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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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買い物に勤しむ者達

 店を出たミアとアカリは、シン達との待ち合わせ場所である“バッハ博物館”の前へと、ひと足先に向かう事にした。何故バッハ博物館を待ち合わせの場所に選んだのか。それは単純に、このアルバの街の中でも極めて有名で人気のあるスポットだったからだ。


 アルバに来てバッハ博物館を訪れないのはあり得ない。と、観光雑誌やパンフレットの謳い文句になっている程だ。それにそれぞれのグループに分かれたツクヨとアカリは、一度バッハ博物館を訪れている。


 なので、建物の形状や場所については問題なく見つける事ができるだろうという算段だ。どうやらミア達の方が先に到着してしまったようだ。アカリは前回来た時とは全く異なる賑わいに驚きを隠せなかった。


「すごぉーい!こんなに人が来てるなんて」


「そう言えば前回は式典やら何やらで入れなかったんだっけか?」


「えぇ、ツクヨさんと一緒に来たんですが式典の準備だとかで・・・。でも今度はみんなで回れそうですね!」


 音楽に興味があるとは思えなかったアカリが、妙に嬉しそうに話をするのを見て、ミアは何がそんなに楽しみなのかと問う。すると彼女は、記憶を無くしたからだろうか、新しい事への興味がすごく湧いてくるのだという。


 それに、何よりもみんなで回れるのが一番嬉しいのだと、満面の笑みで口にした。少女の無垢な笑顔は、女であるミアでさえドキッとさせられる程可憐で、疲れや荒みで汚れた心を一気に吹き飛ばすくらい新鮮なものだった。


「ミアさん?どうされました?」


 突如沈黙して固まるミアの顔を覗き込むアカリと紅葉。咄嗟に顔を視線を逸らしたミアの顔は、恥ずかしさからかいつも以上に赤く染まっていた。


「風邪でも引いたのかしら・・・ね?」

「キィー?」


「そんなんじゃねぇから!あ〜もう!酒買いに行くぞ酒!」


 ミアは強引に歩き出してしまい、慌てたアカリが暴走するミアに揶揄ったことを謝りながらを止めようとする。


「ダメですってお酒は!ツクヨさんに怒られちゃいますぅ〜!」


 まだ集合の時間には余裕がある。それ故にミアの意志は固かった。一方、仲良さげに過ごす女性陣とは打って変わり、先ずは買う物の多いツバキの買い物を優先し、アンティークショップを訪れるシン達一行。


 音楽の街という事もあり、楽器が多く並ぶ店内。その中でもツバキは、修理用の部品や弦の方を詳しく店員に尋ねながら吟味しているようだ。その間シンとツクヨは、素人でも演奏出来そうな楽器が並べられているところや、ギターやベースのあるところで、現実世界での学生時代の話に花を咲かせていた。


「懐かしいなぁ〜。いや昔ね、モテたくて親の反対を押し切ってギターを買った事があるんだよ。結局弾けるようにはならなかったけど、なんて言うか憧れってやつ?シンにもそんな時なかった?」


「いや俺は高校時代は孤立してたし、中退しちゃったから・・・」


「あ・・・ごっごめん!」


「もう気にしてないから大丈夫。でももっと小さい頃はまだ友達もいたから、掃除の時間とか箒をギター代わりにしてよくふざけてたっけ」


「あぁ!分かるよそれッ!みんなでバンド組んだりしてさ。先生とか女子に怒られるんだよね」


 楽しげにギターを手にする二人に、店員が寄って来て商品の販促が始まる。慌ててギターを戻すツクヨは、店員に事情を説明してギターを買う予定は無いと伝えると、今度は初心者にも簡単に演奏できる楽器があると薦められてしまう。


 店内で盛り上がってしまった分、断りづらくなってしまった二人は、引き攣る笑みを浮かべながらどんな楽器がオススメですかと、仕方なく説明を受ける事にした。


 するとツクヨが、WoFでの楽器の演奏に関するスキルについての質問があった。自分達のようなこの世界の住人とは違うユーザーは、演奏というスキルを身につける時、何か必要ポイントがあったり、クラスによって習得出来なかったりするのかというものだった。


 ゲームとしてのWoFであれば、戦闘用のスキルと生活や日常用のスキルで分かれている為、スキルポイントで配分を調整する必要はない。だがこちらの世界だと色々と勝手が違う為、正確なことは言えないとだけ伝える。


「じゃぁさ、ちょっと買ってみようか」


「本気か?」


「ものは試し、だろう?有力であればそれで良し、そうでなくても暇つぶしにはもってこいだ。旅に彩りを添えるのも悪くはないんじゃない?」


 ツクヨのいう事も一理ある。ただ旅をするだけではなく、少しでも思い出や記憶に残る事をして、現実世界では叶えられなかった青春のような体験をしてみたいと、シンは密かに思いながらツクヨの提案に乗っかる事にした。


 そうと決まれば、ある程度楽器の種類も絞れてくる。持ち運びが簡単で場所を取らず、素人でも演奏が出来そうなもの。そして出来れば興味のある物がいい。


 店員に条件を伝えると、笛の類を勧められた。思わず二人は感嘆の声を漏らす。確かにそれは盲点だった。アルバに来てからも様々な楽器に音は聞こえていたが、何となく鍵盤楽器や弦楽器ばかりが耳に残ってしまっていた。


 式典やパーティーでも、それらの楽器がメインどころだったからだろう。初めはフルートやクラリネットといった物を勧められたが、見るからに難しそうな構造に二人は尻込みしてしまう。


 そこで二人が見つけたのは、オカリナや日本の伝統的な笛である龍笛、神楽笛といった物だった。

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