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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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調査隊の昔と今

「だから!今直ぐには無理だ。それに彼らだって帰って来ないとは限らないだろ?せめて戻って来る予定の時刻まで待つべきだ」


「だからそんな事言ってる場合じゃないかもしれないんだって!精気の流れが二号目前まで流れて来てるなんて、そうそうある事じゃないだろ?事が起きてからじゃ遅いんだ」


 紅葉の調子が崩れてから、シン達一行はアクセルとケネトと共に北の山から降りて来た。アクセル曰く、精気の流れは嘗ての言い伝えや調査隊の記録から、山のヌシの位置によって変わるのだと言われているそうだ。


 つまり、山の光脈の精気が降りて来ているということは、山のヌシが降りて来ている事が予想される。以前の記録にも、麓まで精気が流れて来た事があり、付近にいた者達が集団で行方不明になったとされている事件も発生している。


 だがギルド側は、山へ入ったのはベテランの者達で、山の精気の流れについてもよく知っているから大丈夫だと引かないのだ。


「帰って来てからずっとあの調子だな・・・。ミアからの連絡は?」

「大丈夫だって。今はアカリが付き添ってるみたいで、食事も摂れてるみたい」


 ミアとアカリ、そしてツバキは紅葉を連れて先に宿へと戻っていた。連絡はツバキのガジェットを通して行なっている。使用感を確かめる意味でも、これまで以上に重要な物となる事が予想される。


 今の内に操作に慣れておくことが、今後の自分達の為にもなるだろう。アクセルとケネトは何とかギルドの者に、今山へ入ってしまっている者達を帰還させる合図を出させようと説得している。


 だがそれも、そろそろ限界らしい。受付で追い返されたアクセルとケネトが、ロビーで待っていたシンとツクヨの元へ戻って来る。


「悪い、ダメだった・・・。やっぱりみんな、山に慣れてきたせいで警戒度が下がってるみたいだ」


「だが彼らの言う事も一理あるぞ。取り敢えずは帰還するという夕刻まで待ってもいいんじゃないか?アクセル」


 ケネトに諭され、大きく深呼吸したアクセルは、高まった気分を落ち着かせ、これから何が出来るかについて考え始めた。


「そうだな、悪いなケネト。熱くなり過ぎていたようだ。今山に入ってしまってる者達が無事に帰って来てくれる事を信じて、俺達は明日の為に出来ることを考えよう」


「明日も山に入るのかい?その精気が降りて来てるのに・・・大丈夫?」


「ヌシは陽が昇る頃には山の上の方へと戻って行くんだ。だから明日の朝にはきっと精気も引いてる筈だよ」


 ケネトによる山の精気の仕組みの説明で、明日も山へと入れることに取り敢えず事態も前進するだろうと安堵の溜め息を漏らすシンとツクヨ。北の山を越えるのが一筋縄ではいかないのだという事を実感した二人は、アクセルらに何か考えがあるのかを尋ねる。


 するとそこで初めて、彼らから現調査隊であるミネとカガリの話が出て来たのだ。


「この街には昔から、回帰の山の謎を調べる調査隊がいるんだ。だが調査が進むに連れて、分かる事と反比例して調査隊の犠牲者が増えていった。結局調査隊にこれ以上調べられることは無いと判断されて、事実上調査隊の活動は停止へと追い込まれたんだ」


 ケネトが嘗ての調査隊に活動についてザックリとした説明をすると、今度は現在の調査隊についてアクセルから語られた。


「んで、昨今では調査隊の募集も禁止されて、組織的にならない範囲で自己責任の元、勝手に山を調べるのならギルドの連中も黙認するようになっていったんだ。今じゃ調査隊っつっても、二人しかいないんだがな」


「それは頼りになるのか?」


「カガリって子はまだ半人前だが、ミネという男は俺達やこの街のギルドよりも、回帰の山について詳しく知ってるんじゃないかって噂だ」


「噂って事は、二人はその二人と知り合いではない、と?」


 ツクヨの質問に、アクセルとケネトは顔を見合わせて首を横に振る。どうやら二人とも話には聞いているが、彼らとの接点はないようだった。そもそもミネという男は、街の者達と関係を深めようとはせず、必要最低限の交流しか持たない変わり者だとアクセルは言う。


「今回の精気の流れについて、ミネなら何か分かるかもな」


「夕刻までまだ時間がある。行ってみるか?アンタ達も一緒にどうだ?いちいち俺達から聞かずとも、直接聞いた方が早いだろ」


 二人の提案に、夕刻までの間で現在の調査隊と言われているミネという男に話を聞く事にしたシンとツクヨは、ツバキのガジェットで連絡を入れると、アクセルらに連れられてミネの家へと向かう。


 シン達から連絡を受け取ったミアは、昨日アカリと買い物をした帰りに山へと向かうミネの姿を思い出していた。彼は山に何しに行ったのだろう。そして彼は戻って来ているのか。そんな事を思いながら、シン達の帰りを宿で待っていた。

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