座礁船の宝探し
新たな意気込みもプラスし、勢い立つデイヴィスとシン達。彼の指し示した航路を辿っていると、やがて次なる島が見えて来た。今度はシンプソン海賊団と合流した島よりも小さく見えるが、いくつかの島が連結したような形状をしている。
ミアが双眼鏡で島周辺を索敵するも、船は見当たらない。別の角度からではどうかと、後方から広範囲に展開し索敵をするシンプソンの海賊船を覗く。どうやら彼らも船らしきものは確認出来なかったようで、レンズの向こう側で船員が首を横に振っているのが見える。
少なくとも、別の海賊による襲撃はないだろうと踏んだ一行は、デイヴィスの仲間が居るのであれば残しているであろう目印を探しに、島へと上陸する。引き続き周囲の警戒と、敵襲に備え船を配置するシンプソン海賊団。
島へ上陸するのは、再びシンとデイヴィス。浅瀬へと降り立ち、島を探索する二人。座礁した船の残骸が多く残っており、中には大きく船内を見て回れそうな程のものもある。
島としての規模はそれ程でもないが、細かな探索箇所が多く、共に探していたのでは時間を食ってしまう為、二人は二手に分かれて目印の捜索に当たった。デイヴィス達にしか分からぬ目印故、シンは何か奇妙な物を見つける度に影のスキルでデイヴィスの元に、その物を送って見せた。
レースの先行組に漁られていなかったのか、この島には多くの財宝とアイテムが手付かずの状態で残っていた。だが、目印を探すという目的がある今回に限っては、それがかえって探索の邪魔となっていた。
シンは使えそうな物を集めながら、変わった物はデイヴィスへと送る。しかし、どれが目的の物か分からないシンは、見境なく物を送り続け手に負えなくなった彼は、一度送りつけるのを止めさせ、何処か一箇所へと集めるように伝える。
探索を終えた座礁船の入り口に物品を集め、作業効率を上げた事により探索は捗った。次から次へと調べ上げ、虱潰しに目ぼしい箇所を探していく。最初は二手に分かれて探していた二人だったが、シンの探索が早まった為、デイヴィスは物品の品定めに集中する事にした。
「おいおいおい・・・。こりゃまた数が多いな。ある程度どんな物か言っておくんだったぜぇ・・・」
山のように積み上げられた物品の中から、元デイヴィス海賊団にしか伝わらないメッセージを探す。シンの無意識による、過度な仕事量の押し付けにやれやれといった様子のデイヴィスは、その手間賃代わりに高価そうな財宝を見つけると、いくつかくすねていった。
「日用品ではない物で奇妙な物・・・?やっぱり俺じゃなく、時間がかかってもアイツが探した方が良かったんじゃないか?」
あまりの物の多さに、思わず愚痴を溢しながら手を進めていると、物陰から何かが手を差し伸べシンの腕を掴んだ。突然の感触に、その手を払い退け距離を取る。その一瞬でシンが感じたものは、“人ではない“という感覚だった。
背筋に走る悪寒と共に、その何者とも分からぬものに、返事の返ってこないであろう声をかける。
「なッ・・・何者だッ!」
「ァァァ・・・アァァッ・・・・」
座礁船の中に差し込む外の光に照らされ、シンを掴んだ何者かの姿が照らし出されると、顔のない人形のようなものがヨタヨタと手を伸ばし、シンへと近づいて来ていたのだ。頭部に大きく入ったヒビが、まるで口の裂けた人のように見えた。




