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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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臨時の捜索隊

 早速ギルドへ向かった一行は、そこで何やら落ち着かない様子の隊員を目にする。アクセルがどうしたのかと尋ねると、初め彼らが山から戻させるようにと説得していた者達が、回帰の山から戻らないのだと言う。


「遅れているだけと言う可能性は?」


「分からない・・・。ただ常々山へ入る際は、定めた時間より早く帰って来るようにと伝えてある。これまでもその掟が殆どそれが破られた事はない」


「殆ど・・・例外はあったって事だな?」


 アクセルの問いに険しい表情で首を縦に振るギルドの隊員。やはりアクセルらが危惧していた通りの展開になった。だが状況はアクセルらが説得に来た時よりも悪くなっている。その一つが、調査隊のミネとカガリが居なくなったということだ。


 一通りギルドの状況を聞いた後、アクセルはミネ達が居なくなった事をギルドに報告した。だがこちらもハッキリとした失踪という訳ではない。元々調査隊であった二人は、稀に時間帯に関係なく街を出て行く事もあったらしい。


「何で良くない出来事いうのは重なるんだ・・・」


「ミネ達は山へ入ったと思って間違い無いだろう。だが何故精気が降りて来ている時に?いや、だからか!彼らも何か山の異変に気がついたのかも知れない」


 何とかして山に入った二人を追えないかとギルドの隊員に相談するアクセル。その隊員も一人では決められないとして、一度上層部へと掛け合ってくれる事となった。


 返事を待つ間、ミネ達の目的についてアクセルらの考えを聞くシンとツクヨ。回帰の山と呼ばれる北の山を中心にギルドの依頼をこなしてきたアクセルとケネトは、それなりに山の事にも詳しくなっていたと自負している。


 そんな彼らが山の様子がおかしいと感じたのなら、その専門家である調査隊のミネとカガリが山の異変に気が付かないはずがないだろうというのが、アクセルらの考えだった。


 異変を察したミネは、昨日のうちに動き出し山へと向かった。その様子はシン達の仲間であるミアとアカリが目撃している為、信憑性がより強まる。カガリについては目撃情報が得られなかった為わからないが、恐らくミネの跡を追ったのか、或いは山で落ち合う手筈になっていたのか。


 暫く二人の話を聞いていると、ギルドの隊員がやって来て山の麓までという条件で数人の隊員を向かわせる許可が降りたらしい。アクセルらはこれ以上被害を出さない為に安全第一で、無茶をしない事を条件に三人のギルドの隊員を連れて、夜の山へと向かう事にした。


「アンタ達はどうする?夜の山は彼らも言っていたように危険だ。経験者からしたらオススメはしないが・・・」


 ケネトの誘いに、シンとツクヨは顔を見合わせて頷くと、その誘いを受ける事にした。それというのも、いくら明るいうちに山に入る予定だからといって、未知なる山にミアやアカリ達のような女子供を危険な場所に踏み入らせるのは気が引ける。


 それなら先に下調べの下調べを、山に詳しい者達らと一緒に済ませておこうと思ったからだった。ミア達にはもう少し時間が掛かると報告を入れ、帰りが遅くなるかも知れないから先に寝ててくれと、ツバキのガジェットを使わずWoFユーザーのメッセージ機能で連絡を入れた。


 事情を隠そうとしたシンとツクヨだったが、ミアにはその思惑はバレてしまっていた。


「遅くなる・・・だぁ?ったく、シンとツクヨの奴、絶対ミネを探しに行く気だろ。いくらギルドの連中とアイツらが一緒だからって、夜に山に入って平気なのか・・・?」


 曇った表情で窓の外を眺めるミアの様子を見て、何かを察したのか心配したのかツバキが声を掛ける。


「どうしたんだ?シン達から何か連絡でもあったのか?」


 ツバキにも分かるほど表情に出てしまっていたかと反省するミアは、なんて説明したものかと迷い、咄嗟にシンのメッセージをそのまま彼に伝えた。


「え?・・・あぁ、ちょっと帰りが遅れるかも知れないってさ。待ってないで、明日に備えて寝ててくれってさ」


「ふ〜ん・・・了解」


「?」


 妙に素直なツバキの様子に、不気味な現象を体験したかのような寒気がしたミアだったが、これ以上何かを言って深掘りされても面倒だと、その場では彼の質問に答えるだけに留まった。


 準備を整えて山へと向かった一行は、麓で灯りを焚き帰りの目印を建てると、約束通りギルドの隊員らを麓で待機させて、アクセルとケネト、そしてシンとツクヨが一緒に夜の山へと入って行った。


 昼間に訪れた山とは全く違い、周囲は真っ暗で数歩先ですら灯りで照らさなければ見ることすら出来ない。慎重に進みながら一合目の目印となる場所へとやって来る四人。この時点ではまだ精気を感じる事は出来なかった。


「結構歩いたように感じるけど、まだ一合目なんだね・・・」


「視界が悪いから進行速度も遅くなる。緊張感や歩数の増加で、昼間よりも疲労が溜まりやすいんだ。勿論実際はそれだけではないんだけど・・・」


「と、言うと?」


 ツクヨとケネトの会話に入って来たアクセルが、何故夜の山には入ってはいけないのかについて、身をもって知ったところで語りを入れる。


「夜は夜行性の生き物達が活発になる。となると、山のヌシもまた活発になってもおかしくない。山のヌシというのは、山が決めるものであって、我々には決定権もなければ拒否権もない。基本的には生命体として優れた者がヌシとして選ばれるが、そこに法則性はなく、見るからに大きな個体の鹿や猪がヌシになったという記録もあれば、小鳥や小動物のリスがヌシになったという記録もある。勿論、人間がヌシになる事だってあるだろう」


「どうやってその山のヌシを見極めるんだ?そもそも人間がヌシになったという例はあるのか?」


「見た目で分かる場合もあれば、そうでない場合もある。人間がヌシになったという事例は俺の知る限りでは無いが、可能性としては無くも無いだろう。けどその場合、人間は感情があるから直ぐに様子が変だと分かるだろう。他の生物に比べて極めて判別しやすい種と言える」


「そんな分かりやすい人間のヌシが記録にないって事は・・・」


「あぁ、恐らくだが人間は殆どヌシの選別に含まれないんだろうな」


 だからと言ってあり得ない事だと安心してはいけない。そもそもヌシとはどうやって山によって選ばれるのか。嘗ての調査隊が残した記録には、山に誘われるように光脈をより強く感じる場所へと向かい、そこで光脈の流れの一部となりヌシになるのだと記されている。


「何とも昔話のような話だ。だがその瞬間なんて誰も見た事はないんだろう」


 まるで言い伝えや、神話のような話だった。信憑性に欠けるような話だが、実際にヌシの齎す精気の流れというものは存在して観測されていることから、あながち間違っていないのではとされている。


 ヌシは同時に二体以上存在せず、先代のヌシが役目を終え、山の光脈の一部となって消えた後に、山を潤す柱として新たな主へとその役割が継承されるのだという。


 だがこれらも結局は言い伝えのようなものであり、確かな記録は残っていないらしい。

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