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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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開演を告げる霧笛

 ロロネー側の船から、次々に乗り込んで来るアンデッドや死霊系のモンスター達。足のある者達は現状、然程脅威ではない。ハオランの乗る船に突き刺さった船首部分から、こちらへ順々と向かって来るだけだからだ。


 問題なのは宙に浮く死霊系のモンスター達。地形に関係なく、足場の悪い箇所を飛び越え、一直線にハオランの元へ向かって来る。それは正しく、あの時小舟で見た海賊の亡霊。もし同類だというのならこれらも恐らく、物理的な攻撃が通らないだろう。


 だが、思考を持たないモンスターであれば対処はそれ程むずかしいものではない。剣を手にした亡霊がハオランヘ攻撃を仕掛ける。ロロネーや意思を持った生物とは違い、裏表のない直線的な攻撃ばかり。二体三体と斬りかかって来る亡霊の攻撃を、最小の動きで見事に避けるハオラン。


 そして彼の、反撃の為に握りしめた拳には光が宿り、攻撃を外して隙の出来た亡霊目掛けて強烈な一撃をお見舞いする。しかし、直接拳を当てる訳ではなく、亡霊に触れる寸前のところで拳に急ブレーキをかけるハオラン。


 すると、彼の拳から光だけが勢いそのままに飛び出して行き、亡霊を吹き飛ばす。同じ要領で、両の拳に光を宿すと隙を見つけては次々にその光を、向かって来る亡霊達に打ち込んでいく。


 損壊した船の上で、足場を次々に飛び移り亡霊の対処に当たるハオランだったが、そこへ二隻目の船が彼の乗る船に突き刺さる。船が大きく揺れ、バランスを崩すハオランだったが、自ら邪魔な瓦礫を壊し、船の破片を衝撃波で吹き飛ばしながら、目まぐるしく変わる足場に対応している。


 その傍ら、船首から乗り込んで来ようとする海賊姿のスケルトン達は、船の衝突による揺れで何体か海へと落ちていく。それでもお構いなしに、目的の彼の元を目指して突き進む。下に落ちた者達も、瓦礫を掻き分け、船内を通り抜け、船体を這い上がって行く。


 亡霊の対処に追われるハオランの元へ、遂にスケルトン達が到着し剣を振るう。単騎であれば、彼の実力からして何の問題もない相手なのだが、足場の悪さに加え、別の敵の対処やその人海戦術とでも言わんばかりの、圧倒的兵力がハオランの緊張を高めて行く。


 少し気を緩めれば、これまで積み上げて来たものが一気に崩壊する。多少ダメージは食らっても、痛手は貰えない。攻撃や回避、移動の一つ一つに重みが増してくる。すると、船内からやって来たスケルトンが、立て付けの悪くなった床を突き破り、ハオランの足首を掴む。


 突然移動を阻害されたハオランが、その足首に視線を送っているうちに亡霊が飛びかかる。彼は咄嗟に上半身を後方へ反らし、亡霊の斬撃を避けるとそのままバク転し、掴まれた足を勢い良く上に跳ね上げると、その足首には千切れたスケルトンの腕だけが残っていた。


 「ッ・・・!埒が明かない・・・。奴だけ倒して、とっとと抜けるか・・・」


 次々に衝突して来る船と、モンスター達の猛攻を掻い潜り、周囲を探すハオラン。しかし、何処を見渡せどロロネーの姿が見当たらない。そうしている内にも、モンスターの援軍は絶えずやって来ていた。


 高い所に乗り、周囲を一望しようと周りにある船の瓦礫の中で一番高いマストへと駆け上がって行くハオラン。だが、そこで驚きの光景を彼は目の当たりにすることになる。


 船上の甲板で戦っていた時には気づかなかったが、いつの間にか彼の乗り合わせていた船には、四方八方凡ゆる方向からロロネーの寄越した海賊船が衝突しており、下にはまるでゾンビのように、海賊姿のスケルトン達が群れを成し、亡霊達が縦横無尽に飛び回るという地獄のような光景が広がっていた。


 「なッ・・・!いつの間にこれ程・・・。早急に奴を見つけなくてはッ・・・」


 全てを相手にしている余裕はない。かと言って高い足場を移動すれば、宙を飛び回れる亡霊達の思う壺。辺りの海面には、未だ絶えることなく海賊船が向かって来ている。増援を用意していたにしては、余りにも数が多過ぎる。


 これ程の大軍勢を保有しているのなら、ロロネーについて調べ上げる段階でその数に気付かない筈はない。一体何処にこれだけの数をかくしていたのか。ハオランが先の見えない戦況に焦燥の表情を浮かべていると、何処からともなく、その男の声が聞こえて来た。


 「どうだぁ?驚いただろぉうぅ!?見渡す限りの海賊船、一体どうやって用意したのか気になるだろぉ?冥土の土産に教えてやるよ。・・・つまり・・・こういうこったッ!!」


 男の合図と共に、海面で足場となっている船の残骸が煙のように水蒸気を上げ、濃霧をより一層濃くしながら、徐々にその形を霧の中へと溶け込ませていったのだ。


 「ブルイヤール・コシュマール。霧の悪夢へようこそ・・・」


 ロロネーは帽子を片手に、ショーの前座を盛り上げ、クライマックスへの期待を煽る演者のように深々とお辞儀をした。

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