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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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最終確認

 デイヴィスの提案により、ツバキの作り出したガントレットを用いた潜入作戦で計画を実行に移すことにした二人。暫くすると、ロバーツからシン達の船へ通信が入り、準備が整ったという報告が入る。


 計画の実行は、デイヴィス達のタイミングに任せるとの事だ。シンが船の甲板から、双眼鏡で周囲の船の様子を伺う。すると、各々の船の船員が数名、常にこちらの動きを確認しているような様子が見て取れる。


 どうやらロバーツの通達は、完全に協力者達の間に行き渡っているようだ。いよいよ計画が実行される時。二人の胸中は、これまで以上に落ち着かないものになった。


 それは計画への不安や、失敗のことを考えてしまうからだった。キングの実力は、離れたこの位置からでも良く分かる。リヴァイアサンの巨体を容易く持ち上げてしまう程の力が、もし自分達へと向けられたらと思うと、背筋が凍り付きそうになる。


 だがシンの中で、既に決心はついている。ツバキに諭された、この世界における命の在り方。シン達の住む世界とはかけ離れた異世界だが、決して彼らの身体はゲーム上のデータなどではない。ましてやバーチャルなどというものとは、余りにもかけ離れたリアリティ。


 痛みもあれば苦しみもある。間違いなくシン達もここで生きているのだ。デイヴィスやロバーツのように今この時を、この瞬間に命を賭けている。例えデイヴィスをキングの船に送り届けるだけでも、彼らと同じように命を賭して向き合わなければ失礼というものだ。


 「いよいよだな・・・。準備はいいか?シン」


 デイヴィスは落ち着いた様子で、シンに覚悟を問う。彼はシンよりも遥かに重い役割を担っている。それこそ、失敗すれば命はないだろう。キングの首を狙うということは、それが例え成功しようが失敗しようが、組織全体を命を狙われる事になるだろう。


 それでも計画を実行しようとしているのは、真相を突き止めたらデイヴィスは死ぬ覚悟が出来ているということだ。妹が生きていても、手遅れであっても、デイヴィスは命と引き換えにそれを明かそうとしている。


 「あぁ、勿論。アンタをキングの元へ届けるよ・・・」


 シンは自分の言葉に、少し後ろめたさを感じた。命懸けで真実を確かめようとしているデイヴィスを、送り届けるだけで置き去りにしていいものなのだろうかと。


 キングの船に彼を置き去りにするのは、彼らの作戦の一部。デイヴィスはそこで信号弾を撃ち上げる事になるが、ロバーツら含め協力者の到着まで生き残ることなど出来るのだろうか。


 死ぬと分かっていながら、デイヴィスを置いていくことに躊躇してしまわないだろうか。ミアやツクヨを危険に晒さない為にも、シンは彼を残し直ぐにその場を立たなければならない。


 シンの葛藤を察したのか、何かに気づいたデイヴィスはそっと彼の肩に手を乗せ、やるべき事を何よりも厳守するように伝える。それが計画実行に最も大切な事であると。デイヴィスなりの気遣いだった。シンに後ろめたさを感じて欲しくないと、彼も彼でシンの事を心配していた。


 「シン、いいか?計画通りにやれば良いだけだ。余計なことは考えるな?先ずはあの小僧の作ったボードで接近し海中へ潜る。その後、このガントレットでモンスターにアンカーを打ち込んでいき、キングの船付近までいく。到着したらお前の影を通り、船へ潜り込む。そこでガントレットを返すから、お前は来た道を戻るだけだ」


 デイヴィスはシンに、キングの船へ潜入するまでの手順を分かり易く伝える。心が一つの事に集中出来ていない時は、なるべくシンプルに伝える方がいい。集団行動というものに縁が無かったシンは、彼のその気遣いに気づかなかったかもしれないが、何かを分からせようとしてくれているのだけは伝わっていた。


 シンはそこで迷いを捨てる。ただ役割を果たす機械のように、ただ目の前のことを成すだけだと。


 「分かった。俺はアンタを届けて戻る・・・」


 「そうだ、それだけだ。無事に戻れたら、ロバーツの船やアンスティスの船を頼るといい。万が一計画に支障が出た時の為に、各々の船に船員は残していく。キングとシー・ギャングの連中を襲撃するのは、船長らと限られた者達だけだ。きっとお前達の力になってくれる筈だからな」


 「あぁ、そうさせて貰うよ。ありがとう」


 「よし!じゃぁ行くとするか!」


 覚悟を決めた二人は船内へ戻り、ミア達にこれからキングの船へ向かうことを伝える。デイヴィスは彼らに、ここまで連れてきてくれた礼と、見ず知らずの者に親切にしてくれたことを感謝した。そしてボードとガントレットを借りていくことをツバキに伝えると、再び外へと出ていった。


 後のことを任せ、船に乗せてあったボードを海面へ下ろし、遠目に見えるキングの船を目指す。短いようで長かった彼らの計画実行が、いよいよ開始される。

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