見えぬ爆発
シン達が宮殿入り口に到着する前。プラチドが自身のクラスを明かし、それまで気を失っていたアンドレイの護衛である、植物使いの小人ケイシーらと共に、楽譜の力を使い始めたアンナと戦っていた一行。
アンナの歌声により活発化した謎の人物らの苛烈な攻撃に押されるプラチドとケイシー。ツクヨは布都御魂剣の能力を最大限活かして戦っている。彼女自身の攻撃に対応できるのは、この戦場においてツクヨしかいない。
だが、彼の力をもってしても全ての攻撃を捌き切るのは不可能だったようだ。アンナの歌声は次第にアルバ特有のシャボン玉を生み出し、彼女はそれを歌声で自在に操った。
どうやら声の振動を利用しているようだ。ツクヨの瞼の裏で見ている光景にも僅かだがシャボン玉の存在が確認出来る。しかし、魔力を持っている人間や殺意の籠った攻撃と違い、布都御魂剣が感じ取る人の感情や意思、魔力やその源といったものを持たないシャボン玉は、物理的に目を閉じてしまっているツクヨには判別出来なかった。
「何だ・・・?何か違和感が・・・!?」
はっきりとは感じ取れてはいなかったが、アンナの動きや他のなぞの人物達の動きの変化で、戦場に何かが撒かれているのを感じ取るツクヨ。
同じく謎の人物らを抑えていたプラチドとケイシーも、突然距離を取り出した謎の人物らに違和感を感じていた。
「何だ?奴ら急に距離を取り始めたぞ?」
「ふん!邪魔されないってんなら、攻撃のチャンスだ!」
激しい攻撃で植物の種を蒔く隙すら与えてもらえなかったケイシーは、ここぞとばかりに植物の力を使い始める。床から植物の根っこが触手のように生え始め、謎の人物らにそれらを差し向けるケイシーだったが、戦場に漂う違和感の正体の洗礼を真っ先に浴びたのは、彼の植物達だった。
根っこの先端が肉眼で確認しづらいシャボン玉を割ると、何処からか聞こえる歌声と共にその場で爆発を巻き起こしたのだ。何の前触れもなく爆発したように見えた一行にとって、攻勢の手を止めるには十分過ぎる効果があった。
「!?」
「なッ・・・俺の植物達がッ!クソッ!」
「待てケイシー!何かおかしい、無闇に動いてはッ・・・!」
再び植物の種を謎の人物達の方に飛ばそうと少し前進するケイシー。すると、宙を漂っていたシャボン玉は既に彼の直ぐ側にまで移動しており、その一つを攻撃の動作の途中で割ってしまったのだ。
先程、植物の根を吹き飛ばした爆発と同じものが、ケイシーの腕の動きと共に発生。強い衝撃がケイシーの軽い身体を遠い後方まで吹き飛ばしていく。
だがやはり戦闘に慣れているだけの事はある。ケイシーは攻撃を受けた衝撃でばら撒かれた植物の種により、ひび割れた種同士が蔦を伸ばしてネットを作り出すと、ケイシーの身体を受け止め衝撃から身を守ったのだ。
しかし、爆発によるダメージは既に受けており、彼にとってはやや深刻なダメージが残っていた。




