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賢者様は洗脳中(?)


 爆心地ではゆっくり話をする事は出来ないとの事で、何故か近くの喫茶店に場所を移しチアキの話を聞くことになった。

 衛兵側についたという空気を出している癖に、喫茶店でのんびりしてていいのか疑問な所だが、チアキ相手に真面目に考えても仕方がないので気にしない事にした。

 ちなみに、チアキが連れていた衛兵さん達は通常業務に戻っていった。

 相変わらず無表情だったのがちょっと怖かったが、これについても気にしたら負けだと思ったので気にしないことにしている。

 本当にチアキは俺達を捕まえようとしているのか?

 その辺りについて聞く為にも、店員に適当な紅茶を頼むとチアキに話を振った。


「それで一体何があったんだ?」

「うちは、昔この街でやったことが原因で出禁を食らってるんだよっ。だからそれを解除して貰おうと思って、公爵家に行ったら【洗脳魔法】を掛けられちゃったんだ」


 チアキはニコニコとそんな説明をしてくる。

 やられた事は大変な事なのに、全く緊張感のない口振りである。


「その割には全く【洗脳】されているようには見えないんだが?」

「そりゃあ発動にあれだけ時間を掛けていたら、【カウンターマジック】使いたい放題だしねっ」

「は?」

「向こうの【洗脳】が発動前に、自分に【カウンターマジック】を使って【洗脳】を反射したって事だよ」


 いや、相手の詠唱よりも先に魔法を発動させるとかどんだけだよ?

 確かに簡単な魔法なら出来るとは聞いていたけど、いつもチアキの使っている【洗脳】から察すると【洗脳】だってそんなに詠唱に時間がかからない筈だ。

 流石、賢者様ってことなのか……。


「この手の事を魔法なりスキルなりで行おうとするんなら、時間を掛けてやってたら【カウンターマジック】で反射されて終わりだよっ。どんな魔法もそうだけど、詠唱は放棄して魔法は一瞬で使わないと一流の魔法使いとは言えないんだっ」


 そして続く王国一の賢者様(ヤベェ奴)の有難い御言葉である。


「それに【洗脳】や【催眠】って言うのは、その使いやすさに反して凄く危険なものなんだよっ。禁呪指定されるくらいのね。だから、それに対する対抗策は普通の冒険者だったら大体の人は準備してるものなんだよっ。うちの場合だと先に自分自身を【洗脳】しておくことで、他人からの【洗脳】を無効化しているしね。ついでに余裕があれば【カウンターマジック】とかで反射することも出来るから、うちはこの手の魔法には特に強いんだよっ。そもそも自分が得意にしている魔法で陥れられたら、情けないなんてもんじゃないしねっ」


 自分で【洗脳】や【催眠】を乱用している賢者様は言う事が違う。

 得意分野であることも相まってか、普段以上に饒舌に自分の手の内を明かしてくれた。


「本当に異世界転生者とかが、自分の好みの人を好き勝手したいからって【洗脳】系統のスキル持ってき過ぎなんだよねっ。お陰様で研究も進んで効率的な【洗脳】の仕方が学べるから都合が良いと言えばいいんだけど」

「【洗脳】されてないのに何でお兄ちゃんに弓引こうとした訳?」


 そんな上機嫌なチアキに、冷水を浴びせるのはチハルである。

 俺でも感じ取れる程の殺気をチアキに向け、何時でも腰の剣を抜ける様なある種の自然体を取っていた。

 チハルの殺気に慣れている俺ですら、ちょっと怖い空気である。

 実際チアキもやり過ぎたと思ったのか、頬に冷や汗をかいていた。


「いや、単純に驚かせようかなと思って……」

「チアキはふざけてるのかな? お兄ちゃんに要らない恐怖を与えた罪は万死に値するんだよ。ここでお兄ちゃんに土下座して謝った上で、今後一生わたしに逆らわない事を誓うんなら、チナツに言うのだけは止めてあげるよ」


 いや、チナツに今回の件を報告することと万死に値する罪は同価値ではないと思うんだが?

 そんなにお前らはチナツが怖いのか……。

 チナツは弄れば面白い反応が返ってくるくらい可愛い奴なのに。


「兄様に土下座するのは喜んでやるんだけど、うち的にはチハルに一生従う事もチナツに密告されることも嫌なんだよっ」

「……我儘な奴。そんな事が言える立場だと思っているの?」

「まぁうちも悪い所があったのは否定しないんだよっ。でもチハルに一生従ったり、チナツに密告されたりする死刑より重たい罪は受け入れられなんだよっ」


 お前らの価値判断はちょっとおかしいと思う。

 何でチナツに怒られる事が死刑より重たい罪になるんだ?

 後そんなにチハルに使役されたくないのか……。


「お兄ちゃん、やっぱりこいつは【洗脳】されているみたいだよ。殺そう」

「チハルごときがうちに勝てると思ってるの? シミュレーションでは7対3でうちの方が勝っていたんだよっ」

「そんなゲームでわたしの力が図れると思っていること自体が愚かなんだよ。それに今はお兄ちゃんの前だし。今のわたしには【お兄ちゃんの加護】っていう最強のバフが掛かっているのに、そのわたしに勝とうなんて、チアキも耄碌したものだね」


 いや、そんな新手のスキルっぽく【お兄ちゃんの加護】とか作らないで欲しいんだが……。

 それって単純に俺の前で見得を張りたいチハルが、いつも以上に頑張るっていうだけの精神的なものに過ぎないだろ。


「その理屈で行くならうちにだって、【兄様の加護】っていう最強のバフがついているんだよっ。ただでさえ弱いチハルが勝てる理由にはならないんだけど?」


 お前もお前で対抗して新しい謎スキルを作らないでくれ……。


「兄様、呆れたような顔してるけどチナツとかチフユさんだって似た様なスキル持ってるんだよっ」


 そして明かされる衝撃の事実。


「本当なのか?」


 思わずチハルに確認してしまう。


「うん。チナツは【にぃにの加護】、チフユお姉ちゃんは【兄さんの加護】をそれぞれ持ってるって自己申告していたよ」


 何それ?


「ちなみに、真冬には【にいさんのかご】が搭載されているよっ」


 いや、本当に何してんの?

 てか自己申告してまで、お前ら何やってるんだよ?


「お兄ちゃんにも、【実妹の加護】っていう超強力なバフが常時掛かってるから安心して」


 いやそれは【実妹の加護】ではなく【実妹の監視】ではないのか?


「そうだよ。兄様には【従妹の加護】がちゃんと掛かってるから、デバフは全部無効化されるようになっているんだっ」


 そっちもそっちでなんかヤバそうなんだが……。

 何か自分が知らない加護って呪いみたいで止めて欲しいわ。

 チハル達の話を聞いて、そう思ってしまったのである。


各加護の効果


【お兄ちゃんの加護】全ステータス1000%アップ

【にぃにの加護】MP消費量-100%+全状態異常無効化

【兄様の加護】魔法の効果が10倍になる

【兄さんの加護】チハル達三人に対して常に優位が取れる

【にいさんのかご】テンションが常に最大


ちなみに全員プラシーボ効果でこの効果が発動されています。

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