表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
World of Fantasia  作者: 神代コウ
282/1694

属性による性質の変化

 伸縮自在な水の触手は、複数に別れた少年の身体から無数に伸び、ミアを捕獲しようと迫り来る。直ぐに船外での戦いは不利だと感じた彼女は、扉の金具を銃で撃ち抜き体当たりするかのように、留め具の無くなった扉へ突っ込んで行った。


 「開けた場所じゃ避けきれないッ・・・!何処か身を隠せるところへ・・・」


 彼女を追い詰めるように、形を変えて窓や扉の隙間を潜り抜け、壁や遮蔽物にぶつかろうとお構いなしに向かってくる。物にぶつかって弾けた水の触手は床や壁に飛び散りながらも再び一つに集結すると、まるで生き物のように動き回り、狙った獲物を逃さない。


 船内の一室に飛び込み、息を殺して身を隠すミア。水は部屋の前の廊下を撫で回すように蠢き、彼女の痕跡を探る。まだ確実にミアの位置を確定した訳ではないだろうが、獲物を追うハンターの感か猟犬の嗅覚のようなものか、這い回る水は扉の前で迷うような動きを見せると、彼女のいる部屋へと入っていく。


 追われている時ほど、相手の感が鋭く感じる。ミアの額から汗が流れその表情は固まり、蛇に睨まれた蛙のように身体がその場に固定されてしまう。顔を動かさず、瞳だけで水の動向を伺っていると、徐々にその距離を詰めてきてしまう。


 僅かな水滴で、あれ程皮膚を沸騰させ溶解させていたのだ。あの量の水を全身に浴びたら、その痛みは想像を絶するものだろう。それどころか、原型を保てるかどうかすら怪しいものだ。


 足先にまで迫った水は、ゆっくりとミアの命綱を手繰り寄せる。周囲に生き物の気配でも感じたのか、水はブクブク気泡を立て始め、見るからに甲板で彼女を攻撃した、溶解の性質を彷彿とさせる様子へと変わる。


 再び追われることを覚悟し、この場を離れ走り出そうとした時、近くでガラスの割れるような音が響いた。すると、目前にまで迫っていた水は急に方向を変え、水道に繋がれたホースから勢い良く放射する水のように音のした方へと飛んで行く。


 今の内にと、その場を離れるミアが横目でその水が何をしているのかを見てみると、そこには机から転がり落ちたガラス製のコップをその水の中へと取り込み、徐々に溶かしていく。


 ガラスの破片をまるでバターのように溶かした水は、その一室でミアの姿を失い途方に暮れると、そこ少年の姿へと形を変え、再び立ち尽くしていた。だがそれは彼女の捜索を諦めたのではなく、その場にセンサーの役割を持つ分身体を残していったのだ。


 主に音や振動を察知するタイプのようで、近くにいたミアの心音や息による空気の動きよりも、コップの割れる音や動きに釣られ向かっていったようだ。その隙に、走り抜ける危険を犯す必要の無くなったミアは、音を立てる事なく船内を進む。


 「しかし、どうしたものか・・・。あの手のモンスターは本体を叩かないと、何度も再生されて消耗戦になる。如何にかして本体を見つけないと・・・」


 ミアは船内に潜みながら、彼女を捕らえる為包囲網を張る無数の少年を探し、海賊の亡霊と戦った時と同じく、属性弾による反応の違いを探る。銃声を大きく、直ぐに反撃が飛んでくるのは必死。だが、逃げ回るのにも限界がある。


 本体は分からないが、その性質自体は同じはず。動いている水を見つけては一つずつ属性弾を撃ち込んでいく。しかし、作り込んでいた弾数には限りがある。効果的な属性をいち早く見つけ、短期決戦を仕掛けなければどの道敗北することになる。


 幸い相手は見るからに分かり易い属性をしている為、その時点で幾らか弾の節約は出来そうだった。水に対して有効な属性は雷。そして亡霊にも使っていた凍結弾が有効だろう。ただ、氷属性は弱点というよりも相手の性質を変える為の手段となる。


 最初に見つけた水の塊りに、作り置きしてあった凍結弾を撃ち込む。銃声に反応し、素早い動きでこちらへ向かってきたが、凍結弾に触れた瞬間に凍りついた。


 亡霊の時とは違い、全体を凍らせるほどの効果があり、凍結している時間も亡霊の倍以上はある。その間にバラバラにしようとしたが、直ぐにその場へ他の水の塊がやって来てしまい、再び息を殺した逃走劇に逆戻りしてしまった。


 だが、彼女は最初の逃走で学んでいた。その場を離れる際、ミアは近くにあった食器を拾い、追い詰められたところで手にしていた食器を投げ音を立てたのだ。少年の扱う水の触手は、確かにミアの心音までも感じ取り追ってくるが、それよりも大きな音を立てると、そちらを優先して攻撃しているようだった。


 「なるほど・・・。倒し方は分からないが、対策は分かった」


 氷属性による凍結が効果的であるのは確かだが、凍った水の塊りを砕いたところで、散らばった氷が溶けて水に戻れば再び集結して復元されてしまう。やはり足止め程度にしかならず、根本的な解決には繋がらないようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ