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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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各々の行動と異世界からのメッセージ

 シン達の検査は一日で済むようなもので、その日回帰の山から帰還した者達の殆どは、何も問題なく医療施設を後にした。しかし状況から見て、特に精神汚染の可能性が危惧されていた山の神に飲まれた三名については、もう暫く安静にしている事と精密検査が余儀なくされた。


 ツクヨがギルドの医療施設預かりになった事で、数日の間ハインドの街に滞在する事となった一行は、恒例となった各々の時間を過ごす事になる。


 ツバキは相変わらず街のジャンク品が置いてある店を探し、新たなガジェットの作成に取り組んでいた。如何やら今回の一件で新たなアイデアが浮かんだらしく、ケヴィンから貰った蜘蛛の形をしたカメラや、それを元にして作り上げた空飛ぶカメラを分解し、機能の拡張を図っていた。


 アカリも新たな調合薬に使えそうな素材を求め、ミアと共に様々な店を巡っていると、先日から行われていた回帰の山の調査が進み、中腹付近までの立ち入りが解放されたのだそうだ。


 強い生命エネルギーを帯びた植物が多く生息する回帰の山は、植物学者や調合師からしたら宝の山とも言える。リナムルで得た植物学の知識が彼女の好奇心を刺激したのか、或いは自分よりも幼いツバキが仲間達の力になっているところや、紅葉の成長を目の当たりにして、自分も皆の役に立ちたいと思ったからか。


 珍しく積極的になるアカリを連れて、ミアはギルドの調査隊らと共に山に入り、植物の採取を行っていた。ミアにとっても、アカリに着いて行く事にはメリットがあった。


 というのも、彼女の扱う特殊な弾丸は調合によって生み出される物であり、生命エネルギーが多く含まれているという事は、普通では手に入らない調合素材が手に入る。


 つまり、新たな弾薬の素材集めの目的も含まれていたのだ。


 紅葉に至っては、回帰の山に元から漂う自然の流れで周囲に発生していた光脈の精気を浴びる事によって、身体の傷や疲労の回復を早め生物としての本能を活性化させる事で、今までよりも戦闘形態に入る際のデメリットを軽減出来るように進化していた。


 アカリとミアが、それぞれのクラススキルや能力を拡張し、多岐に渡る選択肢を得ているのに対し、紅葉は生物としての肉体強化や性能の向上を行っていたとも考えられる。


 要は皆、パワーアップ、アップグレードしていたのだ。彼らに倣いシンも旅の準備に向け、様々な武具の調達と投擲に使えそうな武器などを考案していた。


 ただ彼の場合、他に参考となる物や文献などが無く、思っていた以上に皆に比べて成長が行き詰まってしまっていたのだ。本人もそれを自覚しているようで、何とかツクヨやミアに置いていかれないようにレベルアップしようと必死だった。


 そんな焦りを密かに感じていたシンの元に、以前現実世界へ戻った際にアサシンギルドの双子である瑜那と宵命によって授けられた、新たな通信機能に何やらメッセージが届いていたのに気がつく。


「瑜那達からメッセージが来てる。山の一件で気が付かなかったのか・・・?」


 通常、WoFのゲーム内にあるメッセージ機能には、メッセージが届いたことを知らせる通知機能が備わっている。それは今までのシンやミア達のやり取りでも確認している。


 だが、瑜那と宵命らが新たにシンに施した通信機能は、他の者に盗み見られたり傍受されない為の工夫が施された為か、通知機能が施されていなかったのだ。


「受信した時間的にだいぶ前だな・・・。緊急の連絡じゃなければ良いんだが」


 現実世界では、アサシンギルドが何者かに襲撃されメンバー達がちりじりになってしまっている。そしてシンがスパイという形で加入している組織、フィアーズの方では神奈川セントラルシティの一件で仲を深めたにぃな達、シンと同じWoFのユーザー達が別世界へ転移出来るという特異な性質を持っている事から、兵士のように各地へ飛ばされたりこちらの世界の調査に向かわされている。


 フィアーズの不穏な動きや、その他にもアサシンギルドの存在を知る別の勢力の存在を危惧しながら、皆の無事を祈り瑜那からのメッセージを開くシン。そこには行方不明になっていたアサシンギルドのメンバーの何人かと合流出来たこと。


 更には、フィアーズの幹部達が言っていたWoF以外の世界線から現実世界に転移して来た時代の放浪者達、“イーラ・ノマド”が協力者としてアサシンギルドに加入したという報告があった。


 だがこのイーラ・ノマドというのが、神奈川で悪事を働いていた凶悪な存在で、アイドルであるユッキーこと“岡垣友紀”のライブ会場を襲撃していた“イル”と言う人物も、そのイーラ・ノマドだったのだ。


 イルはシン達の活躍によって消滅していったが、そんな異世界からの放浪者である未知の存在、イーラ・ノマドを仲間に迎え入れてしまっても大丈夫なのだろうか。


 そんな事を思いながらも、取り敢えずは緊急の呼び出しではなかった事に安堵するシン。そのメッセージには時間があったら一度顔を出して欲しいと添えられており、丁度ツクヨの回復と検査結果を待っている今こそ顔を出せるタイミングだということで、別行動をとっていたミアに現実世界の様子を見に行きたいというメッセージを送り返事を待った。

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