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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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黒衣の男の狙い

 空中戦と言うには余りにも短く濃密な一瞬。黒衣の男が刀を鞘に納めたと同時に、アクセルが引っ張り出した男の魂が両断され、元の持ち主の身体へと戻っていく。


 目視出来ぬ瞬足の剣技に、アクセルの能力は解除され引っ張られていた彼の身体が宙で勢いを失う。そして無防備になったアクセルの身体に、時間差で切り傷が刻まれていき、全ての切り傷が刻まれたところで一気に傷が開いた。


 全身の切り傷から派手に血を吹き出したアクセルは、まるで濃霧の中に打ち上げられた花火のように散り、地面に向かって落下を始める。


「なッ・・・に・・・!?」


「アクセルッ!!」


 地上で彼の勇姿を見送ったケネトが、思わず声を上げる。


「そうか、もう一人いたのか。運の良い奴め・・・だがこれでもう邪魔には入れまい」


 哀れむような視線を散り行くアクセルに送る黒衣の男は、そのまま空中に構えられた何かの装置のような物の中心部へと戻っていく。


 落下するアクセルを受け止めるべく走り出したケネトは、邪魔な草木を燃え広がらない炎で焼いて道を開く。そしてアクセルが森の高さに到達しようかとしたところで、道中の木々を駆け上がり血だらけのアクセルを見事にキャッチした。


「アクセルッ!!しっかりしろ!」


「あっ・・・あぁ」


 ケネトの呼び掛けに、意外にも直ぐに応えるアクセル。どうやら派手にやられたように見えたが、見た目以上に深傷ではなかったらしい。思いの外元気に返事をするアクセルに、思わず安堵の溜息を漏らすケネト。


「良かった、意識はあるようだな」


「派手にやられたが、その実・・・傷は浅いみたいだ。野朗・・・また手ぇ抜きやがったんだッ・・・!」


「また?」


 アクセルはケネトに、ツクヨを追って山を登って行った先で、先程の黒衣の男との戦闘になった事を話し始める。あの男は彼らの知る黒い衣の恩人ではなかった事を確認した後に戦闘が始まり、圧倒的な力によってアクセルは何度も死の淵まで追いやられた。


 だがその度に黒衣の男は、そんなダメージをも直ぐに回復してしまうような特殊な回復薬をアクセルに浴びせ、何度も起き上がらせては瀕死に追い込んだ。


「何だそりゃ?何の目的があってそんな事を・・・?」


 アクセルを空中でキャッチしたケネトは、彼の身体の傷を治癒しながら森の中を落下していき、無事には地面に降り立つ。そして近くの大木にアクセルの身体を預けると、治癒の魔法に総力を注ぎ、アクセルの話に耳を傾ける。


「さぁな・・・。だが奴は俺で何かの予行練習をすると言っていた」


「それがあの上空にある物と関係がある・・・?」


「あぁ、恐らくな。アレの向いてる方向から、多分あの馬鹿でかい白い何かに奴の目的のものがあるんだろう」


 森の中に落ちてしまった二人には、上空の黒衣の男も巨大な白い壁も確認出来ない場所まで移動してしまったが、どうやら黒衣の男も彼らに追撃をする気はないようだった。


「あの壁が何なのかは分からねぇが、山頂への道を阻むように落ちて来たって事は、あれが神饌の儀ってのに関係してるのは間違いねぇ。そしてあの男は、少なくとも俺らよりもその儀式の事について知っているに違いない・・・」


「なら、あの壁の向こうにミネやツクヨ達が居る筈だ。だがあの男は一体何をしようってんだ・・・?」


 多くの疑問を抱えたまま、二人は一先ずアクセルの回復を待ち、黒衣の男の動きと突然空から落ちて来た大穴、そして山頂への道を塞ぐ巨大な白い壁の動向を伺いながら、隙を見てその謎を解き明かす糸口を探す目論みを企てる二人。


 一方、何かを企んでいる様子の黒衣の男は、上空で不可思議な装置を展開し空から神饌の儀式の為に降りて来た山の神に何かを仕掛けようとしていた。否、何かを彼から仕掛けるのではなく、何かを“待ち構えている”と言うのが正しい。


「すっげぇ生物反応・・・。あんなところからたった一人の人間を見つけるとか、正気じゃないね。けど・・・一つだけ力を溜め込んでる反応がある。多分これが・・・。あのソウル男の頑張りのおかげだねぇ、感謝してるよ」


 アクセルらが上空に見た細長く黒い大きな装置。それは一本一本が大きな鞘に入った刀のようだった。四本の刀が黒衣の男を中心に、四方向それぞれ斜めに伸びている。


 その四本の刀は黒衣の男の動きによって、呼応するように僅かに向きを変えている。


「ん・・・?何か急に動きが早くなったな。下に降りて来てる・・・誰かと一緒なのか?じゃなきゃ、“人の身”であんなところ降るの不可能だろ・・・」


 黒衣の男が狙っている反応は、大穴の中を吸引力に逆らい通常の速度で落下している。それはありえない事だった。巨大な岩壁や瓦礫が吸い込まれている中を、人程の軽さで落下出来ている事が異常な事態だった。

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