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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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華麗な早技・・・?

 砂の牢獄を抜けたイヅツは、そのままデューンを無視して男らの後を追おうとする。彼らに付けたはずのGPSだったが、部屋の外からそう遠くない位置から移動していなかった。まずは最初にその位置を目指す。


 「敵対するというのなら、あんな奴と戦っている時間はない。少しでも近くに奴らがいる間に探さねばッ・・・!」


 WoFのキャラクターの脚力を活かした素早い動きで、入り組んだ路地を進んでいくと、目的の場所へ向かう為の通路にデューンのものと見て間違いないであろう砂が敷かれていた。


 「・・・これ、アイツのだよな・・・?」


 上を見上げると、両サイドの建物の隙間からまるで湧き水のように、サラサラとした砂が流れている。ここが街中であるのを忘れてしまいそうになる異質な光景に呆然としていると、何処からともなく再びデューンの声がし始める。


 「おいおい、連れねぇなぁ。初めに言っただろ?俺はアイツらが逃げるまで、アンタの相手をしてなきゃならねぇんだって」


 「話に応じる気があるのならまだしも、邪魔するのなら俺にお前の相手をする理由はない」


 イヅツはその場を離れ、迂回して目的の場所を目指そうとする。だが、彼がいく先々には、先程までは見当たらなかった砂があちらこちらに、散りばめられていた。


 「早いな・・・いつの間に仕込み終えたんだ・・・?それとも先に仕掛けてあった・・・?」


 彼が部屋を飛び出してから、移動にそれほど手間取ってはいなかった筈。それなのに、後に出た筈のデューンが何故これ程の罠を仕掛けられたのか。


 ここは奴らの根城。既に後を追って来た者を迎撃する為の仕掛けが準備してあったと思うのが自然だ。


 しかし妙なのは、そこまで大掛かりな罠を準備しておきながら、何故殺されるかもしれないというのにイヅツの接近を許したのか。


 始末が目的ではなかったので手は出さなかったが、あれでは雇い主の構成員を簡単に殺されてしまうのではないか。


 不自然に思いながらも、更に別の道はないかと時間を費やす内に、最早全ての路地に砂が仕掛けられているのではないかと疑うほど、何処もかしこも壁から砂が溢れ、地面には砂の絨毯が敷かれていた。


 「もう追いかけっこは終わりかぁ?」


 「・・・・・」


 「あれ?もしも〜し!・・・もしかして、諦めてくれたぁ?」


 ここまでされてしまっては、イヅツももう男達は追えぬところまで逃げられてしまったであろうことを悟る。


 それならばと、少しでも男達のことや、NAなるハッカー集団の情報を異世界の住人であるデューンが漏らさないか、問いただすことにした。


 「この様子では、上に移動しても無駄なんだろ?」


 「上に登ろうとしなかったのは賢明な判断だったな。あぁそうだとも、俺は地上戦よりも空中戦の方が得意だからな。もし登ろうモンなら叩き落としてやるつもりだったよ」


 「お前は意外にも、強かな奴だったようだな」


 「ん〜!やっぱ、分かる奴には分かるんだなぁ〜俺の魅力ぅッ!」


 上機嫌になり、口にたっぷりと潤滑油を塗ったところで、イヅツはまず路地の仕掛けについて彼に聞いてみる。如何にして仕掛け、如何にして獲物を捕らえるのか。男の機嫌を調整しながら。


 「これだけの仕掛けを、わざわざ俺だけの為に?」


 「まっさかぁ〜!こんな仕掛けを常に仕掛けて置けるのなら、アイツらだってわざわざ逃げ出す必要なんかないだろうからねぇ〜」


 「・・・?ならこれは、俺がこの領域に入った時に仕掛けたのか?」


 「それも違う。罠ってぇのは鮮度が命ッ!アンタがアイツらを追えねぇように、俺の華麗な早技でさっき仕上げたのさ!」


 男が自信たっぷりに話す持論。だが、イヅツはその所業に驚いていた。デューンは今、イヅツが男達を追えないように“さっき“仕掛けたと答えた。


 だが、いくら早く動けたとしても、その気配や移動する姿を見られずにここまでの仕掛けを仕上げるなど、どう考えても不可能だった。それこそ、イヅツが知る中でも強者に入る、フィアーズの幹部の一人、スペクターであっても姿を見られず、気配を悟られずに大規模な罠を張るのは難しい。


 「馬鹿なッ・・・!いくら俺でも、ある程度の気配は察知できる!だが、お前の移動するところを見ていないし、感じることもなかった!」


 「おう、そうだとも!俺の罠に掛かった奴らは、みんなそう言うぜ。嘘だ!あり得ない!ってな?」


 「これも全て、お前の能力だとでもいうのか!?」

 

 イヅツが取り乱したかのように見せたのは、半分事実でもう半分はボロを出させるための演技だった。


 砂を扱うという特異な能力なのもそうだが、そこに瞬間移動でもしたかのように加速することのできるスキルがあるのかと言われると、そうは思えない。ならば錯覚を利用した、何らかのトリックなのだろうかとイヅツは考えていた。


 だが、男から語られたのは彼が思っていた以上に、彼らという存在について重要なものだった。


 「実際、俺にもこんな事が出来るだなんて思わなかった」


 「・・・どういう事だ?」


 「ハハハハハッ!そうかぃそうかぃ!アンタも知らねぇ口か!俺らという存在の概念についてよぉ」

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