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【鑑定】スキルはお兄ちゃんの為だけに


 取り敢えず、話が進まないのでチハル達のいう加護の件は横に置いておく。

 ついでにチハルのいうチアキの罪についても置いておこう。

 そんな俺の判断にチハルが不満気な顔をしているが、今回は無視させてもらった。


「何にしても、お前は今【洗脳】されてないって事で良いんだよな?」


 その点は凄く大事な事である。

 チアキは何だかんだで天才である。

 その頭の回転速度、発想力は他の随を許さないレベルだ。

 もしかしたら【洗脳】されているにも関わらず、【洗脳】されていないと主張をし、俺達を自然に騙してくる可能性だってあるのだ。

 むしろその可能性が高いとも言える。

 それ位チアキは小賢しい手段が好きなのだ。


「当り前だよっ。と言っても、兄様には信じて貰えそうにないねっ。どうすれば良いかな?」


 チアキは俺に信じて貰えないのは心外だと言わんばかりの顔をしていたが、あの顔は内心では絶対に違う事を考えている顔である。

 長年、チアキと付き合ってきた俺には分かる。


「そんなのは決まってるだろ。【洗脳】状態にあるかどうか分かる奴の前に連れて行けばいい。つまりはチナ――「それは絶対に嫌だよっ!!」


 チアキは俺の発言に被せてまで否定してくる。


「それは何でだ?」

「この街に入る時に色々とチナツとあったんだっ。だから、チナツに会ったら磔刑に処されちゃんうんだよ……」


 遠い目をしてそんな説明をされた。

 それにしても、磔刑か。

 確かにチナツには磔刑をしている前科があるからな。

 あいつなら絶対にやるだろう。


「そんなにチナツに会いたくないのか?」

「なしよりのなしだねっ。兄様だってチナツとうちの相性が良くないのは知ってるでしょ?」

「お前らもう少し仲良くしろよ……」

「うち的には仲良くしてるつもりなんだよっ。それなのにチナツがうちに怒ってくるのがいけないんだよ」


 それはお前がチナツ的にアウトな事をしまくっているのが原因では?


「はぁ、仕方がない。チナツじゃなければ、【洗脳】されてるかどうか鑑定されても良いんだよな?」

「それは仕方がないよねっ。チナツ以外なら別に構わないよっ」

「それなら、チハル。チアキに【鑑定】のスキルを使ってやってくれ」


 そう、チハルは【鑑定】のスキル持ちである。

 いつもは俺へのストーカー行為の為だけに使われているが、こいつのスキルを使えば相手の状態などマルっとお見通しなのである。


「嫌だよ」


 そんな名案をチハルは一瞬で切って捨てやがった……。


「何でだよ?」

「わたしのスキルはお兄ちゃんの為にあるんだよ。お兄ちゃん以外の人に使うなんてあり得ないね」


 俺の為にあるんなら、俺の目的の為に使ってくれよ……。


「それに、わたしが【鑑定】のスキルに目覚めて15年。ずっとお兄ちゃんに使い続けて来た長時間【鑑定】使用記録が途絶えちゃうじゃん」

「……何その記録?」


 というか1歳の時から使ってるのかよ……。


「記録を出すと、この世界で一番を決める本に掲載されるんだよ。ほら、わたしの記録が歴代1位更新中で載ってるんだ」


 そう言ってチハルは懐から『世界ランキング、あんたが1位だ』なる謎な本を取り出し、該当ページを見せてくれた。

 さっきのパンジャンドラムと言い、こいつ何処からこの手の物を取り出してるんだ?

 ちなみに、その本にはチハル・グレイシアの名前と鑑定スキルの被使用対象という事で、俺の名前が載っていた。

 チハルのコメントも同時掲載されている。

『この記録はわたしのお兄ちゃんへの愛を示しています。お兄ちゃんかわたしのどちらかが死ぬまで、この記録が途絶えることはないでしょう』

 との事だった。

 ちょっと頭のオカシサを感じる。


「ちなみに、この本にはうちも載ってるんだよ」


 何故かチアキも便乗してきた。

 そしてチアキが示したページに載っているのは『世界億万長者ランキング第2位』の記録である。


「えっ、どういう事?」

「うちが今までに研究した成果で手に入れた版権料でボロ稼ぎしてたら、何時の間にかランキングに載ってたんだっ」

「そんなに金稼いでたの? そこまで羽振り良さそうには見えなかったんだけど」

「兄様にお金は必要な時に使うために貯めておけって言われてたからねっ。おかげで今では大体の事はお金で解決できるようになったんだよっ」


 そういうつもりで言ったんではないんだが……。

 と言うか話が脱線しすぎだ。


「取り敢えず、チハルはチアキに【鑑定】を使う気はないって事で良いんだな?」

「当り前じゃん」


 チハルは自慢気に断言した。

 確かに、こんな不名誉な記録を持っていれば、理由は兎も角更新したくなるのは分かる。


「とするとどうしよう?」


 もしかするとチアキはここまで読んできたのか?


「お兄ちゃん、やっぱりチアキはここで殺すべきだよ。後顧の憂いを絶った方が世のためになるよ」


 流石にそれはやり過ぎだろ。


「それによく考えてみてよ。チアキが【洗脳】されてるって事は、もうチアキの体は汚れてるんだよ。そんなチアキに価値なんてないんだよ」

「ちょっとチハル、うちはまだ処女だよっ!! そんな簡単に汚されたりしないんだよ」


 いや、【洗脳】=エロで考えないでくれ……。

 確かにそのパターンは多いけどさ。

 後、俺はそこまで処女に拘りはないんだが。


「お兄ちゃん、わたしがチアキが本当に生娘かどうか確かめて来るよ。残ってれば白だし、残ってなければ黒で良いよね?」


 そんな俺を傍目にチハルがそんな物騒な提案をしてきた。


「望む所なんだよっ」


 そしてチアキもその提案に乗る。


「まぁ残ってたらわたしが破って黒くしてあげるから安心してよ……」

「兄様っ!! チハルが颯爽と不正をしようとしてるんだけどっ」


 こいつらは意外と仲いいよな。

 ちょっと遠い目をして思ってしまった。


「あっ!! チアキ、やっと見つけた!!!!」


 そこに登場するのはチナツである。


「げっ!? 時間かけ過ぎたんだよっ」

「げって何よ!! 大人しく磔刑に処されなさい!!」


 そしてチナツの声を聞いて逃げようとするチアキと、それを追いかけようとするチナツ。


「わたしが逃がすと思ってるの?」


 そしてチアキを即捕まえたチハル。

 この良く分からない展開は三つ巴の様相を呈してきた。


「お兄ちゃん、全然三つ巴じゃないからね」


 俺の脳内コメントにツッコミを入れないで欲しい。

 しかし、まぁチナツが来てくれたって事はチアキが本当に【洗脳】されてるか分かるって事でもある。

 丁度良かった。

 チハルとチナツに十字架に縛り付けられそうになっているチアキを見てそう思った。


妹達は皆お兄ちゃんが絡まなければ仲はそれなりです。


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