なのは良いけど、それなら兄様達の考えを聞かせてよっ」
こうしてチアキに俺達の作戦を飲ませる為の交渉が始まったのである。




