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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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魔力を帯びた石

 通路の先で少年がモンスターを相手にしている内に、ツバキはとある物を探していた。それは、さきほど見つけた書物にも書かれていたもので、その研究を行っていたのならまだ残されているであろうと、彼が予想していた物だった。


 埃を被っている棚や箱の中を、乱暴に探し回るツバキ。如何やら彼の探しているものはそれほど繊細な物ではないらしい。これは今の状況においては好都合だった。


 「くそッ!どこだ!?どっかにあんだろ!?これだけの研究をしておいて、使い切るってこたぁ考えられねぇ」


 僅かに開いた通路への隙間から、魔法を使っているかのような光が入って来る。声を出さない為、レインコートの子供達が攻撃をしているのか受けているのか、状況が把握しづらい。


 だが、騒がしい音が聞こえているというのが、戦闘が依然行われているという証拠。何方かが倒れたのならこうはならないだろう。


 すると、漸くツバキが探し物を見つけた。嬉しそうに彼が手に取ったのは、何の変哲もないただの“石“のようだった。


 「あった!・・・後は使えるかどうかだが・・・」


 彼はそう言って、幾つもある石の内の一つを、戦闘が行われているであろう通路の方へ放り投げる。石の音自体は、気付かれて襲われる程響き渡ることはなかったが、その石にある変化が見られた。


 石は床を転がり、通路で戦うレインコートの少年とモンスターの方へ近づくと、淡い光を帯び始めたのだ。


 「よし!やっぱり“魔石“だ。高度な技術を用いるのなら、当然あると思ったぜ!・・・待ってろよ、俺も戦うからよぉ・・・!」


 魔力を使った研究や治療法を行っていたのなら、その魔力を供給する物が必要になるはず。


 同じ技術者として、造船の現場で様々な素材や材料を扱ってきたツバキは、より魔力に頼った研究をするのであれば、魔石が大量にあるはずと踏んで探していた。


 “魔石“とは、WoFの世界においてそれほど珍しい物ではなく、寧ろこの世界で暮らす人々にとっては密接に関わるであろう代物だった。


 魔力は色んなものに宿る。それは生き物だったり物質であったり、目には見えないが大気中に漂うような場所も少なくない。


 当然、その辺に転がっている石にすら魔力を帯びる事がある。その中でも特に魔力を溜めやすく、また取り出しやすい物の中に鉱物があり、様々なところで活用されている。


 更に高純度で希少価値が高い物が、宝石の類となっている。だがそこまで行ってしまうと、普通の人間に扱える物ではなくなってしまい、魔力の暴走や肉体に必要以上の魔力を帯びてしまうことで、魔物に変化してしまう事もある危険な物になってしまう。


 その点、彼の見つけた“魔石“は研究や実験ではもってこいの扱いやすさと手軽さがある為、重宝されている。


 だが、ツバキは魔石を探し出した後も、仕切りに部屋の中を探し回っていた。今度は特定の物を探すというよりも、機械類に的を絞っているようで、目的の物を見つけると分解し、部品だけを持ち去っていった。


 幸い、このオルレラの研究所は薬や医療による研究のみならず、機械などの発明や開発にも手をつけていたようで、彼の得意とする発明に必要なものは、一通り揃っていた。


 ツバキが何かを作り始めた一方で、通路での戦闘に僅かな変化が訪れていた。何とかソウルリーパーの攻撃を避けていたレインコートの少年が披露し始めてしまったのか、避けるよりも防ぐ事が多くなってきていたのだ。


 ただ、実態を持たないソウルリーパーの攻撃は、魔力を使ったものでなければ防ぐことが出来ない。つまり、少年の魔力消費量が増え始めたということになる。


 何故そのような手段に出たのか。それは彼の戦い方から推測することが出来る。ツバキを間一髪のところで助けた光の魔法や、彼を回復した治癒魔法のように、如何やら少年達は魔法に特化しているようで、身体能力自体は普通の子供と然程変わらないようだった。


 魔法で抵抗する少年に対し、今度のソウルリーパーはツバキを襲った個体とは違い、多少攻撃を受けようとも執拗に少年の息の根を止めに掛かっていた。


 モンスターの止まらぬ攻撃の手に、押され始める少年。いくら彼らでも、魔力を使った戦闘は長くは保たない。それは少年のように小さな身体であれば尚の事だろう。


 徐々に劣勢となっていき、モンスターの攻撃を魔法で防ぐも、壁に吹き飛ばされてしまう少年。起き上がり様を狙うように、ソウルリーパーが宙を飛び急接近する。


 そしてその鋭い爪で少年を掻っ切ろうとしたところで、通路とツバキのいる部屋を隔てていた壊れた扉が、突然爆発を引き起こしたかのように吹き飛んだ。


 煙と薄灯の中現れたのは、腕に取り付けられたガジェットと共に、拳を突き出したツバキの姿だった。

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