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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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掴んだ糸

 現場の検証に向かう雫に反し、明庵はドローンが送ってきた映像データを、続けて武器マニアの知人の元へ送信していると、先程の高速道路にあった傷跡について返答が来ていた。


 その知人曰く、槍によく似た物によって付けられた傷跡であることが分かっった。


 「槍・・・?この時代にそんな物・・・。そもそもそんな物所持してたら嫌でも目立つッ・・・!?」


 人目につかず、槍のような長物の武器を持ち運ぶことなど、警備ドローンが飛び交う都心では不可能と言える。だがそれも、明庵の追う不可視の存在であれば難なく可能だ。


 何より明庵は、事件現場に突如として現れた、不可視の存在と何らかの関係がある可能性が高い慎と出会い、そして白獅が変装した黒コートの人物を一瞬ではあるが目にしている。


 やはり慎を誘拐した黒コートの何者かが、今回の一件に絡んでいると睨んでいる明庵は、その時の事件現場の映像や写真データをスマートフォンに表示しては、ホログラム表示で視界に映しながら、高速道路で集めた情報と照らし合わせる。


 どこからともなく現れる不可視の存在。その者らであれば、高所である高速道路の柱に爆弾を仕掛けることも容易なのだろうか。


 そもそもその者達は、空中に出現することは可能なのだろうか。考えを巡らせれば巡らせるほど、思考は現実離れしていき、もはや人間技ではないのではと思えてくる。


 不可視の存在が発する微弱な電波を検知するドローンを使えば、痕跡やこの世のものではない証拠を見つけられるかもしれないが、かえってそれが明庵の視野を狭めてしまっているのだ。


 目に見えるものが真実であると盲目になり、決めつけは固定概念を植え付けてしまう。


 明庵の追いかけるものは、そういった常識の範疇にいては到底到達出来ない存在であることは確かだろう。


 現場検証をしている雫の元へ向かい、明庵は現場で起きた“事故“の被害者について彼女に確認する。


 「事故に巻き込まれた車両は全部分かったか?」


 「え?あぁ・・・はい。重油やガソリン等の危険物を輸送中の大型車両が三台。他にも食品関連のトラックと、宅配のトラックが・・・」


 「他の車両は?」


 彼女は何故そんな初めに調べそうなことを聞いてくるのかと、少し不思議そうな表情を浮かべながら答える。


 「乗用車が複数台あったようです。道路から転落したと思われるものも含めると、もう暫く時間がかかりそうですが・・・ッあ!そういえば・・・」


 雫は徐にデバイスに保存されている写真データを漁り始める。そして目的の写真を見つけると、画像を拡大して明庵に見せる。


 「これ!道路に大型二輪車のタイヤ痕が僅かに残っていたそうです。ですが、何処にもタイヤ痕を残した二輪車が見当たらないんですよ・・・」


 「どういうことだ・・・?」


 他の車両や、爆発や引火の原因となったでろうものは現場に何かしらの証拠や残骸を残しているのだが、雫の見せた写真にあるタイヤ痕を残したバイクだけが、まだ見つかっていないのだという。


 単純に考えれば、崩落したところから落下したのではないかと思われるが、そのタイヤ痕は反対側の道路に多く残されており、明庵達のいる都心部側にはただ一箇所にしか残されていないのだ。


 それも、都心部側のタイヤ痕を見る限り、何処からか飛んで来て着地したような痕と、その近くに急ブレーキをかけたような痕しか残されていなかったのだ。


 そして反対側の道路には、爆発に動揺したのか複雑にハンドルを切ったタイヤ痕が残されている。それは警察や鑑識による鑑定では見つけることが出来なかったようで、雫の見せる写真データには残っていない。


 明庵のドローンが反対側の道路の現状を撮影した時に確認したものだっ他のだ。敢えてそれを彼女に告げなかったのは、余計なことに頭を突っ込みそうだったからだろう。


 実際は朱影が機械獣との戦いの際につけた痕なのだが、雫の反応を見てその時初めて明庵は気がついた。


 二箇所のタイヤ痕による違い。それは、実際に走っていたバイクのタイヤ痕と、不可視の者によって付けられたであろうタイヤ痕であること。


 つまり、バイクは不可視の者によって持ち去られた可能性が高いということだった。


 「そのバイクに乗っていた者はどうなった!?」


 「えっえと・・・既に病院へ搬送されたようです。まだ意識は取り戻していませんが、命に別状はないようです」


 彼女から告げられた報告を聞いて、明庵の胸はまるで楽しみにしているイベントの前夜のように高鳴った。もしかしたら、その運転手からこの世界に起きている“異変“に触れた証言を得られるかもしれない。


 そう思うと、彼の足は自然とその病院へと向かう為、乗ってきた車の元へと動いていた。

 

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