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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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裏切り者達

 キングの船団を囲うように停滞する、シー・ギャングの船団。そこへ向かって来る複数の船があった。だがそれは、キングの援軍でもなければ、ロバーツ達を助けに来た友軍でもない。


 しかし、その海賊船に掲げられていた海賊旗は、ロバーツら連合軍がよく知る海賊団のものだった。


 ウォルターを追いかけ、キングの船を離れたアンスティスが、こちらへ向かって来る不信な船団を目にする。彼らはトゥーマーンの船団の間をすり抜けるように進み、どこかに紛れているであろうダラーヒムの船団に近づいてきた。


 「あれは・・・フィリップスの海賊船。何故ここに向かって来ている?」


 彼らキング暗殺計画を目論んでいた海賊船は、少数精鋭だけをアシュトンの用意した潜水艦に乗せて向かわせた。残された部下達は、キングの能力による一掃を避ける為、一定の距離以上には進まないようにという手筈になっていた。


 それでは一体何故フィリップスの海賊船が、襲撃を受けたキングの元へ向かい始めたのか。それは彼らフィリップス海賊団の中に入った亀裂が原因だった。


 元々、リヴァイアサンとの戦闘で疲弊した彼らは、キングの暗殺に反対する者達と、それでも実行に移す者達で割れていた。ウォルターの説得により、反対派を上手く丸め込む事に成功していたが、実際はそうではなかった。


 ウォルターは彼らに、裏切りの手引きをしていたのだ。フィリップスの意見に反対していた、ジョン・ローズ・アーチャーと、ロバート・モーティマー。彼らがフィリップス海賊団の船を乗っ取り、事前に決めていた爆発によるウォルターの合図で、キングの船団へと向かって来たのだ。


 「よしよしッ!予定通りだな」


 「余所見してる暇が・・・あんのかいッ!?」


 救援を待つ間、ウォルターはアーチャーらの船が近づけるようダラーヒムの船団の戦力を削いでいた。


 錬金術により、砲弾や船の残骸を別の物質へと変えてウォルターへ次々に撃ち込んでいく。だが、ウォルターは素早い身のこなしでそれらを躱しながら、霧を払うように爆発で撃ち落とす。


 「お前の“作り出す“クラスは、俺とは相性悪ぃんだよ。生成する力じゃ、俺の破壊には勝てねぇよ!」


 ウォルターの不可視の爆弾と、目に見える爆弾に翻弄されるダラーヒム。決して彼が弱い訳ではない。ウォルターの言うように、クラス同士の間には相性の悪さというものがある。


 ダラーヒムが新たなものを作り出そうとする中から、ウォルターの放つ爆弾がそれを破壊する。能力に加え、ウォルターの狡猾さが更に能力を活かしている。


 見える爆弾と見えない爆弾の使用率の塩梅が上手く、どこに見えない爆弾が忍んでいるかが予想でいないのだ。ダラーヒムの錬成速度も大したものだが、やはり後手に回ってしまうようで、一度防御の流れに入ってしまうと、仲間の手助けなしには復帰出来なくなってしまう。


 「確かに相性はあるだろうよ・・・。だが、それならそれでやり方ってもんがあるんよなぁッ!」


 例え攻撃が発動前に摘み取られようと、それはウォルターの行動を制限していることへと繋がる。敵陣へ単独で乗り込んだのが、ウォルターの計画の甘さだろう。ダラーヒムは一人で戦っている訳ではないことを、よく理解した行動をとっている。


 自身が決定打となれないのなら、他の者達のアシストに回る機転の良さを持っている。例えそれが部下のアシストであっても、彼の船団の中では、戦いの中における上下関係や劣等感といったものは持ち込まない。誰しもがエースとなり得るを心情に掲げているチームなのだ。


 そして、ダラーヒムの活躍が徐々に実を成してきた。船の上を自在に動き回るウォルター。そんな彼が突然、膝をガクッと落とし動きを鈍らせた。


 「ッ・・・!?」


 彼の足元は、何か落ちて割れたようにガラスのような破片が散らばり、何かで濡れていた。リヴァイアサンの起こす大波で、船の至る所が海水にさらされ濡れているので、何も不自然ではなかった。


 だが、足元を擦るように動かした時に聞こえる、ガリっとした何かが削れるような音は、それまでの戦闘では無かったものだった。敵と交戦中にそんなことに意識を向ける余裕などない。


 それでも優勢の立場にあり、この戦場からの脱出という目的が目前に迫った中でも、ウォルターはほんの僅かな変化も見落としはしなかった。


 「ウォルターッ!!」


 声のする方を振り向く。そこには長らく仕えた船長の姿があった。裏切り者達による救助船が到着する前に、間に合ったのだ。部下の犯した罪の尻拭いをしに。


 「・・・もう会うこともないと、思っていたんだがな。俺の気遣いが伝わらなかったのかな?船長・・・」


 その視線の先には、息を切らし佇むアンスティスの姿があった。

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