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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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出雲明庵

 出雲いずも 明庵みょうあん


 サイバー事件を中心に捜査するエージェントの一人。通常の事故や事件に関与するサイバー犯罪を、警察組織に代わり調査する。無論、警察内部にもそのような部署は存在するのだが、より特化した調査を主軸としている。


 シンが遭遇したモンスターや、朱影らが戦ったノイズのように、現実世界へ何らかの影響を及ぼし関与することで、事故や事件を引き起こす存在がいるのではないかと危惧する者もいる。出雲もその内の一人だ。


 アンドロイドやドローンといった機械が生活の大半を占めるようになった世界。技術の発展に伴い、犯罪の傾向もより電子的になってきていた。


 巷ではハッカー集団と呼ばれるものが横行しており、若者を中心に多くのチームが組まれている。というのも、リスクを冒してでもハッキングによる稼ぎの方が、一気に成り上がれるチャンスが多いことが噂となり、就職する者や会社を辞める者が増えたのだ。


 社会に不満を持った元技術者が、多くの者達に知識や技術を与え、あらゆる世代にハッカーが誕生した。


 今回の事件のように、車両をハッキングし事故を起こさせるといった事件も増え、それがWoFと現実世界を行き来する者やモンスターの存在を目立たなくさせる要因に繋がってしまっている。


 故に、巷で噂になっている行方不明事件も、身分を改竄し姿を眩ましたのではと考えられた。


 出雲の父は、そんなサイバーエージェントとして働く正義感のある人物だったが、捜査の中で事件に巻き込まれ殉職してしまう。


 その際に恨みを買ったのか、出雲家の情報を調べ上げた何者かによって、寝静まった深夜に家を放火されてしまう。直接的な発火の原因となったのは、家内の電化製品の消し忘れによるものと鑑定されたが、明庵は母が消し忘れたなどと考えることはなかった。


 以前にも嫌がらせじみたことは幾つか起きていたのだ。仕事柄、ハッキングによる対策をしていた出雲家は、父の遺した対策システムのおかげで長らく守られていたが、ハッカー達の進化も時を経るごとに増していき、古い防衛システムはすぐに役に立たなくなってしまう。


 何者かが意図的に家に火を放ったせいで、母は明庵を助ける為に焼死してしまう。身寄りのなかった明庵は、父の後輩でもあった人物の好意で引き取られ、父や養父の影響もあり彼自身もエージェントとなる道を選ぶ。


 技術力が発展していくのは、何もハッカー達だけではなかった。事件の発覚から使用されたハッキングツールの特定が著しく成長し、既存のソフトを使ったハッキングはすぐに逆探知され、多くのハッカーを取り締まれるようになってきたのだ。


 更には最新鋭の技術によるハッキングへ対する対応力も高まり、先手は打たれるものの後続のハッカー達を捕らえる技術も進化していた。


 だが、それでもハッカー達による事件が減ることはなく、中には追うことが出来なかった事件も幾つか存在した。


 しかし妙なことに、犯人を追い詰めるまではいけなくとも、ハッキングに使用されたソフトや手段の足掛かりは得ることはでき、次の犯罪を食い止めることができる中で、唯一全くといっていいほど何の手がかりも掴めない事件も存在したのだ。


 無論エージェント達も、それを調べなかった訳ではなかった。だか調べても調べても、被害者や犯行傾向に法則性や規則性は一切見られず、何も進展を得ることは叶わなかった。


 そんな中明庵が目をつけたのは、行方不明者の家宅捜査の際に見つけたVR MMOのWoFというゲームだった。だがこれらもまた、エージェント達によって既に調べ上げられたものの一つでしかなかった。


 制作会社からその従業員、使用ソフトやシステム、過去にハッキングされた事例やチートソフトの被害など、有りと凡ゆる捜査が施された後で、有力な情報が見つかることはなかった。


 だが、明庵は不思議とそのゲームに惹きつけられ、自らも試しに使用してみることにした。


 ゲーム自体は、青春時代を勉強に費やしてきた彼にとっても楽しめるものになっており、ゲーム廃人と呼ばれる所謂私生活に影響を及ぼすほどに没頭する者達が出てくるのも、納得できるものだった。


 しかし、シンが巻き込まれた“異変“は、何もWoFのユーザー全てが遭遇するものでもなかったようで、WoFをプレイしたからといって明庵にモンスターやアサシンギルドのような、日常風景に隠され溶け込んだ異形のものを目にすることは出来なかった。


 それでも、WoFの魅力に取り憑かれた明庵は暇さえあれば気にかけるようになっていき、VRで遊びすぎた疲れか、捜査現場で稀に風景の一部がぼやけるといった症状が現れ始める。


 症状が出始めてから彼は、WoFとは距離をおくように意識し始める。だがある時、彼はその症状がとある事件を調べている時にしか見られないことに気がつく。


 それこそ、何の手掛かりも掴めないとされている事件だったのだ。

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