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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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闘争を焚き付ける者

 それはシンがWoFの世界に入れるようになってから、度々見かける様になった謎の人物。ゲームとしてのWoFの世界では、あの様な人物は存在しない。


 AIによる自動更新やコンテンツの拡張、アップデートなどの影響で新たに作り出された存在だとするならば、あり得なくもない話なのだろうか。


 何にせよ、彼らはこの世界の住人よりもこの世界の事を熟知しており、シン達よりも異変について詳しく知っている様子だった。


 ただシンの中に違和感を与えていたのは、海上レースの時に出会った黒いコートの人物に中に、シンのアサシンとしての能力と同じ能力を使う者が居た事だった。


 シン達がこちらの世界に来てからというものの、未だアサシンギルドを見つけることが出来ていない。それどころかアサシンというクラス自体、この世界では珍しく古のクラスになっているような噂すら出ている。


 一体彼らが何者なのか、何を知っているのか。それを突き止めることさえできれば、今シン達の身に起きている異変や、現実世界に蔓延っている異変を明らかにする事が出来るかもしれない。


 神出鬼没に現れる黒いコートの人物を目の当たりにし、驚きの表情を浮かべるシン。対してマティアス司祭は、突然現れたその人物を見ながら呆然としていた。


「貴方はッ・・・!何故ここに?」


「ッ!?」


 マティアス司祭とは明らかに違う反応を示したのがクリストフだった。どうやら彼は、黒いコートの人物に何処かで会ったことがある様だ。今にして思えば、音を操る能力にしては過ぎたる力を持っていたクリストフ。


 その能力が彼によって与えられた、常軌を逸した力であるのなら納得もいくというもの。本来WoFの世界では、プレイヤーの進行状況に沿った適正レベルの敵やクラス、その段階で解決可能な事件などがイベントとして起きたりする。


 しかし、シン達の旅は訪れる場所訪れる場所で、彼らの能力以上の敵や大きな事件が巻き起こる。そして中にはWoFにはない能力を携えた相手が彼らの前に立ちはだかって来た。


 と、するならばクリストフもまた彼らが能力を与え、シン達の障壁として仕込んでいたものなのだろうか。


「もう直ぐフィナーレみたいだったからねぇ、見に来たんだよ。そしたら何だい?この茶番劇は。さっさと殺し合えよ。どちらが生き残って目的を達成できるか、そう言うの好きだろ?人間ってさ」


「何を言っている?少なくとも俺には戦う理由はない。それよりもアンタに

聞きたいことが・・・」


 クリストフにとっては、生き残ったシンを消滅させ演奏を完走させれば、目的の本当の歴史をもう一つの世界に浸透させる事が出来る。だがシンにとって、WoFの歴史が変わったところで何も問題はない。彼の言う様に戦う理由はなかった。


「じゃぁ理由を与えてやるよ。クリストフ、君が負ければ歴史の改竄は無しだ。勿論、能力も返してもらうし君には崩壊するこの世界と一緒に死んでもらうよ」


「なッ・・・!?」


「クリストフが死ぬ・・・?」


 戦闘を煽る黒いコートの男の話を、クリストフは冗談とは思っていなかった。彼には黒いコートの男が、冗談でその様な提案をするとは思っていない様だ。そしてそれを聞いたマティアス司祭も、クリストフが死ぬ事を望んでいない。


「対して、そこの君が彼を倒したのならば、君の知りたい事について何でも答えてあげる」


「何でもッ・・・だと!?」


「あぁ、何でもだ。質問はいくらでもしてくれて構わないよ。全部嘘偽りなく正直に答えると約束しよう。それとも、一生“こちらの世界”に居たいとか?現実を捨ててこっちで生きるのも悪くないだろ?」


「何を・・・」


 しかしシンにとって、いや彼だけではない。WoFの世界で一緒に旅をしているミアやツクヨにとっても、現実世界にいる白獅やアサシンギルドの仲間達、それに敵対する組織に囚われていた、シンと同じWoFのユーザー達にとっても貴重な情報を聞き出せる千載一遇のチャンスだ。


 黒いコートの男の話が、本当の事だったらの話だが。


「けど、君が負けたらこの話は無しだ。クリストフが勝てば、どうせ記憶も無くなるし、これじゃぁペナルティーが無いな・・・。そうだ!君のその目を貰おう!正確には、その目に仕込んだ異物を・・・ね?」


「ッ・・・!?」


 黒いコートの男は、シンが現実世界のアサシンギルドに、こちらの世界の情報を流している事を知っていた。白獅から受け取ったその目の事は、これまで黒いコートの人物達にバレた事はない筈。


 それでも彼がシンの目について知っていると言う事は、何かでシンの目に仕込まれたアイテムの存在を感知したか、何処からか彼らの行動を監視していた事になる。


「さぁ!理由は与えてやったよ?言っておくけど嘘なんかじゃ無いからね。もし戦わないって言うのなら、二人とも負け扱いだよ。それとこの街もゼロから作り直そうか・・・。全員本当の意味で消滅してもらおう」


「何故俺たちに戦わせる?アンタにとって何のメリットがある!?」


「そりゃあるさ。ただそれも君の質問の中に加えるとしよう。彼に勝って私から聞き出せばいい。それじゃ私がここに居ては邪魔みたいだから、消えるね。けど君達の様子は見ているからね。変な気は起こさず、大人しく言われた通り戦いなよ?」


「まっ待て!!」


 シンの声を無視して、黒いコートの男はその場から姿を消した。彼の一連の話を聞いて、クリストフは周囲に音のシャボン玉を出現させ再び戦闘態勢に入る。


「アレは常軌を逸した存在。きっと俺達の事なんか虫と同じように見てる・・・。どっちにしろ、俺は貴方に消えてもらい目的を達成させる。さぁ!演奏を始めて下さい!」


 クリストフは使役する三人のバッハの血族の霊達に、それぞれの楽器を使って月光写譜の演奏を始めさせた。礼拝堂に式典で聴いた曲がBGMのように流れ始める。

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