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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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消えた者、巻き込まれた者

 何故か執拗にツクヨを襲って来る大型の四足獣。ミネが山のヌシの役割から解放され、自我を取り戻すまでは何が起こるか分からないような危険な真似は出来ない。


 次々に足場を飛び移りながらモンスターの猛攻を躱していくツクヨだったが、彼を狙うモンスターはその一体だけではなかった。背後からの気配を感じたツクヨは、空中で体勢を変えると彼に向けて差し向けられた投石を見事に避けて見せた。


 回避の際、投げられた大きな岩に手を付きながら周囲の状況とミネの様子を確認するツクヨ。このままの軌道では岩がミネの方に飛んで行ってしまうと先の展開を予想した彼は、そのまま岩に向かって手を押し込み勢い良く弾いて、自らの身体も後退させた。


 岩の軌道を変えた事により、最初にツクヨを襲って来た四足獣の方へと飛んで行く。だがその程度で大型モンスターの追跡を振り払える事もなく、四足獣は自身に差し向けられた大岩を砕いた後も計算していたかのように、ツクヨの避けた方へ破片が飛んで行くように粉砕した。


 弾丸のように飛んで来る砕けた岩の破片を、今度は刀を使って細かく刻み上手く軌道を変えてやる過ごした。向かって来るものが生物でなければ存分に力を振るえるのだがと感じるツクヨの視界に、禍々しい黒炎のオーラが横切る。


 無機質な岩の破片を斬っただけでも、リナムルで拾った刀はその力を蓄えていく。その様子を目の当たりにしてツクヨも、刀が何か物質を斬る事で力を蓄えているのではない事を察する。


 するとここでツクヨの予期せぬアクシデントが起こる。先程の斬り伏せた岩の破片が、もう一体の方のモンスターに命中し、力無く上空へとその身体は運ばれて行った。


「しまった!そこまでケア出来なかったかッ・・・!」


 直ぐに周囲の状況とミネの様子を確認しに向かうツクヨ。モンスターとの戦闘によりだいぶミネとの距離が離れてしまい、急ぎ瓦礫を足場にして彼のいる方向へと向かうツクヨだったが、そんなツクヨの前に最初に襲い掛かってきた四足獣が行く手を阻む。


「ちょっと!急に前に出てきたらッ・・・!」


「ゥォォォオオオオオッ!!」


 薙ぎ払うように振り抜いた大きな腕を、ツクヨは鞘に納めた刀を当て身のように使い空中で体勢を変える。そしてモンスターの腕を足場に別の瓦礫へと飛び移ると、その巨体を飛び越えミネの見える位置までやって来る。


 しかし、先程までそこに居たはずのミネの姿が何処にも見当たらなくなっていた。四足獣が彼の行く手を阻む前までは、遠いながらも確かにその存在は肉眼でも確認出来ていた。


「そんなッ・・・!さっきまで確かに・・・」


 ミネを見失ったツクヨは急ぎ布都御魂剣を手にして瞼を閉じる。創造の光景の中で周囲の生物の気配を探るも、そこにミネの気配は感じない。それどころか、今まで光脈の精気を吸い上げ、大穴の奥へと送り込んでいた精気の流れ自体がこれまでと変わっていたのだ。


 回帰の山のある下方から巻き上げられていた精気は、ミネのいる位置を境に僅かに緩やかな流れへと変わって大穴の奥へと流れていた。それが今では一定の勢いで流れている。そこに境目などなく、中継地点が綺麗に無くなっていたのだ。


「一瞬のうちに消えるとかあり!?いや、神饌の儀式が粗方済んだら山の神とやらに吸収されるのだとしたら・・・有り得なくもないのか?」


 不測の事態が起きても、ツクヨは思っていたよりも冷静でいられた。それはミネの覚悟を信じていたことや、これまでの経験が動揺しても何もプラスに働かないこと、展開が変わったのなら自分が何をすべきなのかを見極める、精神的な主柱が出来上がっていたのだろう。


 ミネは必ず近くにいる。そう信じてツクヨは、目の前に差し迫る邪魔者の排除に注力を注ぐ。しかし、そんな彼の決意を折らんとするかの如く、ツクヨと四足獣の周りには、続々と自我を取り戻したモンスターや生物達が、各々の動きを取り始める。


 大穴の内部にて、ツクヨのいる場所とは離れたところで神饌の儀式に巻き込まれた人物が居た。その男は空から迫る大穴に意識を奪われ、暫くの間精気を纏った生物達と同様に自我を失ったまま上空へと吸い上げられていた。


 運良く瓦礫に巻き込まれることなく無傷のまま吸い上げられていた彼は、その途中で目を覚ますと、自身が大空洞の中で落ちているのか上がっているのかも分からぬ状態で、宙を舞っている事に気がつく。


「ここは一体・・・。そういえば空から大きな穴が・・・よもやアレが神饌の儀式というやつか!?」


 男はギルドの制服を身に纏い、旧友であるミネを追って回帰の山を登っていたライノだった。広範囲に渡る大穴の落下は、山頂に居たツクヨだけでなく山頂を目指していた者達をも巻き込んで、回帰の山を喰らっていたのだ。

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