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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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変異体の捕食

 イルの放ったモンスターは、彼が実験に使ったモンスターも混じっており、その中にはシン達の知る、人の知恵や言葉を使うような“変異体“の姿があった。


 しかもそれは、外でMAROの式神と戦うモンスターの群れだけに見られるものではなく、峰闇らが赤レンガ倉庫内で出会ったモンスターの群れの中にも、ケイルや天臣が戦っていたステージ上の群れの中にも混じっていた。


 故に、負傷していたとはいえケイルや天臣が苦戦を強いられていたのだ。彼らはイルの行方や蒼空のことで頭がいっぱいになっており、この異変に気がついていない。


 狡猾な変異体は、前線で彼らに敗れた個体を隠れて捕食し、着実に力を蓄えている。群れとしての数は徐々に減りつつある。だが、それと引き換えに残ったモンスター達は変異体だけとなっていき、次第に強力な個体との戦闘へと変わっていく。


 「ヤベェぞ・・・!成長される前に仕留めねぇと、厄介なことになるッ・・・!」


 いち早く異変に気が付いたMAROは、モンスターとの戦闘に放った式神の性質を、攻撃的なものから防御よりの耐久型のタイプへと変化させる。


 これ以上群れの数を減らすのではなく、自らそれぞれの戦場へ赴き、変異体を仕留める為、時間稼ぎをさせる。


 手始めに、最初に異変に気付いた戦場へ向けて、乗っていた鳥型の式神を急降下させ、一体だけ動きの違う変異体へ強襲を仕掛ける。


 鋼のように硬化させた翼で、変異体に向けて体当たりを仕掛ける式神。地面が近づくと、MAROは式神の背中から飛び降りる。


 敵襲に気が付いた変異体は、すぐさま飛び退き鳥型の式神の体当たりを避ける。しかし、それを読んでいたかのように、先に地上へと降り立ったMAROが他のモンスターを無視して駆け抜け、変異体へ呪符をつけた掌底を放つ。


 変異体は、しなやかな身のこなしでそれを避けると、彼の腕を体当たりで跳ね上げ、鋭い爪で飛び込んできたMAROの首を狙う。


 「うッ・・・!」


 身体を仰け反らせ、紙一重でそれを避けた彼は、手につけていた呪符を瞬時に剥がし、空振りとなった変異体の身体目掛けて飛ばす。


 彼の放った呪符は変異体の背中に、見事命中する。一旦様子を伺う為に変異体との距離を取るMARO。一枚の紙でできた呪符は、変異体にその付着を感じさせないほど自然に張り付くと、その効果を発揮する。


 まるで石のように重くなる自分の足に驚く変異体。MAROの放った呪符には、移動能力低下の効果が乗せられていた。所謂デバフと呼ばれるものだ。


 動きの鈍くなる変異体へ向けて、彼はここまで乗ってきた鳥型の式神を差し向ける。旋回していた式神は再び急降下し狙いを定めると、両方の足で変異体の身体を鷲掴みにする。


 そして高く飛び上がった式神は、かなりの高度から真っ逆さまに勢い良く降りてくると、地面ギリギリで変異体を手放し衝突させる。


 いくら知恵をつけようが、レベルを上げるのはそれ程容易ではなかったようだ。変異体はその衝撃に耐えられず、その場で消滅していった。


 MAROが早くに気が付いたおかげで、抵抗される前に退治することが出来た。どうやら捕食するにしても、その食の質によって変化に違いがあるようにも見えた。


 シンがプレジャーフォレストで戦ったようなリザード種のボスは、人の言葉を理解し話すだけでなく、シンのスキルの効果や性質を理解し、策を持って彼を苦しめてきた。


 つまりあのリザードは、WoFのユーザーを幾人か捕食していた可能性が高い。それにより、より高度な知識や戦略を駆使し、まるでプレイヤーが操っているかのような動きを見せたと考えていいだろう。


 WoFの世界観のように、相手を倒してレベルアップするという概念もあるが、それ以上にモンスター達はユーザーを捕食することで、より人間らしい戦闘力を身につけることができるようだ。


 「ふぅ、こいつら早めに処理しとかねぇとな・・・」


 一つ目の戦場で変異体を倒すことに成功したMAROは、すぐに鳥型の式神に乗り、再び上空へと上がっていく。そして次の戦場へ向けて移動を開始した。


 その頃、会場へ到着した峰闇ら一行は、ステージでモンスターの猛攻を耐え凌ぐケイルの元へと急ぎ、加勢しようとするが、後方に控えていたモンスター達に阻まれ、中々ステージ上へと上がれずにいた。


 「クソッ・・・!数が多いッ・・・」


 「またさっきみたいな大技で、一気に倒せないんですか!?」


 「無理だ・・・。このような入り組んだ室内戦では、君達やケイルを巻き込み兼ねない・・・」


 峰闇の衝撃波を使ったスキルを用いれば、一気に大量のモンスターへダメージを与えることは可能だ。だがそれでは、守らなければならない対象をも巻き込んでしまう。


 一撃の威力を増した、紫黒のオーラを纏わせた剣技で着実に一体一体処理していく峰闇。マキナとにぃなも、遠距離攻撃でモンスターを近づけないように攻撃してはいるものの、MAROの見つけた通り変異体となっている個体には、然程ダメージが通らずにいた。


 「ねぇ、さっきからステージに倒れてる蒼空の様子がおかしい・・・。私が行けば回復できるんだけど・・・何とか突破できないかな?」


 「一か八か・・・か。俺が先陣を切って道を開く!二人とも、ついてこられるか!?」


 ケイルとの付き合いが長い峰闇には、彼が本来の力さえ取り戻せば、ここにいる全員を守るくらいの力を発揮できるであろうことを知っている。


 ここでモンスターを少しずつ始末していけば安全にステージへ辿り着けるだろう。だがそれでは、ケイルも蒼空も手遅れになり兼ねない。ならば一層のこと、ケイルの元まで駆け抜け、一丸となって戦った方が彼らにとって望ましい結果に繋がるかもしれない。


 「出来るかできないか・・・じゃ、なさそうっスねぇ・・・」


 「行こう!それが私達にとっての最善だから!」


 意を決した彼らは視線を交わして頷き、剣を握る峰闇の手に力が入ると、紫黒のオーラが燃え盛る炎のように強力になる。それを合図に駆け出した峰闇が、次々に道ゆくモンスターを払い除け、その後に続くようににぃなとマキナが続く。

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