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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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レベルというものの概念

 瑜那の方からシンが送ったWoF産の回復薬の転送を確認したという報告が来ていた。早速アサシンギルドはその回復薬で行える作戦を決行し、アジトの開拓の話が動き始める。


 とはいうものの、シンとミアが寄せ集めた回復薬は最上級の代物という訳ではなく、あくまで店売りの物では効果値の高い方の回復薬に過ぎない。加えてWoFからアイテムを送る際、その品質や効果は劣化してしまうらしい。


 大人びた思考をしている瑜那のこと故に、その返信が社交辞令的な文面である事も考えられるが、開拓に向けて動き出したという発言には虚偽はないだろう。この時ばかりは、宵命の方が本音が口から漏れ出す性格をしている分、分かりやすかったかも知れない。


 そうこうしている内に、ツクヨの退院の手続きが済んだようだ。受付の方からシンとミアの元へと歩いて来る男の姿があった。


「お待たせ。あれ?ツバキとアカリは?」


「待ち切れなくて、暫く施設内を見て回ってくるとよ」


「二人とも力になりたいんだ、きっと。自分じゃどうしようも出来ない壁に直面した時、仲間の助けを目の当たりにすると、自分もそんな仲間達の役に立ちたいって思うから・・・」


 声を掛けづらい雰囲気のシンを見て、思わず顔を見合わせるツクヨとミア。だが二人ともシンの言っていることが分からない訳ではなかった。特にミアは、ここ最近同じようなことを心の内に秘めていた。


 ガンスリンガーというクラスというクラスの事もあり、援護に回ることが多くなるミアは自ら強敵を撃ち倒すという場面が少なくなっていた。しかし彼女の援護はシンにもツクヨにも、目に見えて分かる強力な手助けとなっている。


 今回大活躍を果たしたツクヨだったが、彼の中にあるのはデストロイヤーのクラスが表に出て来た時の記憶があまり無いというのが気掛かりで仕方がなかった。


 ツバキのガジェットのカメラによると、リナムルの地下研究所で拾って来た不思議な力を持つ刀剣。それがどうやら草薙剣と呼ばれる日本神話に登場する有名な宝剣であった事が判明した。


 しかし、今だにツクヨは自分自身の力で草薙剣の能力を扱う事は出来ていない。山の神の体内で無我夢中になっていた彼は、クラスの影響もあり謂わば能力の暴走とも取れる状況だった。


 草薙剣の力をこのままにしていては、いずれ仲間達を危険な目に合わせてしまい兼ねない。強力な力を得た反面、大きな課題も残されていた。


「まぁ今はゆっくり休んで、先の事を考えよう。次の目的地は回帰の山の向こう側なんだよね?」


「あぁ、その事なんだが・・・」


「ん?」


 ゴタゴタしていて話し損ねていた、アクセル達から聞いた山の向こう側の話をシンは二人の前で話した。二人とも初めはあまりにも漠然とした話に困惑した様子だったが、山の神の体内から脱出した時のツクヨくらいの実力がなければ、安心して旅が出来るようなところではないという例が、具体的なイメージを二人に与えた。


「そりゃぁ随分なエリアだな・・・。確かに今のアタシらでは立ち入るのは危険か」


「でもそこを越えないと、目的地のアークシティには辿り着けないんでしょ?どうにか強くなる方法はないの?」


「WoFならレベル上げや装備と準備を整えるって方法があるが・・・」


「準備っつっても限度があるし、そもそも何に備えるのかも分からないんじゃ、買い足しておくアイテムも分からんしなぁ」


「じゃぁそのレベル上げってやつじゃないの?回帰の山のモンスターを相手にレベル上げをするのはどう?山頂付近に集まってたモンスターなら、それなりに手強かったけど?」


 現実的な話なら、ツクヨが言うように今の彼らで倒せる範囲のモンスターを狩りながらクエストをこなして、経験値を稼ぐのが妥当だろう。だがこの世界にやって来てから、そもそもレベル上げといった作業を行なってこなかった一行は、この異変の中にあるWoFの世界でそれが可能なのかも分からなかった。


 これまでの死闘で得た経験は間違いなく彼らの力になってはいるが、目に見えてレベルが上がったという感覚がまだなかったのだ。


 しかし自分のステータス画面を開くと、確かにこの世界にやって来た時よりもレベルは上がっている。ただその表現がなされなかっただけで、能力やステータスは向上している。


「レベルの表記的にはツクヨが一番高いな。いつの間にそんなに上がったんだ?」


「ちょっと待ってよ!君達の見ているそのステータス画面って、どう開くの?」


 ツクヨのキャラクターデータは、そもそも彼の妻である十六夜が作っていたものだった。だがこの世界に飛ばされてからというものの、シンはゲームのWoFのキャラクターで使えていたスキルが使えなくなったり、そもそもレベルが下がった状態でこちらの世界へ飛ばされて来た。それはミアもツクヨも同じはず。


 ならば先にこちらの世界の事を知っていたミアが一番高そうな気もするが、一体何故こちらの世界の事に最も疎いであろうツクヨが一番、レベルが高い状態にあるのか。


 それは今の彼らには知る由もなかった。

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