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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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帰還直後の一行

「すまないな。本来であれば、君達の活躍はこのハインドの街にとって大きな功績となった筈なんだが・・・」


 回帰の山から帰還した後、一行は街の医療施設で検査を受けた。初めにも説明があった通り、光脈の精気の影響で精神に異常をきたしている可能性があるからだ。


 アクセルらの計らいにより、より精密な検査を勧められたシン達はツクヨの容態の回復も待ちながら、山越えの機会の為に体調を整える事にした。


 回帰の山の状態は、一行が街に到着する頃にはその大半を覆っていた濃霧も晴れ、街で待機していた別のギルドの隊員達によって調査が進められているようだ。ただ、実際に山に入っていた者達の言う現象の全てが、全くと言っていい程見受けられなかったようだ。


「そこで役に立ったのが君のこの機械だ。我々の証言を裏付けるような映像が残されている。それに写っている物も、回帰の山の特徴と言って差し支えないだろう」


 ライノがギルドとの架け橋になってくれたお陰で、余所者であるシン達やアクセルらの発言の信憑性や、山に何かしたのではないかという疑いも持たれる事なく聴取を終える事ができた。


「しかし肝心の、山の神と思われる影については信用してもらえないだろうがな」


「そりゃぁそうだろ。俺達だって今だに信じられねぇんだからよ。あんな馬鹿でかいモンが空から降りて来てたなんて、見てもいねぇ連中に信じてもらう方が難しいだろう」


 ツバキのガジェットを使って撮影された映像は、回帰の山の謎を解き明かす為の大きな手掛かりとなった。例えそれが山の神と信じられなくとも、その映像に残された巨大な白い壁と赫い眼は、他に例えようのない事実として記録に残った。


 アクセルとケネトの会話にもある通り、街に居た者達や霧の中で山頂方面の出来事について知らないシン達のような先に避難していた者達を信用させるのは難しかった。


「そこでツバキ君に頼みたい事がある。是非ともこのガジェットを我々に提供して貰えないだろうか。この映像があれば、今後我々に調査にも・・・」


 何とかしてツバキを説得しようと試みるライノだったが、ツバキの返事は既に決まっていた。


「あぁ、別に構わないぜ」


「え・・・?」


「カメラ自体は前に街で貰った物だが、構造自体はもう分かってる。部品さえ揃えばまたいくらでも作れるから、試作品のそいつはもう俺には必要ないからよ」


 あっさりと重要な映像記録を入手できた事に、キョトンとした表情を浮かべるライノ。そもそもシン達一行は彼との接点がほぼ無かった。ライノの方は、ギルドを通じて他所から来た冒険者一行がいるという事は知っていたが、実際に会って話すのは初めてだった。


 故に彼らがどんな人間であるか分からず、貴重な機械を譲って貰う為、なるべく下手に出ようとライノもツバキに接して、話を進めていたからだ。だが思わぬ形で貴重な品を入手する事に成功したライノは、ツバキからアクセルの撮影した山の神の存在についての状況証拠と参考データを受け取り、ギルドの解析班へと手渡した。


「すっすまない。まさかこれ程あっさり提供して貰えるとは思わなかったもので。直ぐに私も解析班に同行しなければならないのだが・・・」


「構わねぇよ、コイツらには俺らが付いてるし、それに他のギルドの連中も居んだろ?」


 アクセルとケネトは、ギルドに来た依頼をこなすハインドの街専属の冒険者として街に滞在していた。その功績もありギルドからの信頼は厚かった。特にライノは、ギルド内で自由に動けない事もあり、調査隊との関係修復の為に特別な依頼を任せていたらしい。


 故にライノが二人に寄せる信頼は、ギルドの隊員達よりも高かったのかも知れない。


「恩に着る。ここの治療費や宿泊費については、私からギルドの方に請求しておくから、出発までの間は自由に過ごしてくれて構わない。アクセルとケネトも、今回の件はお手柄だった。何か要望があれば言ってくれ。私で力になれる事があれば何でもしよう」


「へへっ、そいつぁ良い。元気になったらゆっくり考えさせてもらおう」


「言っておくが、限度はあるからな?」


「いいから早く行けって!部下が待ってんだろ?」


 アクセルと親しげに話した後、病室の外へと向かうライノ。するとケネトが自分も映像の解析に同行したいとライノに伝える。彼も今回の一件での立役者でもあることから、ライノは彼の同行を許可し共にガジェットに記録された映像の解析へと向かった。


「研究熱心な相方だな」


「なぁに、俺も元気ならアイツと同じことをしてたさ」


「アクセルも解析に?でも映像だけでは、山の神の存在を解き明かす事なんて出来ないだろ」


 街の人達が永きに渡り回帰の山の謎を解き明かそうとしているのは、シン達もこれまで街で話した人々の話からも知っていた。当然、ハインドの街を拠点に活動しているアクセルがそれに興味があるのも頷ける。


 しかし、本当にアクセルらが調べたかったのはそこではなかったのだ。


「そうじゃない。あの映像にはもしかしたら、山で俺やツクヨが見たあの“黒衣の男”が映ってるかも知れない・・・」


「ッ!?」


 回帰の山から帰還後、ごたついていた事もありろくに話も出来ていなかった一行は、そこで初めてミネの救出に向かったツクヨとアクセルが、道中で黒衣の男に遭遇した話を知る。

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