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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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現実世界での出来事

 回帰の山で取れる光脈に精気を帯びた植物や木の実などを採取しに来ていたミアとアカリは、ギルドの隊員達が安全を確保した場所で見た事もない植物とその効能に驚かされながらも採取を行っていた。


 そこにシンからのメッセージを受け取ったミアが腰を上げて立ち上がり、その場でじっとしたまま動かなくなるのを見たアカリが、何かあったのかと彼女に歩み寄る。


「どうかしたんですか?ミアさん」


「ん?あぁ、シンから連絡が来ていてな」


 振り返ったミアの目に、夢中になった採取をしていたのだろう。土に汚れた顔と服に様々な種類の花や葉っぱを付けたアカリの姿が映り込む。シンのメッセージを確認しながら彼女の身体についた葉っぱを払うミアに、漸く自分の身体が酷い有様になっているのを知り、顔を赤くして恥ずかしそうに全身を払い始めるアカリ。


「やだッ!いつの間に!?」


「随分と夢中になってたみたいだな」


「シンさんからは何て連絡が?」


「あぁ・・・、ちょっとギルドの依頼で街を離れるらしい」


 シンが現実世界へ戻るという事を説明出来ないミアは、咄嗟に考えた嘘としてギルドが日頃から行なっている、街の外での依頼を手伝う事になったとしてアカリに説明した。


「そうなんですね。危ない依頼じゃなければいいんですけど・・・」


「まぁ余所者の冒険者でも受けられる依頼だ。そんなに危険なものではないだろうさ」


「ミアさんがいうのでしたら安心ですね!」


 真っ直ぐな目を向けるアカリに合わせる顔がなかったミアは、思わず顔を背けながら嘘に嘘を重ねてしまう。しかしこれはあくまでアカリを不安にさせない為の嘘であり、今のアカリの向上心を邪魔してはいけないと、後でギルドに口裏合わせをしなければと思うミアだった。


 場面はミアの返信を待っていたシンの方へと戻り、彼女からの承諾と了解の返信が届く。そこにはギルドの依頼で街の外へ行っている事になっているという、口裏合わせの内容も添えられていた。


「流石ミアだな、後でちゃんとお礼をしないと・・・」


 転移の準備が整ったシンは、瑜那に現実世界へと戻れる事になった事を伝え、今から戻ると返信を送るのだが、直ぐに向こう側から少し待って欲しいというメッセージが送られてくる。


 どうしたのかとシンが問うと、どうやら現実世界側からシンが転移してくる場所を指定できる様になったらしく、その準備をしているのだという。これまで現実の世界へ戻る時は、WoFの世界へ転移した場所が帰る場所となっていた。


 前回の転移が何処からだったのか、こちらでの出来事も色々あった事から忘れてしまっていたシンにとっては、仲間達の元へ直接転移出来るのはありがたい事だった。


 散り散りになったアサシンギルドの仲間達が再集結し、新たな協力者を得て技術力が向上していく事で、この先も色々と便利な機能が追加されていくのかも知れない。


 そんな事を思いながら、瑜那から転移場所の指定の準備が整ったという返信が来た事で、いよいよ久々となる現実世界へと転移を始めるシン。視界の端からメニューを開き、WoFの世界からログアウトする。


 身体がデジタルの情報へと変化し、光の粒子となって消えていく。光に包まれたシンは、情報が流れる通路を経由して瑜那達によって用意された出口である転送先へと運ばれ、現実の世界に自身の肉体を顕現する。


 シンが目を覚ましたのは、何処かの薄暗い部屋の中だった。モニターの明かりに照らされ辛うじて見える天井を眺めながら、ゆっくりとその視界を周囲へと向ける。


 するとそこには、双子のアサシンである瑜那と宵命、そしてアサシンギルドをまとめていた白獅の姿と、もう一人見慣れない老人の様な人物が彼の後ろに立っていた。


「おい!目ぇ覚ましたみたいだぜ?」


「気分はどうですか?シンさん」


 いち早くシンの転移と目覚めに気がついた双子。瑜那の問いに問題ないと答えたシンは、上体を起こして身体を動かしてみる。腕や足、首などを確かめる様に動かしていくシンの身体は、何の変哲もない人間そのものの性質を持っていた。


「白獅・・・良かった、アンタも合流出来たんだな。一体何があったんだ?」


「話せば長くなるんだがな。まず俺達を襲撃したのは、お前が潜入していた“フィアーズ”という組織だった」


「フィアーズッ・・・!?」


 咄嗟にシンの脳裏に過ったのは、WoFでも類を見ない不可思議な能力を持つ幹部の姿だった。その中でも特にシンの印象に残っているのは、シンがフィアーズに加入するきっかけとなった、同じくWoFのユーザーであったイヅツを殺したとされるスペクターの姿だった。


 彼らが何の目的でアサシンギルドを襲撃し始めたのかは分からないが、組織の規模的には圧倒的にアサシン側が不利であったのは、シンの目にも明らかだった。


「やはり調査に向かったのが仇になったようだ。彼らは既にこちらの動きを悟っていた様だ。その上であえて我々を泳がし目的を探ろうとしていたのかも知れない・・・」


 辛うじて追手を退けた面々は、それぞれ嘗て拠点にしていたアサシンギルドへと足を運び、生き残りの仲間を探しながら本拠地を目指したらしい。


 だが彼らが追手に追われている事を聞いていた白獅は、あえてアサシンギルドのメンバー達に別の拠点を本拠地として伝えるという機転を利かせており、集まった者達から順々に本拠地へと転移させたらしい。


 しかし、それでも全員を転移させるには至らず、間に合わなかった者達や、押し寄せる追手を足止めしていた面々については、未だその生死は不明のままなのだと彼は語った。

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