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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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レースの終演と歓喜の宴

 そして遂に、フォリーキャナルレース総合順位が発表されようとすると、会場は一気に静まり返った。皆この時を待ち望んでいたのだろう。会場を包む空気だけで、それがひしひしと伝わってくるようだった。


 「さぁ、皆様お待ちかね。最後にフォリーキャナルレースを制し、覇者となった人物、または団体を発表致します!初めに第三位を発表した後に、最後の一位の発表となります」


 ステージでマイクパフォーマンスをする支配人の男が、発表の仕方を説明した後、緊張感を高める為に特有の溜めを作る。


 祈るように手を握り合わせる者もいれば、ただ一心にステージ上の男に視線を送り続ける者など、その時を待つ観客や海賊達の様子は様々だったが、誰一人、見事なまでに口を開かぬその間に、初めてレースへ参加したシン達も、その独特な空気に身体が強張るようだった。


 「第三位・・・。チン・シー海賊団ッ!!多くの財宝やモンスター討伐数を納め、様々な強豪や参加者を蹴落とし、磐石な基盤を作り上げました。そして、レイド戦への参加は遅れたものの、得意の連携により多大なる貢献を果たし、見事第三位の座となりましたぁッ!」


 チン・シー海賊団に大きな拍手と歓声が送られる。レイド戦へは大きく遅れたものの、ハオランによる活躍や弓技による遠距離攻撃でリヴァイアサンを射抜き、炎による継続ダメージでポイントを伸ばした。


 そして何より、フランソワ・ロロネー討伐の功績もカウントされていたようで、決して無駄な時間を過ごしていたという訳でもなかったようだ。ロロネーは元より多くの犯罪や悪事を働いており、政府や様々な組織からも目をつけられていた。


 その事もあり、ロロネーには初めから懸賞金が発生していた。プラスしてハオランの到着順位一位というのが大きく働き、三大海賊の首位独占を落とさぬ結果へと繋がったようだ。


 最早この時点で、残りの一位と二位がどこの海賊団であるのか、大方の予想はついた。それは参加者のみならず、会場にいた観客達も分かっていた。どちらの名が先に呼ばれるのか、ただそれだけだった。


 財宝やモンスター討伐、ライバルの排除などはチン・シー海賊団に限った話ではない。シン達を襲った序盤の洗礼は、強豪海賊であるのならどこもやっていたこと。


 先陣を切って大海原を渡り、様々な島を漁り尽くし、いち早くレイド戦へと突入したその海賊達は、どちらも終始必要不可欠なほど見事な快進撃を果たした。


 兵器のクラフトによる、手数と一撃必殺を披露したエイヴリー海賊団。


 たった一人でもリヴァイアサンの巨体を持ち上げてしまうほどの、圧倒的な能力でダメージを叩き出し、幹部達のずば抜けた属性攻撃による援護により、戦況を大きく変えたシー・ギャング。


 次に支配人の男の口から語られた名が、フォリーキャナルレースの覇者となる。


 「そして、今回のレースの覇者に輝いたのは・・・」


 再び会場には沈黙が広がる。三位の発表時は、シンやツバキのボードのような異例の上位入賞があるのではないかという期待と、歴史が動いてしまうのではないかという不安のある緊張感だった。


 一位の発表は、それとは違った何処か定番となった安心感のようなものが感じられた。


 「第一位ッ!エイヴリー海賊団!!その圧倒的な規模と手数により、他の追随を許さぬ高得点を記録。中でも、レイド戦におけるダメージ総数は、過去に類を見ないほどの数値を叩き出しての優勝です!そして、今回惜しくも優勝を逃してしまったシー・ギャング海賊団は二位という結果になりました!到着順位での上位入賞は叶いませんでしたが、レイド戦における功績はエイヴリー海賊団にも引けを取らぬものとなりました!」


 大歓声に包まれる会場と、喜びを全身で表す海賊と観客達。全ての結末を見届け、彼らは浴びるように酒を飲み、料理を食らった。


 「この度は、お集まりになられた来賓の方々、そしてレースへ参加して下さった皆々様。誠に・・・誠にありがとうございました!会場は明日の朝まで解放しております。どうぞ心ゆくまで、この狂気と波乱に満ちたレースの余韻をお楽しみください」


 こうして、長きに渡るフォリーキャナルレースは終わりを告げた。しかし、宴はまだ続く。シン達も会場に用意された飲み物や料理が食べ放題であると告げられると、ありったけの料理と酒を浴びるように堪能した。


 シン達が宴に興じていると、同じく宴に参加していたチン・シー海賊団のハオランが彼らの元へ訪れた。


 「シンさん、それに皆さんも。この度はありがとうございました」


 「何だ、急に。こっちも助けてもらってばかりだったんだ。お礼を言うのはこっちの方だよ。ありがとう」


 ロロネーの時もそうだったが、彼らの治療がなければシン達が戦線へ復帰することもなかった。彼らなくして、今のシン達もなかったということだ。そして何より、ツバキのボードを一躍世に知らしめる助けにもなった。


 「我が主人は、今後も友好関係を築いていきたいとおっしゃっていました。我々に手伝えることがあれば、何でも言ってください。各港町には、我々と連絡の取れる者がいます。御用の時は探してみて下さい」


 「あぁ、ありがとう。助かるよ」


 意図していた訳ではないが、これで今後海に用事がある際は彼らの力が借りられるようになった。


 WoFに起きている異変は、何も陸でばかりという訳ではない。それはシン達が身をもって体験したことだ。それに、毎回船を借りるよりは、十分以上に戦力となる彼らが一緒であれば心強い。


 話を終えたハオランがシン達の元を去っていく。シンは彼の行動を見習い、とある人物達の元へいき、話をしておこうと食事を切り上げ、席を立った。

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