奮起する兵、思考する将
再びレールガンに集められるエネルギーが周囲を照らし出すように輝き始める。その光が強くなればなるほど、彼等の士気もまた上がる。強い後ろ盾があると言うのは心に安心感を生む。
レールガンの装填が完了するまで耐えれば、形勢は一気に好転するのだと。海上で戦う者達と、上空で奮戦するリーズとロイクの竜騎士隊達の期待を背負い、遂に砲身にエネルギーが貯まる。
「発射準備、整いました!」
「次で攻撃で雷撃の正体を明かす。そのまま命中するならそれでよし、阻まれるのであればその魔力の発生源を探れ。行くぞ、第二撃目ッ!撃てぇぇぇーッ!」
激しい輝きと共に、周囲一帯に轟音が鳴り響く。同時に、瞬きよりも速い閃光が雲の上を這い回る蟒蛇の身体へ向けて駆け抜ける。一撃目の時と同じく、暗雲の中からレールガンの攻撃に向けて、いくつかの雷が走る。
その雷はレールガンの攻撃を相殺せんと衝突していく。しかし、一撃目の時と違い、今度は前回よりも雷撃の威力と勢いが落ちていない。群がる雷を弾きながら蟒蛇の身体へと向かう雷撃。
丁度狙いを定めていた蟒蛇の身体は、リーズのインキュベータの能力により再生能力と強度を奪われていたものだった。雷に威力を削られながらも、標的に辿り着いたレールガンの雷撃は、その巨体を貫き、まるで高熱で溶かした蚊のように凄まじい風穴を開ける。
鼻をつく焼け焦げたような臭いと、血が蒸発してできた赤黒い煙を上げている。蟒蛇の身体に空いた風穴は、海上でキングが両断した身体とは明らかに再生が遅く、これまでにない程の期待が集まる。
「畳み掛けろぉッ!船長や本隊の奴らの苦労を無駄にするな!ここで全力を尽くせッ!!」
ロイクの号令で、飛翔して戦っていた竜騎士隊がレールガンによって風穴を開けられた蟒蛇の身体の元に集結する。そして各々手にした武器を手に、風穴へ向けて次々に攻撃を仕掛けていく。
ドラゴンの飛行能力で勢いをつけて斬りつける者、武器を投げ放ち体内に突き刺していく者、ドラゴンのブレスと共に魔法を撃ち放つ者など、その手法は様々だが皆の気持ちは一つになっていた。
傷が再生しようとしているのを防ぐように、持ちうる全ての力を尽くす竜騎士隊。そして遠隔で眷族を使い、共に攻撃に参加するリーズの蝙蝠。
雲の中で様々な攻撃による光が幾つも輝く中、蟒蛇に一切休ませる気などないと言わんばかりに、更にレールガンの次弾装填の準備を始めるエイヴリーの戦艦。
今度は、上空の彼等が奮闘し再生を食い止めている間に、更に穴を広げその身体を吹き飛ばしてしまおうという勢いで、甲板を駆け回る船員達。三度目ともなり、それまでの二回とは比べ物にならない程、手際が良くなる。
しかし、エネルギーの充電自体は変わらず時間がかかってしまっているようだった。奮闘する竜騎士隊の声に、自分にも何か出来ないかと手段を模索するヘラルト。
雲海に走る雷の正体を暴く準備をしていたアルマンとエイヴリーは、思わぬ収穫に驚きを隠せずにいた。アルマンのクラススキルにより、雲海で発生している雷の殆どが蟒蛇の身体の周囲で発生していると言うことに気づく。
上空の雲の様子を映したであろうモニターには、熱源と思われる赤い点が幾つも滞在していたのだ。最早自然発生の域を優に超えていたその雷の正体は、蟒蛇が放っているものと見て間違いないだろう。
「海では我々の足を奪い、空ではあらゆる攻撃を妨げる壁となるか・・・」
「これが全て奴によるものなのか?」
「あぁ、如何やら海では波を起こし、雲海では雷を発生させて我々を邪魔するようだ・・・。ただこの反応から、奴自身が雷を発生させているのとは少し違うようだ・・・」
アルマンの指差すモニンターには、蟒蛇の身体らしきシルエットの周りに、赤い点が幾つも点滅しており、波紋のような線を靡かせている。しかし、彼の言う反応の違いとは、その赤い光が自然現象で起こりうる雷の反応と酷似していることにあった。
「つまり、どういうことだ?」
「私の見解だが、奴は如何やら天候をも自在に操れるのかもしれないな・・・。魔力による反応が無いんだよ。まさか・・・あれも幻影だなんてオチはないだろうな・・・?」
最後に不吉なことを言って、視線を合わせる二人。アルマンのその表情からは、とても冗談で言っているようには見えなかった。




