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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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明かされた現状と今後起こり得る事

 この世界の事を“現実世界”と呼ぶ人達。彼らが暮らすこの星には今、別の世界や時代から多くの人々や魔物、所謂モンスターなどが現実世界へ転移して来ている現象が観測されている。


 しかし、彼らは一般人には目にする事も出来ず触れる事も出来ない為、基本的には無害であるのだが、彼らが起こす現実世界にある物体を巻き込んだ戦闘や抗争は、現実世界では自然災害や事故、原因不明の現象による事件として処理されているようだ。


 彼らのような現実世界以外の世界から来た者達の事を総称して、時代の放浪者という意を込めイーラ・ノマドと呼ばれている。そんな彼らが徒党を組んだ組織の一角が、フィアーズという過激派組織と、アサシンのクラスのイーラ・ノマドが集められたアサシンギルドが、ここ最近の東京を中心として起きている事件の中心人物達だと言われている。


 彼らのようなイーラ・ノマドを肉眼で確認出来る現実世界の者達がいるのだが、その条件の一つがWorld of fantasìaというVRMMOのユーザーである事が確認されている。


 ただ全てのWoFユーザーが無条件でイーラ・ノマドを見ることが出来る訳では無いようだ。あちこちで奇妙な事件や事故が起きるようになってから始めた者や、最近の流行にあやかり始めた者達にはイーラ・ノマドを確認出来ないという現象を確認している。


 オッド曰く、これにはある時点で既にWoFのユーザーであったかどうかが関係しているのではないかという見解が挙げられている。今はまだその“ある時”という境界線はハッキリとは分かっていないが、今からWoFを始めたところで直ぐに彼らを目にする事は出来ないという訳だ。


 そして出雲からの情報提供により、新たな事例の確認と異変が最近のものばかりではないという情報をオッドは掴むことが出来た。彼にとってその情報は仮説の破綻にも繋がってしまったが、より好奇心をそそられる新説として新たな見識を広げるきっかけにもなった。


 それはWoFのユーザーではない者達の中にも、ごく少数ではあるが異変の存在自体に気付いている者達がいる。しかし彼らの感じることの出来る異変の存在は、あくまで霊感にも似た本人にしか見ることが出来ず理解され難いものだったようだ。


 故に異変を感じることが出来ても誰にも相談出来ず、あたかも自分だけがおかしいのだと思う他なかったようだ。そしてそう言った一般人でありながら異変を感じたり、見ることの出来る人間に共通していたもの。


 それは過去に異変によって大切な人を失ったり、自身が死に直面する場面に遭遇し、この世に存在意義を見出せなくなったという思いをした事がある人間しかいなかったのだ。


 だがこれを仮説にするには、オッドの出会った者達だけではあまりにも事例が少な過ぎたようだ。中には異変を感じられるのに、周りに合わせて感じない・見えないフリを貫き通す人間も少なくない。寧ろそうやって自身を偽って生きて来た者達ばかりなのではないかとオッドは言う。


 つまり本当はもっと異変に気付いている人間がいるのではないかと言うのがオッドの見解である。そしてそう言った異変を感じたり見たり出来る、謂わば体質的なものを持った人間に自信を与える道具を用いていたのが出雲だったと言う訳だ。


 彼のドローンには、異変を可視化させるライトが備わっている。これは肉眼では見えないものを可視化させるという光学検査システムが用いられており、指紋や血痕、体液などを可視化させる鑑識や科捜研が用いるALSと言われるライトに非常によく似ている。


 ALSとは、Alternative Light Sourcesの略で励起光源を意味する。


 ALSは赤外線や紫外線、可視光線の出す光の一定数値の周波数をライトのように照射する事で、肉眼では見えないものを可視化するものである。


 こちらの世界に来て様々な知識を蓄えてきたオッドは、出雲が持つドローンの技術を応用することで、より多くの一般人を異変による事件・事故から救うことが出来るようになると説明する。


 例えば、街中にある街灯をハッキングし、例の可視化するライトに切り替えることで今その場で何が起きているのかを目にすることが出来るようになるというものだ。


 何もないところに突発的に起こる現象だったから不可避だったものが、危険が迫っているのが可視化される事により逃げる判断ができる猶予が生まれる。ただ懸念すべき事は、政府がこれらの異変を公に説明するかどうかだ。


 今まで見えなかったものが可視化され、多くの事件や事故を起こしているのだと分かれば、街中がパニックに陥るのは必然。それに目に見える様になったからといって、イーラ・ノマドやモンスター達が一般人に直接被害を与えられるかと言われれば、まだ疑問が残る。


 以前に話に上がった、一般人の肉体にイーラ・ノマド自身のデータ情報を投影する事により受肉すると言った方法がある為、この世界に肉体を持たないイーラ・ノマドやモンスター達が異変を目にすることが出来ない一般人には直接的に触れる事は出来ない可能性は高い。


 ただ投影や受肉といった行いが横行する様になれば、被害は今の比では収まらないだろう。一般人が肉体を乗っ取られ、無自覚の内に犯罪者にされるという事が日常的に起こり得るという事だ。


 出雲のドローンの解析にはまだ時間が掛かる。その間にこの現実世界に起きている事や、様々な者達の存在、その名称など知りうる情報の中から出雲の求める答えを選別し話してきたオッド。


 彼の話を聞き、少しは信用するに値する信頼を築き始めた出雲は、改めて協力を申し出てくるオッドに何故か迷った表情を浮かべていた。


(さて、一体”どちらに“組みするべきか・・・)


「出雲さん?」


 実はこの時、出雲は以前から別の者達からも協力を仰がれていた。どちらの話にも信用に値する情報はあった。それに内容には重なる部分もあり、双方の証言が偽りではない事は理解できた。


 ただ違いで言うのであれば、それは双方の話し手による印象だけだった。

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