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World of Fantasia  作者: 神代コウ
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施術の開始

 苦しい選択を迫られる中、ツクヨは悩むシンの表情を見てその背中を後押しする事を決意する。それは即ち、ツクヨ一人でアンナと黒い人物の両方を相手にする事になるという事だ。


「・・・シン、君なら私の中のソレを排除出来るのかい?」


「自分のしかやった事がないから確証はないが・・・。だが海上レースの時はハオランの意思の中も行けた。だから可能な筈・・・!」


 可能性の光を見続けているシンの瞳に意志を固めたのか、ツクヨは彼に自身の中に埋め込まれた音の振動に連動する気泡を取り除いてくれと申し出る。


「じゃぁ決まりだ。私が彼らの相手をする、そしてスキルを使っている間、君の事も守ってみせるよ」


 ここで何を言っても、新しい作戦が浮かんでくる訳でもない。それにツクヨの決意を無碍にする事にも繋がる。それは彼も望んでいないだろう。ツクヨの意志を汲み取り、シンは彼の中にある気泡を取り除く為、一時的に無防備になる事を伝える。


「・・・分かった。ただスキル使用中は無防備になるから、出来るだけ邪魔にならないところへ避難する」


「オーケーだ。場所さえ教えてくれれば、後は何とか持ち堪えてみせるよ!」


 シンはその場から離れると、近くに柱の陰に身を隠し、ツクヨのいるところまでの動線を確認して自身の意識を乗せた影を、ツクヨの元へと走らせる。


「また何か企んでいるんですか?無駄ですよ・・・ここじゃ俺がルールなんだから・・・」


 黒い人物はツクヨの決意に満ちた姿に夢中で、彼に迫るシンの影には気づていない様子だった。その隙にツクヨの身体を登っていくシンの影。そして彼の耳から体内へと入り込むと、自分の時と同じように心臓を目指した。


 黒い人物は僅かにアンナの方へ視線を送ると、それが何かの合図だったのか、アンナの側に謎の人物が現れる。その手には例のスピーカーが握られており、召喚された二体の謎の人物はその場を飛び去ると、ツクヨを無視してシンの隠れている柱の方へと向かっていった。


「させるかッ!」


 差し向けられる刺客を始末しようとするツクヨ。だがそれを阻むように黒い人物が彼の前に立ちはだかる。


「それはこっちのセリフだよ。アンナさん!」


 黒い人物の合図で、アンナは歌の曲調を変え始めた。すると今度は、それまでツクヨの身体を強制的に強化していたバフが、全く逆の効果をもたらし始めたのだ。


 身体は重く、行動の一つ一つが自分が思っているよりも遥かに前へと進まない。腕を真っ直ぐ伸ばそうとしても、頭では伸ばし切ったつもりで、実際はまだ肘が曲がっている。


 そこから身を乗り出して腕を伸ばそうとしないと、実際には腕が伸び切らないといった、ある意味ツクヨの布都御魂剣が見せる創造の景色と似ている。認識と実際の結果が伴わない現象に、ツクヨは直ぐに彼にしか出来ない対処法を編み出した。


 それは同じく認識と実際の結果を変える布都御魂剣の能力だった。黒い人物の前で目を閉じた彼は、布都御魂剣を振い黒い人物を牽制すると、素早い剣捌きで斬撃を飛ばす。


 放たれた斬撃は、シンの元へと向かった謎の人物達を切り裂き消滅させた。背後から攻撃を仕掛ける黒い人物だが、その気配と殺気はツクヨの瞼の裏に写っていた。


 振り返る事なく攻撃を躱すツクヨ。そのまま振り返り、互いに攻撃を交わす中で体勢と向きを変えていたツクヨは、黒い人物と後方にいるアンナが一直線上に重なるように誘導していた。


 そしてわざと大振りの一撃を振るうと、黒い人物はこれを弾き隙を見せたツクヨに掴み掛かろうとする。思惑通りに誘い込まれた黒い人物に対し、僅かに飛び退くと同時に握った剣に力を込めると、目にも留まらぬ剣捌きで複数の斬撃を撃ち放った。


 黒い人物は難なくそれをかわしてみせるも、その先にアンナがいる事に漸く気が付いたのか、ツクヨの攻撃が終わる少し前辺りから、斬撃を避けるのではなく弾くことにシフトした。


「誘い込んでいたのかッ!?」


 アンナは飛んでくる斬撃に、歌を中断せざるを得なくなり、回避に専念し始めた。だが避けたはずの斬撃は、ツクヨの合図で破裂し、細かな斬撃となって周囲に散らばった。

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