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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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過去と動機

 アズールが連れていたのはケツァルの噂を耳にしていた者がほとんど。だが同行が決まった時点で、ケツァルもそれは覚悟していた事だった。


 何故自分が同行者に選ばれたのか。護衛という意味では、圧倒的にガレウスの方が適任であるのは誰の目にも明らか。


 だが、ケツァルはこれをチャンスと捉えた。ここでアズールを説得することが出来れば、獣人族の行く末に光を灯すことができるかも知れない。少なくとも、このまま人間を敵視し続け、シン達のような通りかかった者達を片っ端から襲っていては、いつか今以上の不幸が降りかかることになるだろう。


 恨むべきは人間という種族ではなく、彼らを襲った者達であると分からせる必要がある。その為にもケツァルは、犯人についての有力な情報を握る人物と、アズール達を唸らせるだけの力を持った人間が必要だった。



 そしてそんな人物が、今都合よく目の前にいる。ダラーヒムが情報を持っていたというのに関しては偶然だったが、ケツァルはダラーヒムがシー・ギャングの幹部である事を知っていたのだ。


 更にはそんな彼と行動を共にしていたシン達のことも、既に知っていたのだった。彼らを乗せた馬車を襲撃するよう仕向けたのも、ケツァル派の者達による縄張りへn侵入報告を上手く利用してのことだった。


 故に彼らを襲ったのは偶然ではなく、馬車の手配から下調べも既に根回ししていたのだ。


 シン達は先のレースで、一躍有名となっていた。海賊達を相手にあれだけの活躍が出来れば、アズールの前に連れてきたとしても申し分ないだろう。


 彼らの情報を得る為に、ケツァルは獣人族の他に森に住んでいるエルフ族との協力を持ちかけていた。


 一人で森を出ていくような用事を、アズールやガレウスに知られる訳には行かなかった。既に怪しまれていた彼は、エルフ族の協力を得て森に結界や幻覚などを引き起こすことにより、獣人達の目を欺きながら多方面との協力の根間らしを進めていたのだという。


 エルフ族も獣人達と同じく、同族の行方不明という事件に頭を抱えていた。その手法や法則性が、獣人族に起きていた事件と重なることもあることから、それをネタにエルフ族と手を組んでいた。


 同じ目的を果たす為に動いてもらう中、エルフ族の調査でとある奇妙な話を耳にすることになったケツァル。


 その内容は、彼と同じ獣人族のガレウスに関する噂だったのだ。


 アズールが獣人達の長になる前から、エルフ族と獣人族は協力もしなければ敵対もしないという関係性で、この樹海の中で生活してきていた。そもそも食や生態が全く違う彼らに縄張りなど必要なく、互いを気にしなければ争うこともなかった。


 それ故、互いに縄張りや不可侵領域などもなく、ただそれぞれの種族が集まる村や集落には関与しなだけの関係性だったのだが、その辺りからエルフ族と獣人族の間で行方不明事件なるものが発生し始めた。


 後にそれが人間の仕業であることが明るみになるのだが、その情報に埋もれるようにとある変化が獣人族の中に現れたのだという情報を、ケツァルは耳にすることになる。


 行方不明事件が人間の仕業である事を知り、それぞれの種族が湧き立っていた頃、それと同時期に獣人達のある一人が少しずつ魔力を強めていたのだという。


 魔力を敏感に感じ取ることができるエルフ族ならではの情報。実際彼らからその話を聞くまで、同じ獣人であるケツァルには全くその変化を見分けることが出来なかった。


 その魔力の上昇は、修行やトレーニングでどうにかなるような量ではないらしい。不自然に魔力を上げる獣人と行方不明事件。関連性を疑うには情報が少なかったが、ケツァルは独自にその者に探りを入れてみることにした。


 その獣人というのが、他でもない“ガレウス“という噂だった。


 互いに思考の反発から仲違いをしていたケツァルとガレウス。そんなガレウスは、同族を誘拐しおかしくされた事を恨み、激しい怒りを人間に向けるようになる。


 それこそ、ただ森を通り掛ろうとしただけの人間であっても。あまりにも見境の無い行いは、無駄な争いや恨みを買うだけだと止めたが、先に手を出してきたのは人間の方だと聞く耳を持たなかった。


 情報収集の一環の為、捕らえた人間に拷問を掛けていたのもガレウスだった。彼なりに何かを掴もうとしての事だったのだろうが、その拷問は人間に恨みを持つ獣人達によって、あまりにも楽しそうに行われていたのだという。


 当然その後処理も彼らが行っている筈なのだが、それを知る者達はほとんどいない。ボスであるアズールでさえ、ガレウスに一任してるようでその詳細までは知らない。


 エルフ達の話から妙に感じたケツァルは、エルフ達の力を借りながら片手間に調べてみることにした。するとどうしても、遺体の処理方法だけがどうにも腑に落ちない点が多かった。

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